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【2】この街で
「ふぅ」
ため息も凍るこの世界。永遠に冬のこの世界。
不思議だ。なんで人は生きていられるのだろう。
この世界では、一人ひとりが異能を持つ。人の数だけ能力がある。
でも、厳しいはずだ。何年も冬なのに、なんで生きていられるのだろう。
「春が、みたいな」
最後に見た冬以外の季節は、もう遠い昔の記憶。たった一つの記憶。紅葉の葉っぱの記憶。それだけ。
何で、春が来ないの?
何度も聞いた。何度も。大人は答えない。私はもう13だ。教えてくれたっていいはずなのに。
窓を開ける。こっそりと抜けて走り出す。
この街を抜けて行こう。
氷の道を滑る。滑るほうが好きだ。でも、温かい地面を踏みしめて走るのはもっと好きだったのに。
「わーーーーーーーーー!」
思わず叫んでしまった。眼の前に人が倒れている。
「誰か、誰か来て!」
ぷつり。何かが切れた。それは私の記憶だ。