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第7話「あなた誰?」
【登場人物】
BTS:韓国の男性アイドルグループ
私:日本生まれ韓国在住の19歳大学生。
(家族構成)両親は中3の頃に離婚し、母とソウルで二人暮らし。
(身長・体重)身長164cm、体重✗kg
(推し)無し
(彼氏)無し
(夢)日本の小学校の先生になりたい。
(好きな色)紫
(趣味)料理、読書、掃除、散歩
(宝物)①両親と撮った最後の家族写真
②中学の頃好きだった男子からもらった腕時計。紫色。
(外見)眼鏡無し。黒髪で、ショートヘア(新垣結衣風)。大抵パーカーとジーン
ズとスニーカー。化粧無し、アクセサリー無し。
(性格)感情をあまり表に出さず、一人でじっくり考えることが多い。真面目 で頑固。滅多に泣かず一人で落ち込むことが多い。
*彼らが使う言葉は、表記は日本語ですが、実際は韓国語を使っています
私が気を失っている間、七人はすべての車両を見て回ったという。そこで一番不可解だったのは―空港行きの電車に乗客が誰もおらず、しかも砂漠を走行している、という事実も十分不可解なのだが―
先頭車両の運転席には、誰も座っていなかったというのだ。
でも、電車は走り続けているのである。
「信じられないかもしれないけど、」
背中を支えてくれた人が、私に言った。
「ホントだった。この電車には、運転手もお客さんもいない。いるのは、あなたと、」
手で私を指す。
「僕らだけ」
皆ため息をついた。
「まあ、今はどうしようもないから、とりあえずテヒョンみたいに自己紹介しようよ」
右端の人が初めて口を開き、皆を見回した。
「そうだね」
「うん、ジンヒョンの言う通りです」
「じゃ僕から」
右端の人が、顎に手を当てて、何か言いたげな目で、私をじっと見つめた。そのまま固まっている。私はどうすることもできず、見つめ返した。訳がわからない。そのまま沈黙していると、周りが笑いをこらえているのがわかった。
彼はしばらくして言った。
「君、たぶん僕らのこと知ってると思うんだけど?」
私は「は?」と言ってしまいそうになった。
いきなり何言い出すんだ、この人。
「あのごめんなさい…知らないです」
「マジで?」
「はい」
すると、口にピアスをした人が声を上げた。
「僕らの顔、見たことないですか?街とかで」
私は真剣に考えた。こんな知り合いいたっけ…?いや、いるはずがない。
…もしかして、有名人?
確かにありえる。こんなに顔とスタイルの良い七人組ってことは、アイドルかな?韓国はアイドルが多いからなあ…。街で見かけるっていうのは、たぶんポスターか何かという意味だろう。でもごめんなさい。私は韓国の音楽はあまり聞かないので、K-popアイドルとはてんで縁がないんですよね。
どう答えようか迷っていると、
「僕らは遠い星からやって来たんだ」
彼が静かに言った。その場はしーんと静まり返った。
「遠い星からやって来た…WWHのジンだ。29歳独身」
よろしく、と手を差し出される。
唖然、である。
「え…どこまでが名前ですか?」
「え?ああ、だから、僕はWWHのジンだ」
「ダブリューダブリューエイチのジン」
私は変な名前だなと思いながら呟いた。
「あのね、ダブリューダブリューエイチっていうのは、ワールドワイドハンサムの略でww」
ジンが自分も笑いながら言った。私は絶句した。
「ワールドワイドハンサム…」
「このひと、自分がイケメンだと思ってるんですよww確かにイケメンだけど」
背中を支えてくれた人が笑いながら言った。
「僕はミン・ユンギです。あー、29歳だけどジンヒョンよりは年下です。よろしく」
ジンの隣の人がクールに言った。
「それだけ?」
目が鋭い人が聞いた。ユンギは軽くうなずいた。
「まあいいけど…僕は、リーダーのナムジュンです。キム・ナムジュンです」
リーダー?ああ、やっぱりアイドルなんだと思いながら、握手をした。大きな手だった。
次に右から三番目の、優しい面長の人が言った。
「僕はじぇいほーぷ…じゃなかった、」
慌てて言い直す。周りがどっと笑った。
「チョン・ホソクです。希望的存在です」
元気にウインクしてきた。皆と一緒に笑いながら、じぇいほーぷっていうのは、芸名だろうなと思った。
それにしても、騒がしい。
「次はジョングギ言えよ」
「いや、ヒョン駄目だよ、年齢順だよ」
「じゃジミナから」
すると、背中を支えてくれた人が、前髪をかきあげた。なんだかどきりとしてしまった。
「僕はジミンです。年は26歳…」
「あーはいはいはい」
