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#3 白い虎とおでんと
ルイスside
「わぁ〜、如何したんですか?」
給湯室の机に広がるのは大根や卵、はんぺんと言った具材と大きな鍋。
「寒いからおでんでも作ろうかと思ってね。出来たら皆で食べよう」
「太宰さんが作るんです…? 与謝野|医師《せんせい》呼んでおきます?」
「私の料理が致死性だと? 失礼な」
致死性では無いけど、昔凄いの作ってたよな。
えっと、確か釘が打てるほど硬い豆腐。
後は入っているものを聞いたら、普通に気絶しそうな予感がした鍋。
「不安しかない…」
そう言った敦君に、僕は同感しかない。
因みに太宰君は、包丁片手に笑っている。
「おでんの作り方か…」
知らないのかよ。
そうツッコミを入れようとしたけど、太宰君の言葉に遮られた。
「コンビニに行く」
「購って解決しようとしてませんか!?」
「正直ノリで材料揃えちゃった、っていうか私あまり料理しないし」
敦君もおでんの作り方は分からないと言う。
「ルイスさんは?」
「僕も知らないよ。そもそも日本人じゃないし」
そう言えば、と二人はとても驚いていた。
え、もしかして僕、日本人だと思われてた?
「そうだ! 国木田君に聞いてみよう」
国木田君、今は外で仕事じゃなかったっけ。
そんなことを考えている間に、太宰君は電話を済ませていた。
何故か外からドタドタと走る音が聞こえる。
「我が社の危機とは本当か太宰ー!」
可哀想だな、国木田君。
「おでんの作り方だと!?」
そんなことの為に、と国木田君は怒っていた。
敦君が謝ろうとすると──。
「ダシは!? せめてダシはとったんだろうな!」
「えー、そっち?」
怒るところ違くない?
そして、国木田君がキッチンへと立った。
テキパキとおでんを作り出すのはいいけど、詳しすぎて怖いな。
「あ、私は味見係で」
おい、太宰君?
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No side
「太宰治風おでんレシピ〜!
①国木田独歩を呼ぶ。
はい、これで完成だよ!」
「国木田君、今度なんか日本の料理教えてよ」
「構いませんけど…ルイスさん、料理は出来るんですか?」
「勿論! 今度作ってあげるよ!」
「あー…国木田君、ご愁傷様」
「どういうことだ?」
「いや、普通にルイスさんダークマター製造機だから」
「──!?」
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敦side
「あれ? 鍋にお餅ばっかり…入れましたっけ?」
どうやら餅きんちゃくを与謝野|医師《せんせい》が解体したらしい。
え、国木田さんがせっかく包んだのに!?
それで油揚げとかんぴょうを乱歩さんが食べる。
「何故外側だけ!」
「餅のとこは味しないから要らない」
「身も蓋もない!」
「あ、餅食べたい」
今取りますね、と太宰さんがルイスさんにお椀に取っている。
「お餅だけでいいんですか?」
「餅は好きだけど、かんぴょうが好きじゃないから丁度いい。てか僕、練り物嫌いだし」
えぇ…
「奇想天外な奴だと思うが、乱歩を同じ社員としてよろしく頼む」
背後から声を掛けられ、普通に吃驚した。
「…はい、勿論です!」
そう答えて乱歩さんの方を見てみる。
すると今度はちくわをストローにして汁を飲んでいた。
あ、良い子はマネしないでね!
悪い子もダメだからね!
「悪い奴ではないのだ…」
「社長、凄い無理してませんか」
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ルイスside
「おでん、好評で良かったね」
「太宰さん、全然食べてないんじゃないですか?」
そう言えば、発案者なのに一口も手を付けていない気がする。
「私は皆を見てるだけで満足だよ〜」
あ、そういえば味見係なんだっけ。
食べすぎたんだろうな、味見で。
如何やら鏡花ちゃんはおでんが初めてらしい。
敦君がお兄ちゃんらしく、お椀に取ってあげている。
「何が食べたい?」
「じゃあ、そのお豆腐…」
「あぁ、これははんぺんだよ」
待って、鏡花ちゃん驚すぎじゃない?
はんぺん知らないのかな。
でも、確かに豆腐と似てるかも…?
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No side
「太宰治風おでんアレンジレシピ〜!
①中島敦に材料を買ってきてもらう。
②国木田独歩を呼ぶ。
簡単だね!」
「太宰さんの仕事は!?」
「る、ルイスさん…矢張り忙しいでしょうし、料理を振舞ってもらうのは大丈夫──」
「別に暇してるし、遠慮しなくていいよ」
「そうだルイスさん! 得意の《《アレ》》を作ってあげては如何ですか?」
「あぁ、アレね!」
「おい太宰、俺を殺すつもりか」
「心配しなくても、ルイスさんには得意料理が一つだけあるんだ」
「ふっふっふ。僕の得意料理、その名も『雑草鍋』だ〜!」
「雑草鍋って…あの雑草ですか?」
「もちろん、道端に生えているあの雑草だよ。作り方はとっても簡単!
①道端で雑草を取ってくる。
②鍋に適当に調味料を入れる。
③全部入れて煮込む。
ほら、簡単でしょ?」
「本当だ! とっても簡単ですね!」
「騙されるな、敦! それと太宰、どうしても大丈夫には思えないのだが?」
「私、何回も食べてるけど生きているから大丈夫さ」
ルイス•キャロル=ダークマター製造機☆