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苺の赤は、幸せの赤。*2 君が消えた世界で
なんで?
なんで、仏壇が消えたの?あんなに大きいものを、お母さん1人で動かせるわけないのに。
私は混乱した。
そして、“ある言葉”を思い出した。
もしも、あれが本当に起きているのなら――。
私は、必死に掘り出した記憶を頼りに、アルバムを探した。
――あぁ。信じたくない……嫌だ。
2人で撮った写真が、全部、私だけの写真になっている。1枚も、流星の写真はない。
流星が、この世界から消えた。存在ごと――。
私は、そっとアルバムを戻した。
そしてゆっくり息を吸って、吐いた。
「お母さん……お昼食べたら友達の家行ってくる」
「え?今日入学式なのに、もう友達できたの?」
「小学校の友達っ」
雑に答えて、着替えも兼ねて部屋に籠った。
消えてる。
流星の言ってたのはそういうことだったんだ。
でも、なんで?
一体、何があってこんなことに?
ぶかぶかの制服を脱いで、キャミのまま考える。
神隠し……ではないか。写真からも消えちゃってるわけだし。
じゃあ、一体なんでなんだろう。
「なんで」
それだけが、私の中をぐるぐる廻った。
ちょっと肌寒くなって、シャツを着た。
いじめは、流星が亡くなってからすぐ発覚した。
クラスが遠かったから気づけなかった、というのは、身勝手な言い訳だろうか……?
……いや、薄々気づいていたんじゃないか。
それに、流星は、絶好のターゲットだった。
アルビノ。
生まれつき、色素が薄かったり、遺伝子に色素がない、特異体質。
流星は純日本人なのに、生まれつき、肌も目も髪も雪のように真っ白だった。
だから、そんな理不尽な理由で流星は……。
父親を、右耳を、友達を、笑顔を失った。
私はシャツの上にカーディガンを羽織って、下に降りた。
「華心、お母さん急に仕事が入っちゃって。ご飯、食べといて」
お母さんが出る支度をしていた。まぁ、好都合っちゃ好都合。
「分かった」
「じゃあ、よろしく」
そう言って、本当に秒で出て行った。
……あとでいいかな。お腹空いてないし。
思って、そのお昼ご飯がにゅう麵であることに気づかないまま、お母さんの後を追った。
あの横断歩道に、歩いて向かった。
風が、顔に当たった。
“あの日”と同じような、静かなのに荒い風。
私は後悔している。
なぜ気づけなかったのか。
なぜ助けられなかったのか。
なぜ、傍にいられなかったのか――。
そして、私は疑問を持っている。
なぜ流星の存在が消えたのか。
なぜ、辛いと話してくれなかったのか――……。
姉として、その後悔と疑問が、ずっと、引っかかっている。
切り方迷走中。