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ラズリ 第5話 夜明けへの道を辿って。
柘榴は解毒剤を舞の方に滑らせる。
舞はそれをエメルの方に投げた。
「使え!」
「は、はいっ」
沈黙…。
かこんっ
何かが落ちる音がした。
舞が振り返る。
その瞬間柘榴が走り出す。
「舞さ…」
声が出ない。
「うるさいなあ。」
「優里っ!!」
鈍い音がした方を見る。
腕にナイフが刺さっているのを見た瞬間、痛みが追いついてた。
「いっだああああああ」
優里は腕を押さえた。
血が流れている。
その光景に一番敏感に動いたのはエメルだった。
「俺より優里の方が重症じゃないか!」
横のレイルは黙って解毒剤を注入している。
タクも隣で黙って正座していた。
優里は頭をフル回転させた。
(これは毒、なら抜いたほうがいい。毒を巡らせないように、体温を低下させるもの…。)
辺りを見渡す。
「え…?」
そこで見つけたのは、血まみれの舞である。
「舞さ…」
優里の心配無用だった。
彼女の周りの血は返り血だったからだ。
傍には柘榴が倒れている。
彼女は額の血を拭うと、何かに気づいたように目をみひらく。
「お前ら!逃げろ!爆弾だ!」
舞は優里の方へきた。
「これで…どうか。」
舞は優里の手を掴んで御守りを入れ、その手に握らせた。
優里は体が言うことを聞かなくて、頷くこともできない。
ただ、心の中で、はいと、つぶやいた。
エメル達も何かを堪えるような顔をして去ってゆく。
タクは泣き叫びながら走っていった。
4人が見えなくなってしばらく、ぼーっと外を見つめていた。
(僕、ここで死ぬんだなあ)
爆発より先に低体温か、貧血で死にそうだ。
御守りを見た。
「舞さん…。」
思い出した。舞さんの言葉。
『生きる希望を捨てるな。』
『でも僕ら、殺し屋ですよ?』
『それでもだ。』
「争いでふしたものよ…この地で眠りたまえ…!」
聖者の叫び声。
戦争が終わってから一年。
殺し屋は解散。
それぞれの道を行った。
番外編①に続く…
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