公開中
朝
# 翌朝の目覚め
翌朝、ゆうせいは柔らかな朝日の中で目を覚ました。目を開けると、すぐに昨日の記憶が鮮やかに蘇り、顔が熱くなるのを感じた。特に深海コーナーの暗がりでの出来事を思い出すと、思わず毛布で顔を覆ってしまった。
「ああ…恥ずかしい…」
ベッドの中で丸くなっていると、スマートフォンが鳴った。星太郎からのメッセージだった。
「起きたか?朝ごはん、一緒に食べないか?コンビニでおにぎり買って、お前の部屋に行ってもいい?」
ゆうせいは一瞬躊躇した。まだ寝起きの顔を見られるのは恥ずかしいが、星太郎に会いたい気持ちの方が強かった。
「うん。30分後くらいに来てくれる?まだ準備してないから」
「了解。髪ボサボサのゆうせいも見てみたいけどな」
そのメッセージに、ゆうせいは慌ててベッドから飛び起きた。鏡の前で髪をとかし、パジャマから着替えると、部屋をさっと片付けた。
ちょうど準備が終わった頃、ドアのチャイムが鳴った。
深呼吸をしてドアを開けると、そこには笑顔の星太郎が立っていた。手にはコンビニの袋が二つ。
「おはよう。寝起き顔、想像以上にかわいいな」
「や、やめてよ…」ゆうせいは照れて俯いた。
部屋に入ると、星太郎は自然にゆうせいの頭に手を伸ばし、髪を撫でた。
「昨日は本当に楽しかった。一晩中、お前のことを考えてた」
「私も…」ゆうせいは小声で答えた。「星太郎からのメッセージ読んで、なかなか寝付けなかったよ」
二人は小さなテーブルを挟んで向かい合い、おにぎりを食べ始めた。普段なら何でもない朝食が、今日は特別に感じられた。
「今日の予定は?」星太郎が尋ねた。
「特にないよ。課題はあるけど…」
「じゃあ、午後は図書館で一緒に勉強しないか?そのあと、またどこか寄り道しよう」
ゆうせいの目が輝いた。「本当?でも、星太郎も忙しいんでしょ?」
「お前と一緒にいる時間を作るのは、優先順位一番だ」星太郎はいたずらっぽく笑った。「それに、図書館の静かなところで、こっそり手をつなぐのも悪くないだろ?」
「星太郎ったら…」ゆうせいは顔を赤らめ、おにぎりに目を落とした。
朝食後、星太郎はゆうせいのコップを洗いながら言った。「お前のキッチン、意外と整理されてるな」
「星太郎の部屋は汚いの?」
「男子寮みたいなもんだからな」星太郎は苦笑した。「いつか掃除手伝ってくれよ」
「えっ?星太郎の部屋に行っていいの?」
星太郎はコップを置き、ゆっくりと近づいた。「もちろん。むしろ、早く来てほしいくらいだ」
彼の手がゆうせいの腰に回った。距離が近すぎて、ゆうせいは息を呑んだ。
「でも…今はまだ朝だよ」ゆうせいはどもりながら言った。
「朝だって、お前をキスしたい気持ちに変わりはない」星太郎の声は低く、甘い誘惑に満ちていた。
彼の唇がゆうせいの唇に触れた。朝のキスは昨夜の情熱的なものとは違い、柔らかくて優しかった。ゆうせいは目を閉じ、この瞬間を味わった。星太郎の唇の温もり、彼の手が腰に当たる感触、すべてが心地よかった。
キスが終わると、星太郎はゆうせいの鼻先に軽くキスをした。
「お前の味、緑茶おにぎりみたいだ」
「変なこと言わないでよ」ゆうせいは笑いながら星太郎の胸を小突いた。
「本当だよ。でも、世界で一番美味しい緑茶おにぎりだ」
星太郎はもう一度軽くキスをし、ゆうせいから離れた。「よし、一旦帰るよ。着替えてくる。1時間後にロビーで待ち合わせしよう」
「うん。待ってるね」
星太郎が去った後、ゆうせいはドアにもたれ込み、胸に手を当てた。鼓動が早く、顔はまだ熱かった。
「ああ…星太郎と付き合ってるんだなって、まだ実感が湧かないよ」
# 図書館での勉強
1時間後、二人は近くの図書館に向かった。平日の午後だったので、館内は静かで、学生が数人いるだけだった。
奥の閲覧室の隅にある席を見つけ、二人は隣同士に座った。星太郎は法学の教科書を広げ、ゆうせいは文学のレポートに取り掛かった。
30分ほど経った頃、星太郎が小さくため息をついた。
「難しい条文ばかりで頭が痛いよ」
「頑張って」ゆうせいは囁くように励ました。
すると、星太郎の手がテーブルの下でゆうせいの膝にそっと触れた。ゆうせいは驚いて星太郎を見たが、彼は真面目な顔で教科書を読んでいるふりをしていた。
「星太郎…」ゆうせいは小声で抗議した。
「静かにしないと、司書さんに注意されるぞ」星太郎は悪戯っぽく笑いながら、指をゆうせいの膝の上でそっと動かした。
その軽い愛撫に、ゆうせいは思わず息を詰めた。図書館という公共の場所で、こっそりとこんなことをするのは…あまりにも恥ずかしかった。
