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第弐章
「なんでこんな突飛なところに来た?」
竹にもたれて座っていた少女。彼女の名は藤原妹紅という。老いることも死ぬこともない蓬莱人だ。
「いえ…あの、輝夜さんはいませんか?」
「輝夜?…この道をまっすぐ行けば永遠亭がある」
それだけだ、と吐き捨てる妹紅に礼を言ったのは、妹紅ともうふたりの銀髪の少女らふたり。
「それにしても、まさか貴方が来るとはね」
「たまたまです」
ふたりで歩く。
「貴方も異変を察知したの?」
「はい、そんなところです。冥界では、もう雪が舞っているんです。その雪のふりぐあいが、微妙に遅いなと思って。すぐに時間だろうなと思いました。幽々子様が動こうとしないので、試練だと思って。一度貴方と敵対したときのような感じではありませんでした。ひとりのメイドがやったぐらい小さな自体じゃないって思いまして。そうなると、あの人しかいないんです」
「全くよ。私も、美鈴に刺すナイフが少しばかり遅いと思ったのよ。私は勿論やっていないから、あそこの姫かと思ったのよ。まあ、いなかったらあの薬師に聞けばいいだけのことだけれど」
そう言いながら、いつの間にかふたりは永遠亭に着いていた。
「輝夜?」
「姫様のことかしら?」
出てきたのは、同じく銀髪を三つ編みに結い上げた薬師だった。
「何故人間…半分人間のもいるけれど、何故いるの?私は異変を起こしていない。あれっきり、異変は起こしていないわ」
「…本当に?」
「ええ。今巷で起きている異変のことも知ってるわ」
「どんな異変ですか?」
「姫様が、時間の進みが微妙に遅くなっていると。単なる無限に等しい時を生きてきた時差ボケのようなものかと思ったけれど、ことはそんなに軽くないと思ってね」
信じても良さそうだ、とふたりが思ったとき、「それで」と永琳が口をまた開く。
「何?本当によく喋る薬師ね」
「そう?まあいいわ。それで、異変を解決してほしいと姫様に言われたのよ。だから今から解決しにいくところ。貴方たちも、主様に?」
「ええまあ、そんなところよ」
「見当はついてるんですか?」
「全く」
見当がついていたら、今頃こんなところにいない。
誰が敵で誰が敵の味方なのか、迷いの竹林なみにわからないのだから。