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鈴燈たそ①
鈴燈(=めあり)
17歳のJK。
裏社会なら知らないものはいない白露家の三女で、現次期当主筆頭筆頭候補。
ブラコン、兄の為ならば手段を選ばない所がある。
合理性重視の養殖ぶりっこ。
鈴燈「ふ〜んふんふ〜んふふふ〜ん…♪」
白露鈴燈、と聞いて、人々は何を思うだろうか。
彼女の学友であれば可愛くて優しい頭のいい子、とでも言うだろうか?
担任ならば成績優秀な模範的生徒、とでも?
近所のお爺さんならば心優しいお嬢さん?
花屋の店員ならば博識で明るい常連さん?
…誰も彼も不正解だ。
彼女は…真の悪魔なのだから。
——某日、裏キャバ『うつつ』
何気なく、だった。
友人に誘われ仕方なくきたキャバクラ。
特別な紹介がなければ入る事すら出来ない、非合法なキャバクラ。
正直な所、店に入るや否や帰りたくなった。
モブ「あっ…その、お客さん、お酒…いれて…欲しいなっ?」
友人「えぇ〜、でもゆりちゃん、この前も入れてあげたじゃん?」
モブ「ぇあっ、あと数本で今月のノルマなん、です…お願いしますっ…」
友人と喋っている不慣れそうなキャバ嬢…いや、少女は、どう見ても高校生くらいだ。
こんな景色があちこちで広がっているのだから目を覆いたくなる。
友人に押し切られてきたが、俺の様な一般人が踏み入っていい領域ではなかった。
この友人は一体どうやってこんな所のツテを見つけたのだろうか、分からないが、とりあえずここを出たら縁を切っておく事としよう、こんな悪趣味な店に通う様な人間と付き合ってはいられない。
ため息をついて、こんな所に居るつもりは無いと言わんばかりにスマホを眺めていようとスマホを取り出した時だった。
???「あら〜、ご主人サマ、このお店はハジメテですかぁ?」
突如、隣で発された甘い声。
鈴を転がすような無邪気さに、カカオ30%の胃もたれするほど甘いミルクチョコレートを溶かした様な、どこか聴きいいってしまう、そんな声。
ふわりとフローラル系の柔軟剤か何かの匂いが鼻腔を掠め、場の空気が一瞬で満たされてゆく、気がした。
驚いて視線をそちらに向けると、そこにいたのは…1人の少女。
外ハネのツインテール、頭の上の大きなリボン、そこからぴょこんと見えるアホ毛、おっとりとした目に吸い込まれてしまいそうな赤い瞳、小柄な体型に制服っぽい服を身に纏った可憐な少女が、俺の隣にちょこんと座り込んでいた。
俺「き、みは…」
???「あっ、突然ごめんなさい!ワタシはめあり…まぁ、源氏名なんですケド。めありでも、めあたんでも、好きに呼んでくださいねぇ〜」
えへへ、と笑う彼女…めあり。
彼女もきっと高校生だろう、その身なりや何処か幼い感じが、それをひしひしと感じさせた。
不覚にもその笑顔に可愛い、と思い、直ぐに考えを改めた。
彼女は店を見る限り、店で一二を争う…は違うな、少なくとも俺の見える限りでは確実に一番の可愛さだ。
白磁の如き白い肌にバランスの整った可愛い系美人の顔がついたら、そりゃあ可愛いに決まっている。
だがそれはそれ、これはこれ。
彼女は高校生だ。そんな子にそういった感情を抱くなどロリコンのそれである。
俺はそんなものに成り下がったつもりは無いぞ。心の中で言い訳をしておく。
そもそも、こういう店は感情を許したら負けだ。
そうなった暁には店にこってりと金という金を搾り取られ俺の人生は終わるだろう。
そうはなりたくない。
だから俺はそっけなく、出来るだけ酷い男に見えるように接した。
俺「ふぅん…そうか。」
ふい、と顔を背けてスマホへと意識を集中する。
ほら、俺はカモにはならないから早く他の人のところへと行ってくれ!
