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真也は、魔女に「死ね!」と叫ぶ
どうしたの? なんでもありません。それよりその……僕の異能ですが……全然使えなくて……ごめんなさい! 真也は深く頭を下げて謝った。それはもう勢い良く。その様子を見かねたモネは、真也の肩に手を置く。
顔を上げて。
モネは優しい声で真也に語りかける。
大丈夫だよ。誰だって最初はそうだもん。だから気にしないで。
真也がおずおずと顔を上げると、モネは真也の頭を撫でた。
その手つきは優しく、まるで母親が子供にするようなものだった。
僕は、あなたの子供じゃないですよ? ふふっ、わかってるよ。でも、君の事を大切に思ってるのは本当なんだ。真也は恥ずかしそうに俯いた。
しばらく歩いていると、大きな扉の前にたどり着いた。
モネはその前で立ち止まると、振り返り真也に話しかけた。
ここが、今日から君が住む場所になるんだよ。ようこそ、レギンレイブ・アーミィへ。
「そんな話は聞いてないぞ?! さっきからベタベタと気持ち悪い」
真也はさっと身をかわした。「ひどっ!? ウチはこんなに一途なのにぃ……ぐぬぅ……まあいいッス。先輩、そっちの子はどーするんすか?」
「お前には関係ない。失せろ」
「うわっ、冷たいっすねぇ。その子、なんか可愛いっすね。どうっすか? ちょっとお茶とか飲みません?」
「断る。消えろ」
「ちぇー、つれないっすね。じゃあまた今度遊んでくださいよぉ。それじゃあ、さよなら〜」
レギンレイブは真也の方を向いてウインクを飛ばすと、そのまま走り去っていった。
「……なんですかあれ」
「あいつはいつもあんな感じだ。いちいち相手してたらキリがない。行くぞ」
「は、はい……」
「間宮マヒロ、俺はお前の面倒なんて見ない。自分でどうにかしろ。死にたくなければな」
「はい……」
そう言い残し、白衣の男——九重透が去って行った後、真也は一人残された。
「どうしようこれ……ってか、俺をどうこう弄るのキモイんだよ。どいつもこいつも俺をもてあそびやがって」
真也は壁の刀掛けからバスタードソードを外すと腰に差した。
「今度はこっちからいじりに行ってやるわ。魔王、首洗っとけ!」
そう叫ぶと一気に魔王の城へ向かった。邪魔する物はモネであろうと容赦しない。
「ちょっと、どうしたの?真也」
とまどうモネをバスタードソードで斬り殺す。「きゃあああっ!」
モネの悲鳴が響き渡る。
魔王の城にたどり着き、中に入る。そこには、先ほどのモネがいた。
モネは魔王の格好をしている。
「真也くん? 何の用かな?」
魔王のふりをしているが、バレバレだ。「死ね!」
真也は大上段に構えた。「ちょ、ちょっと待った! 僕だよ僕!」
モネが両手を上げながら一歩下がった。
「ああ?」
「ほら、この声忘れちゃったのかい? ひどいなぁ」
モネは真也に近づくが、「うるせえ!」と言われ右腕を切り落とされた。
「ひどい…真也」
モネは腕から血を流しながら倒れ込む。
「魔王、とどめだ。死ねやぁ!」
真也はモネの首を刎ねた。ギャッという悲鳴がしてモネの生首が転がった。
「あと一仕事。何もかも終わりにしてやる」
真也はちからまかせにピカソを全開した。ゴゴゴゴゴゴゴ。地面が揺れて亀裂が走った。
地割れが王国中に広がっていく。人々が大地の狭間に飲み込まれていく。
世界の崩壊が不可逆的になった。「これで全部終わったか。……帰るか」
そして真也は異世界を去った。
異世界から帰還した真也は、自宅のベッドの上で目覚めた。異世界での戦いを夢のように思っていたが、自分の体の痛みで現実だと認識した。
「くっ、いてえ」
真也は体を起こすと、全身に走る激痛に顔をしかめた。
「おはようございます、真也さん」
「ああ、おはよう、美咲」
「真也、起きたの?……大丈夫? すごくうなされてたけど」
「あ、ああ。もう大丈夫」
「お兄ちゃん、具合悪いの? 熱あるよ」
「マジで? 気づかなかったな。今日は学校休むかな」
真也は妹に体温計を取ってもらい、測る。
ピピッという電子音が鳴ると、真也は液晶に表示された数字を見た。
39°C。
「完全に風邪だな。寝るよ」
「分かった。私、学校休んで看病するから」
「ありがと。でも大丈夫だよ。父さんの会社、土日休みだし。それに…」
そこまで言いかけて玄関のチャイムがピンポーン!と鳴った。
「あらっ?」
妹が嬌声をあげた。
「真也ー。あがるよ~」
聞き覚えのある女の声。それも二名だ。「うわああっ!」
真也は布団に潜り込んだ。すると妹がそれをガバッと外した。
「モネと魔王がお見舞いに来てくれたよ」
「うわあああ」
「うわああって何よ。奥さんじゃないの。何が怖いの?」
キョトンとする妹の横にかわいらしい女性が二人並んだ。
「ま、魔王に、モネ」
真也はゆでだこの様に照れる。
「そうよ。真也の大好きなお嫁ちゃんズでーす」
モネが茶化すと、魔王は苦笑した。
「やめてくれ。真也君、体調が悪いと聞いたんだが……顔が赤いようだが、もしかして」
「だ、大丈夫です! 元気です! だから帰ってください!」
するとモネが布団の上に乗ってきた。まるで猫のようだ。そして真也を抱きしめる。
「ずーっと看病してあげる」
すると魔王も真也を抱きしめた。「私もずっと側にいるからな」
「あの、ちょっと、困ります」
「真也が心配だったのよ。ねえ、美咲」
モネは真也に頬ずりする。
「うん。真也、本当に大丈夫なの? 」
すると妹が言った。「知らないっ。お嫁さんたちで決めれば?」
プイっと拗ねて部屋を出た。
「お、おい」
戸惑う真也に魔王とモネが積み重なった。
やれやれである。こんな調子で末永くリア充爆発しろ。
めでたしめでたし。
おわり。※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
「はい、どうも皆さんこんにちは。『まおうさまのおしろ』作者の紅緒です」
「こんにちは! 主人公の間宮マヒロです」
「今回は本編の補足説明回です」