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二択問題Ⅴ(#5)
前回の問題(第三問目)で、バイクで何かを轢いてしまった主人公。果たして、その正体とは……!?
轢いたものを見ようと、振り返ると、そこには――。
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振り返る途中で、やっぱりやめた。やめてしまった。
見るのが怖かった。また、大切なものがなくなってしまうんじゃないかという不安と怖さが、襲う。
何とかバイクで轢ききったものの、これでは、なにを轢いたのかがわからない。
振り向くことさえできなかったが、なにを轢いたのかが、気になる。なんせ、轢く途中に変な音が聞こえたから。
轢く途中で聞こえた、音。あのボキボキは何だったんだろうか。まるで、骨が折れるときの音のよう……――。
そういえば、|奇埜埼透也《きのさきとうや》が、いつかこう言っていたのを思い出した。
『俺さ、子供産まれたんだよね。女の子。で、ソッコー名前決めた。|羅々《らら》。いい名前だと思わな~い?』
その時の透也の顔を、今では、はっきりと思い出せないけれど、とても嬉しそうな顔をしていたような気がする。
『妻の|咲良《さら》も、娘の羅々も、ちょー頑張っててさ、それに羅々が、めっちゃかわいかったんだよ~!! おまえにもいつか見せてやりたいなー。落ち着いたら、顔、見せてやるよ。マジでかわいいんだからな!』
『そっかー。それは、見たいな~。それにしても、子供かぁ~。そろそろ考えたほうがいいのかな~。それよりも、まずは、相手を探さないとだね、あはは笑。でもむりかな~』
そんなような会話をしたのを覚えている。
――まさか、そんなこと……!
勢いよく振り返る。今、はっきり見える、さっき引いたそれは、いつか見た写真と同じようなものだった。
轢いたせいで、形が随分と歪んでしまっている。
あのとき、透也が見せてくれた、あの、女の子の写真と、すごく似ている。
写真を見せてくれた時から3年が経っている。それでも、あの顔を見ると思い出す。
目頭付近にあるほくろ。細い眉。ほのかに赤い唇。そして、クリッとした大きい目。
すべて印象に残っている。脳に焼き付いている。
轢いたのは、透也の娘の、羅々だ。
これで、透也も、透也の家族を、殺してしまったことになる。
なのに、別に罪悪感はない。だって。だって……羅々は、あいつに似ているから。透也を奪ったあの女に似ているから。初めて羅々の顔を見た時もだけど、その前にあの女の名前が透也の口から出てきたことに、少しイラついていた。
そう、羅々の母親の、透也の妻の、咲良が憎い。
どうせ殺すなら、咲良のほうが良かった。
愛する透也の娘というと、違ったかもしれない。母親が、咲良でなく違う女性の人だったら、罪悪感を感じたかもしれない。
でも、透也の娘であり、あいつの子である。
だから、何も感じないのだ。
「どう?♥ しっかり思い出に浸かれた?♥ そっかー♥ 君にとっては、透也? って人は、初恋だったみたいだねー♥ ボク、そんなこと、考えたことなかった♥ だって君は――♥」
「やめろ!! その名前を……。二度と口に出すな」
お前にその名前を言われると、イラつきが増す。
|五月蠅い《うるさい》。五月蠅い。五月蠅い。五月蠅い。五月蠅い。
「もう、透也はいないんだ!! あぁぁ!!!!! 僕が殺したんだ!! 僕が……!!! あ、は、は、は、は、は、は――――――!」
「とうとう、狂っちゃったみたいだね♥ おーい?♥ そろそろ次の問題いっちゃうからねー?♥」
もう、問題なんてどうでもいい。
「問題がどうでもよくなっちゃだめだよ~?♥ じゃ、忘れさせようか♥ 一時的だけどね♥」
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……あ、れ? 今まで、なにを……。
そうだ。第三問目を、実際にやり終わって、
「そう!♥ 次は第四問目だからねー♥ 第四問目は、確かぁ……♥ 二つの
大事なものがあって、ある日見ると、どっちも汚れていることに気づいて、どっちかを放置するか、選ぶんだったよね?♥ えっと、時間と精神的にどっちかしかきれいにすることができないんだよね?♥ 一つは、中まで染みた汚れで、もう一つは、中までは染みてないけど、汚れの範囲が広いんだよね~♥」
そして、目の前には、どこが汚れておるのか分からないものが二つ……いや、女性が二人いる。
どういうこと?
人形とか、そういう類のものじゃないの?
「……残念♥ これから、……どっちだっけ?♥ 中まで染みてるほうを放置するんだよね♥ じゃ、中まで染みてないほうは、片付けておくね♥」
え、あ、そっか。|放置する《・・・・》だから、これからこの女の人を放置すればいいんだね。楽勝じゃん。
「ねぇ、そこの……何て名前なの? かわいい子ね💕 あなた、私のモノにならない? 悪いことは……いっぱいシちゃう?」
……何言ってんだこいつ。
馬鹿胸がでかいキモイ女。あいつよりもキモイ。
とにかく、離れないと。
そう思って、あの女から離れようとした。
すると、いつの間にか腕を抱き寄せる感じで摑んできた。
うわ、きっしょ!!
そういうのに興味ないんだわ。
逆に引くわ。
「ねぇ。離れてくんない? オバサン」
歳は、そんなに離れてないように見えるけど、この手の奴は、こういうと怒ってこの場を離れる。相手には失礼だが、しょうがない。だって、本当に、こういうのに興味がない。
「お……オバサンですって!? まぁ、それほどあなたが若いということね。いいわ。ね、これから、あたしとぉ、イ・イ・コ・ト・――」
「ん? いいこと? 死ぬこと? いいよ、殺してあげようか?」
「!?」
いきなりあんなこと言われたら、まぁ、あんな風になるよな。
女が驚いているうちに、さっさとこの場を離れてしまおう。
走る。走る。
「やぁだぁ~💕 逃げないでよぉ~💕」
そんな感じで、追ってくる。
これ、もう放置できない。
てか、いつまで放置すればいいんだ。
「お~い聞いてるか?」
「はいは~い?💕」
「お前じゃない、女声の男のほうだ」
「ん?♥ 放置する時間?♥ まぁ、もういいでしょう♥ 君、こういうの興味なさそうだから♥ あー、なんかちょっとつまんなかったな~♥」
てか、あの女の中のどこが汚れてるんだ?
「そういう中じゃない♥ あっちの、中のほうだよ♥ ふふっ♥ なんか恥ずかしい♥」
あっちの中って……。わかんないなぁ~。
「あれ、君って、意外と鈍感??♥ ま、いいや♥ じゃあ、最終問題、第五問目だね♥」
息をのむ。
ついに最後の問題か。
どんな問題だっけ。
緊張してきた。
あれ、頭が、痛い。
何か、忘れてるような……。
(あ、やばい……♥ 切れそう♥)
第四問目は、自分でも、謎でしたw
知ってます? 中が汚れているとは、××のことなんですよ?? 皆さんは、知らなくていいです。
知ってしまうと、危ういですからね。あの女が。
ほかの人が、きっと離れてしまいます。
いっちゃうと、あの女は、性格がくそですw(他の意味は、あるのでしょうか?)
ところで、何が切れちゃうんでしょうね?
次回も、楽しみに待っていてください!
最後まで読んでくれた方、めっちゃ! ありがとうございました!