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ハンカチ落とし
いつもの広場で、あたしたちは集合した。ゆうすげ広場は、ちょっとだけ大きな丘があって、遊具は少なめ。だけど、邪魔するものが少ないから、鬼ごっことかにぴったりの場所だ。
でも、あたしたちはハンカチ落としをする。ハンカチが鬼の証で、鬼はハンカチを落として鬼ごっこみたいなことをする。
鬼ごっこみたいな遊びだ。それを、ユウコ・アヤノ・ハナ・アキノと、あたし・ミズエでやる。
るんるんとした気分で、今日もゆうすげ広場に行った。
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「あ、ミズエ。ハナは?」
「まだみたい。それより、その子、誰?」
優等生みたいな格好の、女の子。ここでは見ない子で、知らない子。
「わたしはレイ。一緒にハンカチ落とし、してもいいかしら?アヤノが誘ってくれたの」
「うん」
言葉づかいからして、きちんと育てられたみたいだ。
「レイとは初対面なの。なんか、一緒に遊びたいんだけどって言ってきたから」
へえ、変わった子なんだ、レイって…
「ごめんなさいっ、遅れちゃって」
「あ、ぜんぜんいいよぉ」
ハナが遅れてきた。ちゃんと謝ってくれるから、いい。
「もう1人、連れてきたの。いいかしら?」
「いいよ」
いつの間にか、もう1人の子がいた。ぼさぼさヘアで、レイとは正反対。
「こんにちは。わたしはユカ。よろしく」
「最初は、ユカが鬼でいい?」
「うん」
ユカ、鬼が好きなのかな。
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目を伏せる。誰にハンカチが落とされるんだろう。ドキドキするな。
「きゃっ」
この声は、アキノの声だ。アキノは足、速いからなあ。
「追いつけなかった〜」
「余裕だったよ」
にこっと笑うアキノ。
次はユウコが狙われた。その次はあたし。その次はユウコで、ハナ。そして、レイ。
ユカは鈍足みたいで、なかなか座れない。
「ねーえ、つまんないんだけどっ。いい加減にしてよ。ったく、鈍足め。なんで連れてきたのよ」
「そんなこと言っちゃダメでしょ」
ユウコが、遂に言った。
「もう、なんでそんなこと言うの。ユカ、落ち込んでるでしょ?」
「ユカが悪いんじゃん。もっと足、速くないと」
「まあ、もう一回、やりましょう」
レイはふふっと笑い、目を伏せた。
「いやああああっ!?」
ユウコの悲鳴が聞こえた。尋常じゃない悲鳴。
「ユウコっ!?」
目を開けると、ユウコがいない。
「遊びをけなすような子に、遊ぶ資格はないわ。だから、あの子は鬼になった。さ、鬼のユカも解放するわ。ユウコの代わりに、遊んであげて」
意味がうまく飲み込めない。すると、ふわっとユウコの面影が現れた。
ユカの手には、もう鬼の証がない。鬼の証は、ユウコへと渡されていた。