隣からイケメンが割り込んだ。イラッとしたので、私は思わず睨んでしまった。しかし憎らしいことに、彼は私に睨まれたことに全く気づいていなかった。
「僕はキム・テヒョンです。本名はVです」
私を除く全員が爆笑した。
「嘘つくなよ。本名がキム・テヒョンだろww」
「Vが本名ってwwそんな韓国人いるわけないよ」
私はやっと意味がわかったので、みんなと一緒に笑った。
「これでみんな言った?」
「いやあと一人残ってます」
「おっジョングギだぞ」
「マンネだマンネだ」
口にピアスをした人に注目が集まった。
「ああ、僕はチョン・ジョングクです」
さらりと言う。
「爽やかだね」
ジンが「クーッ」という顔をした。ジョングクが失笑する。
「じゃ、あなたの自己紹介をどうぞ」
リーダーが私を見た。皆も一斉に私を見る。
「あー…」
私は困ってしまった。
おそらく彼らは、大人気アイドルに違いない。全身に溢れるこのカリスマ。自信、個性、ユーモア。そして何よりも、この一般人とは思えないビジュアル…
まだ数分しか話していないにも関わらず、すでにこの人達に惹かれている自分がいる。こんなに魅力的な彼らなら、さぞファンも多いんだろう。
スーパーアイドルに自分の名前を教えるって、どうなの?なんだか、とてつもなく危険な気がする。この人達の後ろには、一体どれだけの数のファンがしたがえているんだろう。服装とかアクセサリーから少しでも熱愛を匂わせると、過去の画像やら何やらを引っ張り出してきて、たちまちプライベートの奥底まで突き止めてしまうのだ。今は合成画像とかも出回っている。私と彼らが親しくなれば、ほんとにどうなるかわからない。しかも、傷つけられるのは私なのだ。そう考えると、空恐ろしくなった。
だから私は、慎重に言葉を選びながらこう言った。
「年齢は19歳、ソウルに住む大学生です。日本人です」
「名前は?」
ジミンが無邪気に尋ねた。
「あの…個人情報だから」
そう言いながら、私は彼らの顔を見ることができなかった。
「そう。別にいいよ」
「教えたくない人もいるしね」
意外な反応に、驚いて面を上げる。
「あの…いいんですか?」
呆然としている私を見て、皆ニコニコ笑っていた。
「全然構わないよ」
「うん、気にしないで」
あまりの優しさに、私が言葉を失くしていると、急にテヒョンが日本語をしゃべった。
「アナタ、日本人デスカ?」
「ハイ、ソウデス」
私がテヒョンの高い声を真似すると、みんな感嘆したように言った。
「韓国語上手ですよね」
「うん、てっきり韓国人だと思ってた」
私は照れてしまった。
「中学生の時から韓国にいるんです」
説明すると、皆ああー、と納得したようだった。
「でも…なんて呼べばいいかなあ」
ジミンが真剣に悩んでいる。
「どういうこと?」
ジョングクが尋ねた。
「ほら、名前がわからないから…」
「ああ、仮の名前をつければいい」
ナムジュンがこともなげに言った。
「仮の名前…」
皆が私をじっと見たので、私はどぎまぎしてしまった。
「アーミー、はどうですか?」
しばらくしてジョングクが呟いた。アーミー。英語で軍隊という意味だ。でも、なんで???
「ああ、いいね。かなりいい」
リーダーが細かくうなずいている。
「アーミーを短くしたらアミでしょ。アミって、友人とか愛人っていう意味なんだよ。いいんじゃない?」
ジミンが得意げに言った。皆も賛成のようだった。よくわからないけど、
「アーミー」
私も小さく呟いてみた。なかなかいい響きだなと思った。
「じゃ、私はみんなをなんて呼べばいいですか?」
七つの顔を見回すと、リーダーが言った。
「僕は…ナムジュニオッパでいいよ」
「いや、ラプモンオッパだろ」
「ラプモンww」
「僕は、あー…ジニオッパでいっか。できればワールドワイドハ…」
「ユンギオッパでいいです」
「ホビホビでいいよ」
「僕のことはジミニオッパ」
「テヒョニオッパ!」
「僕はジョングギオッパでいいですよ」
…いや待て待て、そんな一斉に言われても覚えられんし!
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それにしても私、
いつまでこの人達と一緒にいなきゃいけないんだろうか…???
まあ、いいや。楽しそうだし、当分このままでも。
第七話「あなた誰?」、お楽しみいただけたでしょうか?❤
*アーミーについて。
ジョングクが提案した”私”の仮の名前「アーミー」は、btsのファン名である「army」からとったものです!(アーミーちゃんはそのことを知りませんけどね)
次回は、第八話「情報収集」です(^^)
どうぞお楽しみに😀