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箱入り姫と6人の騎士 12
赤都 乃愛羽
硝子の鼓動と涙の再会〜
手術から数日後。
ICU(集中治療室)の静寂を破ったのは、規則的な機械音と、微かな衣擦れの音だった。
「……ん、……っ」
ちぐがゆっくりと目を開けると、視界の先に、ありえないはずの「色」が見えた。
柔らかな金色の髪。泣き腫らしたような、でも誰よりも優しい瞳。
「……ちぐちゃん。……おはようございます」
聞き間違えるはずのない、透き通った声。
そこには、自分の命と引き換えに消えたはずの、るぅとが座っていた。
「るぅと……くん……? 私……死んだの……?」
ちぐが震える指先を伸ばすと、るぅとはそれを両手で包み込み、自分の左胸へと導いた。
トクン、トクン……。
そこには、ちぐが数日前まで自分の胸で感じていた、あの力強いるぅとの鼓動が、本来の主(あるじ)の元で脈打っている。
「死なせませんよ。……勝手なことして、本当にバカなんだから」
るぅとの目から、大粒の涙がちぐの手の甲にこぼれ落ちる。
「君がいない世界で、僕だけ生きてるなんて……そんなの地獄です。でも、君が僕を呼び戻したんだから、もう絶対に離しませんよ」
「……よかった……。るぅとくんが、笑ってる……」
ちぐが安堵の笑みを浮かべた瞬間、背後の扉が開き、他の5人がなだれ込んできた。
「ちぐ!! 目を覚ましたのか……っ!」
ななもり。が駆け寄り、ちぐの反対側の手を握る。
「よかった……本当によかった……。るぅとも、ちぐも、両方失うかと思ったんだぞ」
「……ちぐ、お前マジで勘弁しろよ」
ころんが鼻をすすりながら、ぶっきらぼうにちぐの頭を撫でる。「もう二度と、あんな真似させないからな。……24時間、俺たちが交代で見張ってやる」
「そうだよ。これからは、俺たち6人の騎士(ナイト)が、君を一歩も外に出さないから」
莉犬が、ちぐのシーツを握りしめ、執着の混じった笑顔を見せる。
さとみとジェルも、ちぐのベッドを囲むように立ち、逃げ場を塞ぐように微笑んだ。
「お前の新しい『機械の心臓』のメンテナンスも、体調管理も、全部俺たちがやる。……いいな?」
ちぐの胸には、もう生身の心臓はない。
最新の補助人工心臓が、微かな機械音を立てて彼女の命を繋いでいる。
それは、自らの意志で「人間」であることを捨ててまで、るぅとを救った証。
「……うん。……私、もうどこにも行かないよ」
恋愛音痴だった少女は、ついに理解した。
6人の騎士たちは、自分を愛しているのではない。自分という「唯一無二の命」を共有し、支配し、慈しむことに悦びを感じているのだと。
生き返ったるぅとを含めた6人の視線が、熱く、重く、ちぐに突き刺さる。
それは救済という名の、永遠の「甘美な監禁生活」の始まりだった。