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おねこさま
かのさしみひ、せとくにきむしみ。くょえやみつんいれうとうみせ、いにちはたばぬやくっなうれ。
おねこさまはすてきな猫さん、あなたの悩みを聞いてくれます。おねこさまは、仲間はずれが大嫌い、仲間外れを見ると、みんなあつめてくっつけてしまうそうです。
おねこさまは、青空が好き。澄んだ空を見ていると、心も見通せるようになるんだそうです。
おねこさまは、野原が好き。心地の良い若草の上で横になると、心が柔らかく、潤うんだそうです。
おねこさまは、雨が好き。 水が雨戸をたたく音に、心が躍るんだそうです。
おねこさまは、ある日にんげんに出会いました。スーツを着た、小柄な男性。彼はこう言うのです。
--- 「妻が浮気していた。」 ---
おねこさまは、悲しむ姿が嫌い。仲間はずれが嫌い。悲しみをあざ笑う生き物が何よりも嫌いです。それでもおねこさまこう言いました。「もう少し、お待ちなさい」
小柄な男性はおねこさまの言う通り、じっと待ちました。そうすると、妻が「あなたがよかった」と泣いて帰ってくるではありませんか。小柄な男性はびっくりしました。
「どうしたんだ、一体」
「ごめんなさい、あなたを裏切って、金輪際もうこんなことはしないわ」
「なにがあったか聞かせておくれ。」
男性は、妻が包み隠さず話してくれる様子に満足しました。そうして、おねこさまに言いました。
「これでよかったんでしょうか」
おねこさまはゆっくりうなずいて、路地裏のくらやみに飲まれていきます。男性は、おねこさまの首の鈴の音を、いつまでも聞いていました。
次の日、男性はおねこさまによく似た置物を買いました。真っ白でふわふわのわたあめのような体に。立派なおみみと、長くしなやかなしっぽ。欠かせないのが首の鈴です。しゃらんしゃらんと鳴って、綺麗なんですから。
男性の妻は言います。「こんな置物、あなたらしくない、どうしたの」「君と仲直りの記念にね」
そうすると、妻も和やかに笑います。そんな二人の姿を、おねこさまは、幸せそうに見つめていました。
これでいいのでしょうか、おねこさま