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止まった時 積る白
こちらはバットエンド小説です
もうコンビ解消だぜ。……お前とは、やってられねぇ」
あの日、魔理沙が吐き捨てた言葉は、いつもの喧嘩の延長のはずだった。
けれど、彼女は二度と鳥居をくぐることはなかった。
止まった時間、積もる白
一ヶ月後:静かすぎる境内
最初の数週間、霊夢は「せいせいしたわ」と笑っていた。
掃除の邪魔をされることもないし、大事なお茶菓子を盗み食いされることもない。
けれど、一ヶ月が過ぎた頃。
ふと二人分淹れてしまったお茶が、冷え切っていくのを見て、霊夢は気づく。
神社の静寂は、こんなにも耳が痛いものだったかしら。
「……そろそろ、謝りに来てもいい頃じゃない?」
魔法の森の方角を見ても、光る弾幕の一つすら上がらなかった。
一年後:忘却の冬
季節は巡り、幻想郷は再び厳しい冬に包まれた。
かつては二人で「寒い寒い」と言い合いながら、炬燵で丸まっていた季節。
終焉:雪の日の微睡み
雪は、すべてを隠すように降り積もる。
縁側に座り込んだ霊夢の体温は、とうに奪われ、感覚は麻痺していた。
修復することを諦めた結界からは、冷たい外気が容赦なく吹き込む。
霊夢は震える指先で、大切に持っていた「色褪せた黒いリボン」を握りしめた。
「魔理沙……今日は雪が降って寒いわね……」
その声に、応える者はいない。
隣から聞こえるはずの、生意気な笑い声も、箒を立てかける音も、もう思い出の中だけにしかない。
霊夢は、重くなった瞼を下ろした。
もし、このまま深い眠りについたなら。
夢の中でなら、あの騒がしい日常の続きが見られるだろうか。
「……おやすみなさい、魔理沙」
静かに目を閉じた巫女のまつ毛に、ひとひらの雪が落ち、溶けることなく白く残った。
博麗神社の火は、もう二度と灯ることはなかった。