そう願うが、彼女はそれでも諦めない。
めあり「…ねぇご主人サマ、なんだか、凄く疲れた様な顔をしてるけど…何かあったの?身内間とか?」
俺「!?」
驚いて視線を上げる。
彼女は優しい微笑みを浮かべ、そこにいる。
めあり「ふふ、図星だった?ワタシそういうの感じるの得意なんだ〜。…ねぇ、ご主人サマ、少し話してみて欲しいの。もしかしたら、少しでも心が軽くなるかもしれないし!」
コロコロと表情を変える彼女。
気づくと俺は、押し込めていた言葉を溢してしまっていた。
兄が先日交通事故で死んだ事。まだ実感がわかない事。引いた犯人はその場で一緒に死んでいった事。やり場の無い怒りに苦悩している事。葬式会場での母の絶望した顔が忘れられない事。
彼女は静かに話を聞いてくれた。その対応が、俺の救いになってしまったのは、言うまでもない。
——それから。
気づけば俺は、めありに会う為にあのキャバクラに通っていた。
めありは可愛く、聡明で、優しかった。
会う度に俺の心は癒される、そして、彼女のことを知れる。
話し上手で聞き上手なめありは、いつも俺の欲しい回答をくれたし、こちらの飽きない話題だって用意してくれる。
年齢以上の聡明さなので、ついつい仕事の機密な話をしてしまうのは…まぁ、めありならきっと大丈夫だろう。
勿論お酒だって入れた。
高いのを頼めばめありは喜んでくれるし、何よりめありの価値を上げられる。
最初の誓いはどこへやら、でも、もう止められない。
めあり、可愛いめあり。
叶わない恋でも、俺は君を…。
——男が初来店から1ヶ月程たったある日。
彼はほぼ毎日の様に、ワタシに会いにきた。
最初のそっけないフリした態度はどこにいったのか、ポンポンとお酒を開けていっちゃうその姿は見ていて少し滑稽…は失礼ね、面白かった。
男「あっ、めあり!はは…いい夜だね。」
めあり「…えぇ、いい夜ですね、ご主人サマぁ〜♪」
私の姿を認めるや否や笑顔になる彼。
うん、本当いい夜だよ。
さぁ、『決算日』の始まりだよ、おまぬけなご主人サマ…♡
——数時間後
男「…今日は、そろそろお暇しようかなぁ。」
おもむろに呟く彼。明らか落ち込んでいる。
ふふふ、お馬鹿さんだなぁ。
めあり「もういっちゃうの…?」
男「ごめん、明日も仕事なんだ。明日も来るから…「ナニ言ってるの?」
男「え?」
戸惑う彼。
そうだよねぇ、こんなことこれまでなかったもんねぇ。
でも、『めあり』は高いって…知ってるよね?
めあり「今日は『決算日』。ご主人サマがお店に作ったツケをまとめて!お支払する日だよぉ〜。」
男「けっ…さん、び?」
めあり「うんっ!ご主人サマ、途中からお金払えなくなっちゃってたでしょ?だからツケとして残ったお金が…ざっと640万?だからぁ、今日みたいな『決算日』にそれを全部まとめて払ってもらうんだぁ〜」
男「ろ…ろっぴゃく!?う、嘘だろ、俺そんなに入れてないぞ…!」
めあり「頼んでたよ〜、ほら一週間前酔い潰れちゃったあの日!」
男「一週間前…??あっっ」
めあり「思い出した?まぁ、その日がなくても450は確実に超えてただろーケド。」
スタッフ「お客様、きっちりと、お支払頂けますね?」
男は急に現れた600万を超える借金の返済に狼狽する。
どうせなんで!?とか思ってるんだろーけど、払わなきゃいけないもの払って言ってるだけなのになぁ〜。
めあり「それで、払えるの?払えないの?めありとしてはここで払った方がいいと思うんだけどぉ」
男「そ、そんな、大金、払えない…」
…全くもう、ダメダメなご主人サマ…。
静かに一つため息をついて、喋る
めあり「ん〜、払えないなら手が無くは無いんだけど…」
男「!ど、どうすればいいんだめありっ!」
めあり「うわっ!?ちょ、ちょっと落ち着いってってばぁ」
めあり「まず一個めは〜、しゃっきんをする!」
男「…え。」
えってなにえって。
誰でも考えつく簡単なほーほーだよ?と少し呆れてしまう。
全く、なんて腰抜けを裏社会に連れてきちゃったんだろうね、この子の友人は。
めあり「勿論金額が減るわけじゃ無いけど、この場は切り抜けられるよ!…まぁ、金額的に裏のこわーい人達から…命とか担保に取るしか無いカモ?」
さぁっと表情を青くしていく彼。
うーん、『ここ』でやってくにはそれくらいの覚悟がなきゃ。
冷静に考えれば、合法な所でも色んなとこから借りていけばかえせる位だけどね。それを考える頭も無くなっちゃった見たい。かわいそーう。
男「ほ、他には無いのか?他には…」
めあり「う〜ん…あるけど。おすすめはしないかも。働いて帰す、っていう方法。」
男「働いて…?も、もしやお店のボーイになるとか!?」
めあり「ぇと…確定とは言えないけど、ありえ…はするかも。」
男は何故か急に顔を明るくさせる。
『おすすめはしない』って言ってるのに何を勘違いしてるんだろうね?
