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「ねえ、待ってよ。」
いつから君は、そんなに遠くに行ってしまったの?
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水平線が煌めく朝。
私は思い切り走った。
だけど、君の背中はまだ遠い。
追い付けるなんて思ってない。
でも、努力くらいはさせてよね。
「ねえ、待ってよ。」
何回も、何回も、その言葉を発する。
だけど、波の音に書き消されてしまう。
君は、立ち止まってはくれない。
いつも前だけを向いている。
私を見たことがないんじゃないか、と思うほどに。
いつしか私は、立ち止まっていた。
さっきよりも高くあがった太陽を眺める。
その光が、海を照らしている。
ただひたすらに、眩しかった。
横を見て私は驚いた。
君がいたんだ。
「きれいだね」
その声は、透き通ってて優しかった。
「海じゃないよ。君がね。」
君は、そう付け足した。
私は、戸惑った。
君は、私をきれいと言った。
この、目の前に広がる海よりも。
何も、言葉がでてこない。
嬉しすぎるから。
まさか、そんなことを言われるとは。
5分ほどたち、私は口を開いた。
「君が好きだよ」
日本語、変じゃなかったかな。
ちゃんと、聞こえてるかな。
私の、心臓の音しか聞こえない。
私は、君が再び発する言葉を待った。
「俺もだよ」
そんな言葉が降ってきた。
君は、私のこと全然見てなかったくせに。
なんてずるい人なの。
気づくと君は、走り出していた。
砂浜には君の大きな足跡が数を増やしていく。
その足跡をたどり、君を追いかける。
「ねえ、待ってよ。」
私の声、今度こそ君に届いたかな。
届いてて欲しいな。
君は初めて振り返った。
「おせぇよ」
朝日に照らされた君の笑顔は、ただひらすらに、煌めいていた。
私の後ろには、大きな足跡と小さな足跡が、並んで歩いていた。
名前を考えるのが面倒くさかったから「君」と「私」と「俺」でできるお話考えた笑