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やってはいけなかったのに。
遅れてしまい、大変申し訳ございません💧
それではどうぞ。
「ねぇほら、ちゃんとこっちを見ないとダメでしょ?」
いやだ
いやだいやだいやだ
「もぉ、わかってるよ〜、足がなければいいの?でしょ?」
ちがうちがうちがう
やめろ
いやだ
ちがう
いやだ
ボキッ
「あ゛ぁあ゛あ゛あ゛ぁぁ!!!」
いたい
いたいいたいいたいいたい
ごめんなさいごめんなさい
「いいよぉ〜、謝らなくても。許さないし」
ごめんなさい
「君が悪いんだよ?|友斗《ゆうと》くん?」
---
「なぁ|将司《まさし》、今度はこっくりさんでもやらないか?」
「え…え、いやだよ……僕怖いの苦手だって言ってるじゃないか…」
俺は友斗。
怖いものが大好きだ。
今日も、怖がりな友達と試そうとしている。
怖がりなのは分かっている。
それが面白いんじゃないか。
自分で言うのもなんだが、人が怖がっているところは最高にいい。
優越感、というのだろうか。
今日も、それを楽しみたい。
「じゃ、今日7時に公園な。」
「…………」
「おい、聞いてんのか!?」
「なになにー?」
「あ、梨沙…」
この女子は梨沙。
俺が密かに思っている相手。
(ここで梨沙を誘って、俺がリードすれば…!)
「そうだ、梨沙も行くか?」
「え?」
「いいけど……」
---
〜梨沙side〜
私は、将司くんが好きだ。
優しいところが好き。
今、私は何故か友斗くんに誘われている。
何かも分からないのに……
でも、将司くんが行くなら。
行こうかな…?
〜梨沙side終了〜
---
あーーー、やった!!
梨沙にOKして貰えたぞ!
「あの、友斗…」
せっかく、人が楽しい気分でいるのに、将司ってやつは。
まぁいいか。
「なんだ?」
「あの、僕歯医者予約してたの忘れてて……」
「来ないってことか!?」
「う、うん……」
(いや待て、将司が居なかったら梨沙と2人きりじゃないか)
「まぁ、歯医者ならしょうがないもんな!来なくていいぞ!」
「あ、うん…ご、ごめんね…」
幾分かほっとしたような顔で、将司は離れていった。
---
そして、夜7時。
公園集合と伝えた通り、ちゃんと梨沙は来てくれた。
「あっ、」
---
〜梨沙side〜
なんで?
私は将司くんと話したかったのに、なんで将司くんがいないの?
あーあ、つまんないの。
なにか理由を付けて帰る?
でも途中から将司くんが来るかもしれないし……
でもなんでいないんだろ、将司くん。
〜梨沙side終了〜
---
合流してすぐ、俺たちは目的地に向かった。
すぐ隣に、梨沙がいる…!!
それだけで、怖さがどこかに行ったようだった。
そうやって目的地の廃ビルに着き、早速準備をする。
それにしても、何故か梨沙は不満そうだ。
そのまま気まずい空気が流れたので、何故なのか聞いてみる事にした。
「なぁ梨沙、なんでそんなに不機嫌なんだ?」
「え……」
「な、なんでもないよ。」
「でも――」
「なんでもないってば!いいから早くこっくりさん呼ぼう」
「あ、ああ…」
言いたくない理由だったのか?
---
「こっくりさん、こっくりさん…」
どこからか、ヒヤッとした空気が流れ込んでくる。
ゾクゾクし始める背中。
恐怖に引き攣る梨沙の顔。
冷たく流れ込んでくる空気。
俺でも梨沙のものでもない、誰かの影。
「え、なに、えっ」
梨沙が、声にならない悲鳴をあげている。
それも無理は無いだろう。
今、梨沙の目の前には、
誰かも分からない、《《黒い人》》が立っている。
いや、正確に言うと「浮いている」。
そう、足がない。
「いやっ、やめてっ」
引きずられるようにして、梨沙がいなくなってしまった。
そしてその間、俺は何も出来なかった。
声も出ない、体も動かない。
梨沙たちが居なくなった瞬間に、それは解除されたようだった。
どうすれば……
いつの間にか、入ってきた時の扉が開かなくなっている。
やばい
やばいっ……
強行突破すればいけるか?
そう考えた俺は、ドアを蹴ったり叩いたりした。
だが、
「クッソ、全然開かねぇ…」
ついには。
ドンッ、ドンッ
激しい音を出し、ドアに体当たりをする。
そして、
ガッ…
「外れた…っ、あ」
外れた扉の先に、床はなかった。
扉を外した勢いのまま、俺は下に堕ちていった――
---
そこからの記憶は曖昧だ。
落ちて、落ちて。
全身を強打した。
痛み、恐怖、不安。
そんな俺の前に現れたのは。
白い、影。
月の光を集めたようだった。
人の形をしていた。
---
〜梨沙side〜
ここは、?
恐怖により、ちゃんとした判断が出来ない。
目の前には、私をさらった人がいて。
深い闇色。
でも、なんでだろう。
悪い人には、見えない気がするの。
ぼーっとそんなことを考えていると、その人が口を開いた。
「はやく、ここから出てくれ」
「ここにいてはいけない」
言葉足らず。
だけど必死な思いが伝わってくる。
「は、はい…」
「出口はあっち
早くしないと、あの子が来る」
あの子…?
でも、なんだが必死そうな表情。
ぺこりとお礼をして、私は『出口』に向かって走った。
---
どのくらい、走っただろう。
出口から出て、ようやく知っている道に辿り着いた。
そのまま、家へと走って。
やっと、やっと家の中に入れた時は本当に安心した。
部屋に入って一息ついた時、ふと考える。
あの子って、なんなんだろう。
そして、友斗くんは助かったのだろうか。
なんにも、わからない。
でも、兎に角今日は寝よう。
明日になれば、きっと。
〜梨沙side終了〜
---
逃げようとした俺を、その子は白く光る腕で引き寄せる。
いっそ恐ろしいほど白く光る腕で。
「ねぇほら、ちゃんとこっちを見ないとダメでしょ?」
いやだ
いやだいやだいやだ
「もぉ、わかってるよ〜、足がなければいいの?でしょ?」
ちがうちがうちがう
やめろ
いやだ
ちがう
いやだ
ボキッ
見下ろすと、足が異常な方向に曲がっている。
「あ゛ぁあ゛あ゛あ゛ぁぁ!!!」
いたい
いたいいたいいたいいたい
ごめんなさいごめんなさい
「いいよぉ〜、謝らなくても。許さないし」
ごめんなさい
「君が悪いんだよ?|友斗《ゆうと》くん?」
---
もう、何時間経ったのだろうか。
薄れゆく意識。
これは、夢なのか?
確か、白い人影が見えて――
「君が悪いんだよ?私の大事なお友達を呼び出そうなんて考えるから。」
完全に、普通じゃない目をしたその子は言った。
それからは、暴行。
口を裂かれ、足と腕を折られ。
目玉をほじくり出された。
ああ、もう感覚が消えてきた。
「じゃあね、《《友斗くん》》。」
---
「お疲れ様、ありがとね。」
「これぐらい全然平気だよぉ。」
「やっと、いなくなった。」
「しぶとかったね。」
「やっとだよ。やっと、梨沙に会える。」
「お疲れ様、《《将司》》。」
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