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箱入り姫は、愛されすぎて身動きがとれません!③
第3話:開かないファスナーと、三人の吐息
結局、カイルが選んだシルクのロングドレスを着ることになったちぐは。
鏡の前で背中を向けたけれど、どうにも最後の一押し、背中のファスナーが上がらない。
「……あ、あの。誰か、手伝ってくださる?」ちぐはが小さな声で頼んだ瞬間。
背後にいた3人の空気が、ピリリと変わった。
「私が」
「俺がやるよ」
「いえ、私が一番慣れております」
三足の靴音が同時に響き、ちぐはの背後に影が落ちる。
結局、じゃんけんで勝った(というより威圧感で押し通した)レオンが、手袋を脱ぎ捨てて素手でちぐはの背中に触れた。
「……っ!」冷たい指先が、熱を持ったちぐはの白い肌に触れる。
国宝級と謳われるその背中、肩甲骨のラインがあまりに美しく、レオンの喉が小さく鳴った。
「ちぐは様、少し……動かないでください。生地を噛んでしまっています」レオンの低い声が、耳元で震える。
背中のファスナーを引き上げる指先が、わざとなのか、ゆっくりと、愛おしむように滑っていく。
「レオン、遅すぎ。……ちぐは様、俺が代わりましょうか? 髪が邪魔ですよね。僕がまとめてあげます」横からシオンが、ちぐはのうなじに触れ、柔らかな髪をかき上げる。
むき出しになった首筋に、シオンの熱い視線が突き刺さる。
「……シオン、あまり姫を困らせないように。ちぐは様、私が前を支えましょう。苦しくありませんか?」カイルが正面に回り込み、ちぐはの両肩を大きな手で包み込む。
前後左右、3人のイケメン執事に密着され、ちぐはの頭の中は真っ白。
(な、なんなの……。ファスナーを上げるだけなのに、なんでこんなに……熱いの……!?)
恋愛不器用なちぐはは、これが彼らの「寵愛」という名の執着だとは気づかない。
ただ、バクバクと暴れる心臓を隠すのに必死だった。
「……できました。ですが、ちぐは様」レオンが最後の一段を引き上げ、耳元で残酷なまでに甘く囁く。
「このドレス、あまりに似合いすぎて……今日は誰にも見せたくありません。このまま、私の腕の中に閉じ込めてしまいたい」
「レ、レオン!?」ちぐはの顔は、もう熟したリンゴのように真っ赤。
執事たちの甘い包囲網は、朝からフルスロットルで……!