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    第9話 久しぶりにタイムスリップ!?
    
    
    
    軽快なアカペラを歌いながら下校する。そうだ、と思い、スマホに有線イヤホンをぶっさし、イヤホンでカラオケバージョンを聞きながら歌う。
この頃、タイムスリップしていない。わたしはタイムスリップしやすい体質とかなんとかで、しょっちゅううんざりする目に遭わされてきたのだ。歴史警察である橘先輩とか、時間研究者である彰子とか…まあ、要するに面倒くさいってことだ。
前に清少納言にタイムスリップしたのは、確か8月。今は10月中旬、もう2ヶ月ぐらいタイムスリップしていないのだ!
「あ、暦。最近調子はどう?」
「いやーもー最高ですっ!タイムスリップしないなんて!橘先輩も楽なんじゃないですかー?」
ニヤけながら、偶然であった橘先輩に言う。
…こーゆーの、なんかフラグな感じが…いやいや、んなわけないですわー。ふふふふふー。
そんなこんなで、世間話をしながら歩道橋を渡る。
「ちょっと待ちなさいっ!」
うわー、お母さんかー。大変ですねぇ…うんうん。
ドンッ!
「暦っ!?」
うわっ、また歩道橋から落ちるっ!?原点回帰ってやつですかっ!?
「ちょっと待ってっ!」
あ…橘先輩が見える。バッグを持って、わたしに抱きついて…え、抱きつく!?
パニクりながら、わたしは背中で風を感じて、意識を失った。
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「暦っ!」
「いやもう…びっくりしました…色々と」
「ごめんごめん、放っておけなくて…。ほら、タイムスリップを1人でするのも心配でしょう?」
「あ…まあ…」
橘先輩がバッグから出したのは、黄色のプラスチック製の、四角い何か。灰色の画面が張り付いていて、ドット絵が描かれている。
うん、こんな豪華な着物に似合わないんですが…
「今は…1582年、6月1日。天正10年ね」
「1582年…」
1582年…清洲会議、ではなく…
というか、タイムスリップしたのは江戸時代の貴族っぽいところ。寺づかえみたいだ。
「何をしてやがるんだっ、織田信長様の茶会だろっ!?」
と、男の人がわたしたちの方へ来た。あ、そっか。ここ畳だし、なんか茶っぽいやつもあるしね。
「あっ、ごめん…」
「あっ、ごめんなんし。ちょいとぼっとしておりましたわ。要件ってなんでありんすか?」
橘先輩はぺらぺらと流暢に喋る。男性としばらく喋ったあと、「疲れたぁ…」と肩を落とす。
「そんなふうに喋れるんですか?」
「あ、これのおかげ。この『歴史万能機械』のおかげ。これには『年号場所ガイド機能』があって、さっきはこれで何年かを掴んだ。『昔言葉瞬間翻訳機能』で、さっきみたいに喋ったのよ。ま、これがありゃ、古文の授業なんて不必要とは思うわ。…それより、何がやばいかわかるわよね?」
「勿論です」
さっきの男性。「織田信長様の茶会」、と言っていた。
1582年6月1日。あれが起きた、1日前。
織田信長が明智光秀に攻められ、最後は自害したとされる、本能寺の変が起きた、1日前。
    
        やっぱり一回は本能寺の変で小説書きたくなるよね!!