まぁ半分はホントだから、別にいいよね!
スタッフ「どうされますか、お客様。」
男「は…働いて返します!精一杯頑張るので!そうさせて下さい!」
あーあ…。
その道を選んじゃうかぁ。
とか、思ってみる。
内心計画通りではあるんだけど、一応ね?
心配くらいしてあげないと!
まぁ、茶番はもう終わり。ここからは『めあり』じゃ無いよ。
めあり「は〜…ボーイ。奥連れてっちゃっていいよ。あの子にあげといて。」
スタッフ「かしこまりました。」
男「奥?あの子?えっと…どういう」
めあり「あ〜、知りたい?いや、別に直ぐいくだろうしいいよぉ。」
ボーイに取り押さえられている彼を見つめる。
数刻前まで青ざめていたとは思えない、若干の好奇心が垣間見える。
さぁ、現実を見てもらわなきゃ。
めあり「あの子っていうのはうちの優秀な研究者ちゃん。ちょっとカゲキだから苦しいかもだけど、死ぬよりはいいんじゃ無いかなぁ?…死ぬかもだけど。」
男「けんきゅ…え?どういうことだよめあり…」
オロオロとする男を、ボーイが殴る。
男「ぐあっっ!!」
スタッフ「貴様、誰に向かって口を聞いていると思っている?」
ボーイの重い圧に耐えながら、男は口を開く
男「だっ、誰に、って…そりゃあ勿論めありに」
ボーイが再度男を殴る。
ひょえ〜、お腹にストレートパンチなんて!いたそ〜。
ボーイは怒りを露わにしながら男をみて、言った。
スタッフ「この方はうちの店の管理人であり白露家の次期当主候補、白露鈴燈様であらせられr…」
—刹那。ほんの一瞬で、私は足元に忍ばせていたナイフを素早く取り出し、そのままボーイの喉元を掻っ切った。
スタッフ「ぁ…カハッ……」
鈴燈「ねー、ワタシさ、『ワタシの名前を教えていい』なんて一言も言ってないんだけどぉ〜。」
スタッフ「ッ…!!!」
その場で血を垂らしながら崩れ落ちたスタッフをニコニコと見つめる。
ボーイの顔には恐怖がありありと書かれていて…あ、『眼が黒になってる』。
うちの家系は光の加減によって目の色が黒っぽく見える事があるのだ。
他人曰く、黒くなってる時は一才の光を通さない本当に真っ黒状態なんだとか。
詳しいことは知らない。
でも、この眼の不気味さで大体の人間は怯む。
このボーイもその状態だろう。
スタッフ2「申し訳ございませんお嬢様。全て私の不得と致す所でございます。」
と、ボーイの中でも偉そうな、喉潰れちゃんとは違う人がペコリと頭を下げた。
なんか執事っぽいヒトだなぁ。本家の執事に採用しようか?お屋敷和風だけど。
飽きちゃった…
いつか続き書きますいつか