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寄り道~焼きいも日和~
最近になってまた夕暮れが早まってきたと思う10月の中旬。朝方や日が暮れた頃になるとだんだんと肌寒くなってくる季節だ。これからどんどん寒くなっていくのだろう。これくらいの季節がちょうどいいと思う気がする。
チャイムが鳴り響き、終礼が終わる。
「姿勢、礼」
「「さようなら」」
長かった授業が終わり、やっと放課後になった。今日は部活がお休みなのですぐに帰ることができる。
どうも、こんにちは、|野田 奏海《のだ かなみ》です。
「か~なみん! 駅まで一緒に帰ろ!」
声をかけて来たのは芽吹ちゃん。
「いいよ、鈴ちゃんも誘おうよ」
「いいねぇ~」
今日も今日とて仲良し3人組で帰ることになった。
「りんりん! 一緒帰ろ!」
「そうだね! 部活も休みだし一緒に帰ろっか」
ガールズトークに花を咲かせながら靴を履き替えた。外に出るといつもより涼しいような気がする。
9月は体育祭、10月に入ってから文化祭の準備などが忙しくて、こうして3人で帰るのは久しぶりだった。
~~~
どこか遠くで何か言ってる?
「何か音がしない?」
「確かにするね、うちにもなんか聞こえた気がする」
鈴ちゃんにも聞こえているらしい。
「するような、しないような、アタシには分からないや。気になるの?」
芽吹ちゃんは不思議そうにしている。
「うーん、気になるんだけどどうしようかな」
「行くだけ行ってみる?」
「行ってみようかな」
音のする方へと進む。
音のする方へと近づいていくうちに何の音か分かるようになってきた。
「いーしやーきいもーおいもー」
「焼きたて、出来立てのおいしいおいもだよー」
「いーしやーきいもーおいもー」
音の正体は公園の前に止まった焼きいもの屋台だった。なんとなく焼きいもの匂いが漂ってきている。
「焼きいもの屋台だよ」
「そっかーもうそんな季節なんだね」
もう秋だもの。焼きいもの匂いがしてくるとなんだか食べたくなっちゃうんだよなー。ふと、芽吹ちゃんの方をチラリとみるとすごく目を輝かせながら屋台を見ている。
「芽吹ちゃん、もしかして焼きいも好きなの?」
「めっちゃ好き」
即答、これはびっくり。そんなこと初めて聞いた。鈴ちゃんもびっくりしてる。
「そうなんだね! 1つ250円だって、買ってく?」
「みんながいいなら」
というわけで焼きいもを買うことになった。
「あの、焼きいも3つ下さい」
「お~焼きいも3つね。合計で750円だよ」
1人250円ずつ支払う。
「焼きたてだから熱いよ~気を付けて食べてね」
新聞紙に包まれた焼きいもが3つ入った紙袋を手渡された。温かい。屋台で焼きいもを買ったのは初めてな気がする。
『ありがとうございます』
公園のベンチに座って袋から焼きいもを取り出してみる。
「熱っ」
思った以上に熱かった。
「ほい」
「ありがと」
「てんきゅ~……って熱いね~」
「だねー」
ハンカチでうまい具合にくるんで二つに分ける。すると、きれいに割れた。ホコホコと湯気が立ち上っている。見るからに美味しそう。
「いただきます」
フーってして少し冷ましてからひとくち。
「すっごくおいしい」
熱いけど、とても甘くてホクホクしてる。蒸かしいもは食べることが何度かあっても石焼きいもなんて頻繁に食べられるものではないしなーと思いながらパクッと食べる。少し焦げているところがあるけど気にしない。さつまいもはさつまいもでも何の品種なんだろう。気になったのだけど聞こうとは思わなかった。
「おいしいねー」
「そうだね! なんだかいくつでも食べられそうな気がする。でも、たくさん食べたら体重増えちゃうな~」
「確かに……」
焼きいもっておいしいけどおいもだし、炭水化物だし、食べ過ぎには注意しないと。うん、地獄見そう。
ワチャワチャしながら空を見上げる。雲1つない青空でだんだんと日が暮れ始めていた。公園の木々はまだ色づいてはいなさそうだ。秋の気配を感じながら食べる焼きいもってとってもおいしいんだなって思った。まさに焼きいも日和。
「焼きいもとかってさ、1つ食べるだけで結構お腹がいっぱいになるよね」
「そりゃ~おいもだもの」
「晩御飯食べられるかなー」
「動けば大丈夫だよ、多分!」
「多分って……確かに動けばどうにかなるかも?」
「そう思うしかないよね~」
食べ終わって焼きいもを包んでいた新聞紙などを公園のゴミ箱に捨てた。
「おいしかったね。私、こうした屋台で買って食べるのは初めてかもしれない。あ、でもお祭りとかの屋台とかだったらあるからね」
「確かに、うちも地域回って販売する屋台の方ならあまりないね。買う機会なければこんな風に買うのってそうそうないからねー」
「アタシはね~毎年この時期になると大抵住んでるとこに回ってきてたからよく買ってたな~今年になって初めてかもしれない」
気がつけば焼きいもの屋台はどこかに移動してしまっていた。今度はいつ遭遇することができるのだろうか。次に期待しながら駅の方へと向かう。向かいながらも話は尽きることがなかった。テストの事や先月の体育祭、今月開催される文化祭の事など、学校行事のことが多かった。
駅に着くと帰宅ラッシュと重なったのかやけに人が多かった。バス停にも人が大勢並んでいる。
「そういえば2人って明日、部活あるの?」
「うちは一応あるよ、コンクールと文化祭近いし練習があるからねー」
「私は休みだけど明日、日直なんだよね。」
「そうなんだ~」
「あ! そろそろ電車の時間ヤバイかも。じゃあ、また明日!」
「じゃあねー」
そう言って3人それぞれ別れて行った。
帰るためにバスを待っているとカラスが大声で鳴きながらどこかへと飛んでいくのが見えた。日が暮れてきて涼しい風か吹いてくる。改めて秋だな~と思う季節になった。やっぱり今日は焼きいも日和だなって思った。
焼きいもっておいしいですよね。小説の書き方が未だに定まらない。あやふやな文章になりがちなんですよね。
今回もお読みいただきありがとうございました。