「やめて…」ゆうせいは必死に声を押し殺した。
「お前のこの反応がたまらないんだ」星太郎はさらに近づき、耳元で囁いた。「震えてるのが伝わるよ」
ゆうせいは顔を真っ赤にし、レポートに目を落とすふりをした。しかし、星太郎の指が膝を撫でる感触に、全く集中できなかった。
しばらくして、星太郎がようやく手を離した。ゆうせいはほっと息をつくと、星太郎がメモを差し出した。
「ごめん、我慢できなかった。お前がかわいすぎて」
そのメモを見て、ゆうせいはまた顔が熱くなった。テーブルの下でこっそり星太郎の手を握り返すと、彼は満足そうな笑みを浮かべた。
2時間後、勉強が一段落した。二人は静かに図書館を出ると、外のベンチに座った。
「集中できなかったよ」ゆうせいはため息をついた。「星太郎のせいで」
「それは悪かった」星太郎は悪びれもせず笑った。「でも、お前がそばにいるだけで、俺も全然勉強に集中できなかったんだ。ついお前の横顔ばかり見てた」
「バカ…」
星太郎はゆうせいの手を取った。「さて、これからどこに行こうか?カフェ?それとも公園を散歩する?」
「公園がいいな。天気もいいし」
「了解」
# 公園での散歩
近くの公園は夕方の穏やかな時間を迎えていた。家族連れやカップルが散歩を楽しみ、子供たちが遊具で遊んでいた。
二人は並んで歩きながら、何気ない会話を交わした。学校のこと、将来の夢、好きな音楽のこと…交際を始めてまだ日が浅いため、知らないことがたくさんあった。
「ゆうせいは将来、何がしたいんだ?」星太郎が尋ねた。
「まだ決めてないけど…子供に関わる仕事がいいかな。保育士とか、小学校の先生とか」
「そっか。お前なら優しい先生になれるよ」
「星太郎は?弁護士になるの?」
星太郎は少し考え込んだ。「そうしたいけど、まだわからない。でも一つだけ確かなのは、お前のそばにいたいってことだ」
その言葉に、ゆうせいは胸が温かくなった。思わず星太郎の腕に軽く寄りかかると、彼は優しく肩を抱いた。
ベンチに座って休んでいると、近くでアイスクリームを売っているカートを見つけた。
「アイス食べる?」星太郎が立ち上がった。
「うん!バニラがいいな」
星太郎がアイスクリームを買っている間、ゆうせいは彼の後ろ姿を優しい目で見つめていた。こんな日常の何気ない瞬間が、なぜこんなにも幸せに感じられるのだろう。
「はい、どうぞ」星太郎が戻ってきて、アイスクリームを手渡した。
「ありがとう」
アイスクリームを食べながら、ゆうせいはふと質問した。「ねえ、星太郎はどうして私のことが好きになったの?」
星太郎は驚いた顔をしたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。「難しい質問だな…気づいたときには、もうお前のことばかり考えてた。授業中も、アルバイト中も、お前の笑顔が頭から離れなかった」
「具体的には?」
「そうだな…」星太郎は考え込むふりをした。「確か、3ヶ月前の文化祭のときだ。お前が受付で案内係をやってて、迷子になった子供に優しく声をかけてた。そのときの優しい笑顔を見て、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚があった」
ゆうせいは驚いた。「そんなことまで覚えてるの?」
「お前に関することは、細かいことまで全部覚えてるよ」星太郎はゆうせいの鼻先に溶けかけたアイスクリームをそっと拭った。「それからというもの、意識せずにはいられなくなった。図書館で偶然席が隣になったときは、心臓が飛び出そうだった」
「私も…」ゆうせいは小声で認めた。「星太郎が隣に座ってるときは、本の内容が全然頭に入らなかった」
二人は顔を見合わせて微笑んだ。アイスクリームが完全に溶けてしまう前に、急いで食べ終えた。
日が暮れ始め、公園の灯りがともった。星太郎が時計を見ると、もう6時近くになっていた。
「そろそろ帰ろうか。夕食も一緒にどう?今日は俺が作る」
「星太郎、料理できるの?」
「できるよ!まあ、カレーくらいだけどな」星太郎は照れくさそうに笑った。
「それで十分だよ」
# 星太郎の部屋で
星太郎の部屋は確かに少し散らかっていたが、悪くはなかった。本や服が少し乱雑に置いてある程度で、むしろ彼らしい生活感があって好ましかった。
「掃除してないって言ったから、期待してなかったけど…思ったよりきれいだね」
「お前が来るってわかってたら、もっと掃除したのに」星太郎は苦笑しながらキッチンに向かった。「ちょっと待ってて。カレーを作るから」
