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明日の空は
痛い、死にたい。そんなことばかり考えている。
考えていたって何も変わらないのは分かってる。
でもやっぱり死んでしまった方が楽だと思ってしまう。
ベランダに出る。空は曇っていて暗かった。
手すりから身を乗り出す。目を閉じた。
しばらくして目を開くと美しい少女がいた。
#天使#だろうか。ああ、そうか。死んだんだ。
「お疲れ様です」
「あなたは#天使#?」
「ええ、そうです」
「このまま天国に行きたいですか?」
「うん」
「それとも生まれ変わってまた生きたいですか」
えっ、いやいやいや。何のために死んだと思ってるんだよ。
「あっ安心してください、貴方の今までの記憶は
きれいさっぱりないですからね」
無駄にテンション高いのがムカつく。
「嫌だよ、生きたくない」
「えーほんとに?」
「うん」
「困るなそれは」
「何で・・・」
「私には役目があるので」
役目?
「役目がどうだの知らないけど嫌だよ」
「嘘だー、貴方後悔があるでしょう?」
「ないよ」
「何が辛かったのか教えてくれませんか」
「はあ・・」
説明しないと終わらせてくれなさそうだから説明した。
母からの虐待に苦しんでいたこと、父は私のことをちっとも
心配してくれなかったこと、これは虐待なのか自信がなくて
誰にも言えなかったことを。
「そう、辛かったね」
「でも貴方、夢があったんじゃないですか?」
え・・・・・・
「絵を書くの好きだったんでしょう」
そうだ、2年前くらいまでは将来はイラストレーターに
なるんだなんて言ってたな。短くて使いにくいぼろぼろの
色鉛筆で毎日のように描いていた。
「怖い、また同じことを繰り返すのが」
「そうだよね、分かります」
「私もね、そうだったから・・・」
その#天使#はぼそぼそっと呟いた。
私もそうだった、もしかしてこの#天使#はもともと
私と同じことで苦しんでいた人間だったのではないか。
この優しく、どこか寂しそうな眼差しからそう思ってしまった。
「悔やんでからでは遅い、私みたいになってしまいます」
「やっぱりあなた、生まれ変わるのをやめた人間なのね」
「そうですよ、よく分かりましたね」
「だから今はこうやって後悔を残して死んだ者を救う、#天使#を
しています」
後悔してからでは遅い、か。もうすでに自殺した時点で後悔
してるけど、またやり直せるなら。
「生きたい、私たっぱり生きたい」
「良かった」
「虐待されて自殺なんてもったいない」
「あなた全部知ってたんでしょ、私のこと」
「さあ、どうでしょうね」
#天使#はほほえんで消えていった。
目の前は光輝いて、私は目を閉じた。
「#伶#、早く勉強しなさい」
「はーい、今やるから待ってー」
「もう、仕方がない子ね」
自分の部屋の机に向かう。窓を開けた。
「今日の空、きれい。」