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瞬きの力
あるとき、力を手に入れた。
それは、2回連続で瞬きをすると時が止まる、というものだ。
もう一度、同じ様に瞬きをすると動き出す。
なので、長時間は止められない。
オマケに、意図せず時が止まることもある。
「あーあ、どうせならもっと凄い力がよかったなー……」
特に役にも立たない力だ。
重い溜め息を吐きながら、歩む。
早く家に帰って、アニメを見たい。
足早に進んでいると、横断歩道に差し掛かった。
「__危ないっ!!」
裂く様な鋭い声。
反射的に顔を上げると、男の子がボールを拾っているのが目に入った。
その隣にいる、トラックも。
考えるより先に飛び出していた。
男の子を抱え、迫り来るトラックの方を向く。
痛みに備えて筋肉に力を入れ__ようとしたが、その必要はなかった。
いつの間にか2回、瞬きをしていたらしい。
トラックはぶつかる寸前で、静止していた。
そっと男の子を歩道に移動させ、時を流す。
親のものであろう、歓喜の声が聞こえる。
「__案外、この力も悪くないかもな」
晴れ晴れした笑みを浮かべ、騒ぎから離れた。