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解のない鏡
目の前には海が広がっていた。
線路が海と平行に続き、視界の端には踏み切りがある。
海のにおいが鼻をかすめ、海の音が耳に入ってくる。
目を瞑ると視覚以外の情報が濃くなり、海の音が大きくなる。
太陽の光が暖かい。
踏切の少し先には無人駅があり、人が一人ぽつんと立っている。
近寄って見てみると、セーラー服を着た女の子だった。
…かわいい。
でも女の子と私がいる世界は、どこかおかしい世界だった。
看板の文字が、左右逆になっていた。
どの看板も、全部逆になってる。
女の子に話しかけても、女の子はスマホに繋がれたイヤホンをつけていて聞こえていない。
聞こえていないどころか私が目の前にいるのに気づいてもいないようだ。
きれいな人だな。
女の子は、誰かに似ている気がしたがきれいだった。
愛嬌のある感じで、かわいい声で喋るんだろうな。
そのようなことを考えていると、線路の奥から電車が走ってきて風に揺られた。
風が前髪を崩し、スカートをひらつかせる。
崩れて目にかかった前髪をかき分け、女の子の方を見ると彼女はいなかった。
看板に目をやると、字は正しい向きで並べられていた。