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出席番号六番 香取浬
|相生《あいおい》さんが告白された男子の名は、|香取《かとり》くんだそうだ__香取|浬《かいり》。
この人と一緒にいると変な男が絶対に寄ってこないという、誰もが認める爽やかイケメン、巷では〈持ち運ぶタイプの蚊取り線香〉と囁かれている、あの香取くんだ。
対して相生さんは、ヒエラルキーで言うと三軍と二軍の中間くらいに位置している、ショートカットに長めの前髪、眼鏡という、〈おとなしい女子代表〉みたいな子だ。
確かに、謎だな……。彼女には失礼だが、香取くんと相生さんの間には天と地ほどの差がある。
いや、それはいくらなんでも失礼すぎるか__もうちょっとオブラートに包もう。
実際は香取くんが高嶺の花だとしたら、彼女は底辺の苔くらいだろう。いや、それでも流石に言い過ぎ? ではヒカリゴケくらいにしておこう__なんの話だ。
「いわゆる恋に落ちたのは、去年の体育祭です__見てわかる通り、わたし、運動音痴で、リレーでもすっごい足引っ張っちゃうんですが、彼、そんな私を見かねてアドバイスをいくつかしてくれて……。それきり会話はできなかったんですが、それから、好きだなって思うようになって」
と、彼女は拙く語った。
「ふうん。それじゃあ、彼もそのとき恋に落ちたのかなぁ」
「どうでしょう……。人が人を好きになるタイミングって、それぞれですから」
わかったような口を利きおる。
まあ、その通りだろう__一目惚れだって、よく考えれば相当な暴挙だからな。
『この人の性格も声も考え方も何ひとつ知らないけどビジュいいから好きです!』ってことでしょ、つまり?
私がそう言うと、彼女は
「言われてみれば……それで内面知ったら『ガッカリ』なんて、確かに身勝手かもしれないですね」
と苦笑した。やけに切なげな笑みだったので、もしかしたら経験があるのかもしれない、と勝手に推察する。
彼女、結構顔は可愛いからね。
閑話休題。
「人脈が広い彼なら、魅力的な人と出会う機会はそう少なくないだろうし、その中でも接点の少ない相生さんただひとりにフォーリンラブっていうのは、確かにちょっと疑問だよね」
もし何か〈裏〉があったら相生さんはそれを知ったうえで振るかどうか考える。なければ気持ちよくお付き合いできる。
「よし、それじゃあ」
いつでもどこでも聖人君子なあの彼の化けの皮、剥いでやろうか。