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ショートショートとかたっぽの手袋 後編
「あ、あれ…?」
木葉らしき人物が、積もった雪をかき分けてなにか探している。まあ、正確には止まっているけど。
「いい?『ブックパトロール』は自然に。あんまり干渉しないこと」
「分かったよ」
「さて、どうしようかしら?」
考えてなかったのかよ、とつっこみを入れる。
「手袋がどこにあるか、っていう問題よね」
「うーん。確か、この物語には他に登場人物はいないはず。…あ、でも、女の子がいたっけ」
女の子、とは木葉のおとなりさんだ。特に重要な役割は担っておらず、一緒に遊ぶのが日常と描いているだけ。
「女の子がかっさらってったとかはないの?」
「まあ、探してみようかしらね。でも、突然なくなったらびっくりしちゃうわ」
「手紙を添えたらいいよ、さ、行こっ!」
赤い屋根の家が木葉の家。その隣は2つあるけれど、広い庭がある家が女の子の家だから、こっちか。
「どんな手袋?」
「挿絵を見るに、ポンポンがついているやつよ。灰色っぽいのがベースで、ピンクのポイントが入っているのよね。ただ、検討もつかないわ」
「玄関においてあるよ、きっと。だって家の中でしないもの」
女の子の家は真っ白だった。
「なんで真っ白なの?」
「作者が描いていないところは、真っ白なの。えーと、あった!」
真っ白だから、手袋がぽとんと落っこちているのがわかりやすくて助かる。
「あとはこれをぽとんって落としたらいいのか」
「木葉がかき分けているそばに置いておこう。雪を埋めて」
ひぃぃ、冷たっ!
『身も凍ってしまうくらい』っていうたとえどおりなの!?なんなの…
「さ、任務を終えたらすぐ戻る。いくわよ!」
ずっと上にある本のカタチに向かって、踏ん張ってみる。こうすると、自然とふわふわ浮いて本に戻れるのだ。
「初任務にちょうどよかったわね」
それって、レベルが低いこと?っていうつっこみは控えた。