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17.クランは、刀を発想する
「なんじゃて! 新しい武器を作ってほしい、じゃと!?」
建物の奥の方から、ガルーダと思われる人物が叫びながら走って来た。
「はい」
「どういうものだ!?」
「ガルーダ様、私が説明しますから!」
「邪魔じゃ!」
女性とガルーダが争っているわ。
これは割り込んだほうが良いかしら?
「はじめまして、わたくしはクランと言います」
「ガルーダじゃ!! それで、どんなものを作って欲しいんじゃ!?」
「それはですね……」
わたくしはガルーダに、片方しか刃がなく、速さも十分に得られるものを作りたいことを、その理由も含めて説明した。
「なるほどなるほど。刃を片方にするとなると……こんな感じか? 長さはどれくらいがいいんじゃ?」
「そうですね……ひとまずこの両手剣と同じ長さでお願いします」
「形状は?」
「真っ直ぐで」
「真っ直ぐ、のう……よし、分かった! クランとか言ったか? この後時間はあるのか?」
「ありますけど……」
「少し待て、試作品を作ってくる!」
「! ありがとうございます!」
これは嬉しいわ。思っていたのは何回も作って次の案を考えて……という感じだったんだけど、その手間がかなり省けそうね。
「よし、試作品じゃ。耐久性はあまりないが、どんなじゃ?」
「お借りします」
——ヒュン、ヒュン
「!」
軽いわ。かなり。
そしてちゃんとスピードも出るわね。
そして何より……
「持ち歩きに向いていますね。大して重さもないですし」
「たしかにそうじゃな。では入れ物まで作ってみるか?」
「はい、そうしてくれたら嬉しいです。ですが……」
「ちょっと待て、今作ってくる!」
そう言ってガルーダはまた鍛冶場に向かおうとしている。
「待ってください!」
「……なんじゃ?」
走ろうと……いえ、走り始めていたガルーダが動きを止め、振り返ってくる。
「これ、もっと剣の幅を狭くすることが出来ませんか?」
今の形状は両刃剣が、その幅を均等にして薄くなっただけのものだ。
だけれど、両方に刃があるなら仕方ないならばいざしらず、片方しか刃がないならばそんなにもいらない。
「幅? それだとさらに軽量化がされるのう……よし、試してみよう! まだ時間はあるのか?」
「はい」
「よし、作ってくる!」
今は冬。
まだ時間帯的には遅いとは言えないとはいえ、日が沈み始めている。
「カナン、これ、遅くなると寮には言っておいたほうが良いかしら?」
「そうですね……行ってまいりましょうか?」
「いえ、いいわ。魔術でなんとかするから」
「それならよろしくお願いします」
さてと、何で伝えようかしら?
安心なのは土魔術よね?
『サリアへ
帰るのが遅くなりそうだわ。寮に伝えといてくれる?
クランより』
うん。後はこれを書いた石板を部屋で作り出すだけ
「土よ、板を作れ」
寮の中のわたくしの部屋。そこの入口付近を思い浮かべながら呟く。
魔力が少し、抜ける感じがした。
きっと成功だわ……。初めてやったけど何とかなるものなのね。
「出来たのじゃ!」
ガルーダが随分薄くなった剣と、鞘を持ってきてくれた。
「鋭さはそこまでないのじゃが、試作品としては上出来じゃろうて」
「それは助かります」
そして、また剣を借りて、振ってみる。
——ヒュン、ヒュン
……とても軽いわね。これで攻撃に効果があるのかはよく分からないけれど……
けれどこれだと、軽すぎる剣を安定させるために両手が必要になってくるかもしれないわ。特に刃の長さが長くなってくると、そうしたほうが良さそうね。
それに、もう少し長さがあったほうがわたくしとしては重さを感じられて安心だわ。
そして、次は鞘に入れたものをすぐ出すことをしてみた。
腰に鞘を付けて、剣をそこに入れる。
出してみると……
スムーズにはいかなかった。
両手剣は、剣の長さは同じでも、その分幅が広いからそこまで剣を出すときに引っかかったりはしない。
だけど、この剣は剣の長さは同じで、幅が狭い。
そのことが、剣を抜きにくくさせた。
「鞘に剣が引っかかって抜けにくい気がしますね」
「うーむ、そうか……。……! それなら、剣をカーブにしてみたらどうじゃ!?」
しばらく考えていた様子のガルーダが急に声を上げた。
剣をカーブにする?
「つまり、こういうことかしら?」
はじめのときにガルーダが書いてくれた紙に書き込む。
「抜くときの体制と持ち方を考慮すると、こっち側に刃があったほうがいいから……曲がっている方の内側を刃にする、みたいな……」
「なるほどな、良さそうじゃの! まだ時間はあるか!?」
「はい。多分次で最後くらいでしょうが……」
「問題ない、他に要望はあるか?」
「あ、じゃあ剣をもう少し長くしてくれませんか?」
「剣を? どれくらいじゃ?」
「はじめの試作品くらいの重さのもので」
「ああ、理解した。幅はさっきくらいで良いんか?」
「ええ」
「分かった、じゃあまた作ってくる!」
日は、ほんの少しだけまだ残っている。
もちろん魔導具があるから行動には問題がないんだけどね。それでも時間を意識ししてしまう。そんな効果が夕日にはあった。
また、しばらく待った。
「出来たぞ!」
ガルーダがやってきた。
「どうじゃ!?」
わたくしは、またその剣を借りて、振るってみる。
——ヒュン、ヒュン
相変わらず速い。
そして、多少は重さも感じる。
もちろん、本番はこれよりは重くなるでしょうし、これくらいでちょうど良さそうね。
次に、鞘に入れて取り出してみる。
さっきとは違い、取り入れや少しのカーブで、大分抜きやすくなった。
これならきっと、すぐに出すことができそうね。
「完璧だわ」
「本当か!?」
「ええ。じゃあ本番用の剣を……できる限り速く作ってくれないかしら?」
「もちろんじゃ、できたら連絡しよう!」
「ええ、わたくしはファブロー学園の寮にいるわ。クラン・ヒマリアに手紙を届けたい、と言ってくれればきっと大丈夫よ」
「分かったか、ジュリ?」
「分かりました」
あら、あの女性はジュリと言うのね。
「では、耐久性にも出来るだけ気を使った、鋭い剣をお願いします」
「もちろんじゃ! 久しぶりに腕がなるのう……」
それにしても他の依頼は良いのかしら?
そんなことが気になったけれど、時間も怪しいので、わたくしはさっさと帰ることにした。