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普通凡人
「はぁ〜、めんどくせ」
数学の教科書すらまともに開かず、ただペン回しに精を出す。
誰か私のこのペン捌きに気づいてくれないかな、ふとそう思った。
まあでも、これで褒められたりしたら、世の中誰でも億万長者だ。
私は|京極瑠衣《きょうごくるい》。勉強が下手で優れた特殊能力もないし、自慢する特技もない。
いわゆる普通凡人だ。
でも、普通はいいよ〜
誰とも違わないし、ただみんなの真似すればとりあえず成績は取れる。
「『内申点で狙う』だなんて馬鹿みたい」って言う奴もいるけど。
そんなこと言えるのは、勉強ができて、特技がある奴だけだけど。
カタッ!
私はペンを指から落としてしまった。
「京極!」
「は、はい…」
先生の目の鋭さと言ったら…しかも眉はグッと曲がっている。
今まで教科書に吸い込まれるかの様に、勉強をしていたみんなは、一斉にこっちを見た。
(コイツら…)
私のペン回しは見ないくせに、怒られるところは見たいっての?
「京極、この式を解きなさい」
「はぁい」
私はめんどくさそうに、トボトボと一番後ろの席から、歩いて行った。
ダルそうにチョークを受け取る。
全く式がわからない。
多分アインシュタインでもわからないだろう。
って言うかそもそも、努力する凡人でもなんでもないし。
私は一分ほど、黒板の前に立ち尽くした。
「京極、わからないのか?」
先生の眼が更に尖った。
「わかりません」
私は、先生を背に、自分の席へと帰って行った。
「この学校に来るんじゃなかったな」
先生は嘲笑うかの様に小声で言った。
それは前にも誰かに言われた言葉だ。
凡人にどうしてもなりたくなかった。
小さい頃の私は、自分は特別だとか、自分だけは才能がある、とか変に夢見てたけど。馬鹿みたい。
ここにいるみんなは、まだそんなことを思っているのだろうか。
それとも誰か、超人になるのだろうか。
私にはどうでもいい。
だってただの凡人だから。
未来に光はないから。
凡人凡人。