ゆうせいはソファに座り、部屋を見回した。棚には法学の教科書が並び、その隣にいくつかの小説や漫画があった。壁にはバスケットボールのポスターが一枚貼ってある。
「星太郎、バスケやるの?」
「高校までやってた。今はたまに友達とやるくらいだ」
キッチンからいい匂いが漂ってきた。ゆうせいが覗きに行くと、星太郎は真剣な表情で玉ねぎを炒めていた。
「手伝おうか?」
「いいよ、客はゆっくりしてて」
でもゆうせいは傍に立ち、星太郎の料理を見守った。彼の包丁さばきは意外と慣れていて、手際がよかった。
「お母さんに教わったの?」
「そうだな。一人暮らし始めたとき、母が基本的な料理を教えてくれた」
しばらくして、カレーのいい匂いが部屋中に広がった。星太郎がご飯をよそい、二人は小さなテーブルを挟んで向かい合った。
「いただきます」
一口食べて、ゆうせいは目を丸くした。「美味しい!星太郎、料理上手なんだね」
「そうか?ありがとう」星太郎は嬉しそうに笑った。
食事をしながら、二人はまたいろいろな話をした。子供の頃の話、家族の話、将来の夢…時間が経つのも忘れるほど、会話が弾んだ。
食後、星太郎がコーヒーを入れてくれた。窓の外は完全に暗くなり、部屋の中は暖かい雰囲気に包まれていた。
ソファに並んで座ると、星太郎が自然にゆうせいの肩を抱いた。
「今日も楽しかったな」
「うん。図書館でイタズラされたのは困ったけど」ゆうせいはからかうように言った。
「あれは愛情表現だ」
「変な愛情表現だよ」
星太郎はゆうせいの顎に指を当て、ゆっくりと顔をこっちに向けた。「じゃあ、普通の愛情表現をしてやろうか?」
「えっ…」
言葉が終わる前に、星太郎の唇がゆうせいの唇に重なった。このキスは図書館でのこっそりしたものとも、朝の優しいものとも違った。深く、ゆっくりで、時間をかけたキスだった。
ゆうせいは目を閉じ、星太郎の肩に手を回した。彼の唇の動き、息づかい、すべてが心地よかった。
長いキスが終わると、二人は額を付け合ったまま、息を整えた。
「お前のキス、いつしても慣れないな」星太郎が囁いた。「毎回、胸がドキドキする」
「私も…」ゆうせいは息を切らしながら答えた。「星太郎にキスされるたび、頭が真っ白になるよ」
星太郎は微笑み、ゆうせいの頬を撫でた。「もう遅いから、そろそろ送るよ」
「えっ…もう帰るの?」
「このままじゃ、お前を帰したくなくなっちゃうからな」星太郎の目は真剣だった。「でも、まだ早いと思う。もっとゆっくり進めたい」
ゆうせいは星太郎の配慮に胸が熱くなった。「星太郎って、本当に優しいね」
「お前にだけだよ」
# 別れの時
玄関で、二人は向き合った。星太郎はゆうせいのコートの襟を整えながら言った。「明日も会おうな」
「うん。何時に?」
「放課後、いつもの場所で。4時半でいいか?」
「いいよ。楽しみにしてる」
星太郎は深く息を吸い、ゆうせいを軽く抱きしめた。「今日もありがとう。お前と過ごす時間は、何よりも大切だ」
「私も。ありがとう、星太郎」
最後のキスは短くて優しかった。星太郎はゆうせいの額に唇を当てると、ドアを開けた。
「気をつけて帰れよ。着いたらメールくれ」
「うん。星太郎もおやすみ」
廊下を歩きながら振り返ると、星太郎がまだドアの前で手を振っているのが見えた。ゆうせいも手を振り返し、エレベーターに向かった。
エレベーターの中で、ゆうせいは鏡に映る自分の顔を見た。唇は少し腫れ、目は幸せで輝いていた。
「ああ…本当に星太郎と付き合ってるんだ」
自分の部屋に戻ると、すぐにスマートフォンが振動した。
「お前が帰ったあとの部屋、急に寂しくなった。もうお前の匂いが恋しい。明日、絶対に会おうな。愛してる」
そのメッセージを読んで、ゆうせいはベッドに倒れ込んだ。幸せすぎて、涙が出そうだった。
「私も愛してる、星太郎。明日も会えるのを楽しみにしてる」
返信を送ると、ゆうせいは天井を見つめた。昨日の水族館デート、今日の図書館と公園での時間、そして今夜のカレー…すべてが夢のようだった。
でも、これは夢じゃない。星太郎の温もりも、キスの感触も、すべてが現実だった。
ゆうせいはそっと自分の唇に触れた。そこにはまだ、星太郎のキスの記憶が残っていた。
「明日も…明後日も…これからずっと、星太郎と一緒にいたい」
窓の外では、月が優しい光を降り注いでいた。まるで二人のこれからを祝福しているかのように。
今日という日が終わり、また新しい明日が始まる。ゆうせいはそう信じて、ゆっくりと目を閉じた。心は星太郎のことでいっぱいで、今夜もきっと幸せな夢を見られるだろう。