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友人。
放課後。
暁色の空、太陽から|溢《こぼ》れた光が窓から|溢《あふ》れた。
机や椅子などはその太陽の色に照らされた。
授業は全て終わり、部活のない生徒が皆が帰りだす頃。しかし、殆どの人が教室内に残る中、私は一人、席を立ち上がり教室を後にした。
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「………起きられる?」
「蝶野 様」と表示している病室に足を踏み入れた。
病室の中、アルコールの匂いが漂った。パーテーションで仕切られた空間、私は彼女にそう話した。
ただし、彼女はどこかを見ていて返事はなかった。
「………」
隣に置かれた物置きに花瓶を置き、買ってきた花をそっも入れた。アルコールの匂いにかき消されて、まるで花の匂いは私にも逢永の鼻にも届かなかった。
亡くなっているわけではない。
去年、植物状態になってしまった。
私の目の前で車に轢かれた、その日から今日まで、意識は戻ることがなかった。
名前は|蝶野 逢永《ちょうの あいな》。
たった一人の大切な友達。
4歳ぐらいの頃から中学校まで、ずっと一緒に居た。ただ、神様はそれを許してはくれなかったらしい。
医者によると寿命はもう長くない、らしい。
「………起きてよ…」
ふと、彼女の明るく無邪気な笑顔を思い出す。
少しの涙が頬を伝った。
しかし、その目が覚めることはなかった。
どんなに泣き縋ろうが、彼女起きることがなかった。ただ、布団が濡れるだけ。
そして、茶色の短かったけれど時間が経って長くなった髪が煌めいて見えるだけ。
涙を手で拭ってバッグを持って、「蝶野 様」と表示されている病室を後にした。
すごく、久しぶり。