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宮廷(ゴミ)使用人、頑張ります! ①日々
「ちょっと|柚葉《ユハ》!飯どうなってんの?!」
「はい…!今持ってきます!すみません…」
柚葉は急いで王女のところへ昼食を持ってくる。
「ふーん…毒味のせいで冷めてるじゃないの。…柚葉…」
**パシッ**
「…いッ」
「もういいわ。全く、毒味だなんていらないわ…柚葉、戻りなさい。次に飯を持ってくるのが遅かったら、お仕置きよ」
柚葉は早歩きで王女の部屋を去った。
(今日の王女様の昼食には…毒が仕掛けられていたから遅くなっただけなのに…)
平手打ちされた頬が、まだジンジン痛むし、触ると熱い。それでも、柚葉が働く理由は…………
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柚葉は、カルテミア王国の、身分が低い商人に生まれた。
親は、食料販売店をやっていて、宮廷と契約を結ぶほどの実力だった。
しかし、王女がコーテリアに変わった途端、契約をパチンと断ち切られた。
「こんな庶民の販売店で買った食材使ってるなんて、吐き気がするわ!他の高級食材を売っている、宮廷用の販売店に切り替えなさい!」
王女は身勝手な行動が多い15歳で、誰も逆らえなかった。親である王様、女王でもだ。
ついに経営が傾き、販売店だけで食えなくなった柚葉の家族は、長女である柚葉を宮廷働きに出すこと
にした。
「この子なら大丈夫だろう。宮廷の使用人として働く基準は全て突破している。15歳以上からっていうのもギリギリクリアだな…。身分は低いが生活性はあるし優しさもある。応募しよう!」
元・宮廷お墨付き食料販売店の娘ってこともあり、すんなりと柚葉は住み込みで使用人となった。
「きっと華やかで、美しき華族の生活もみれるのね!」と期待する柚葉。しかし……
待っていたのは華やかな生活を見ながらの楽しい仕事ではなく、ただの地獄だった。
掃除に洗濯、買い出しに料理。王女のお世話係、舞踏会の用意、片付け。
それに加えて王女からのひどいいじめや、過度な労働時間のわりには月一回と、少ないお休み。
しかもいじめは、王女が女王の目が届いていないところでやるため、気づかない。
それに、王女は、時々ひどい仕事や罰を押し付けてきたり、与えたりしてくる。
「生活性を身につけるため、雑巾がけをしろと言われたが嫌だからやって?」
「…かしこまりました、コーテリア様」
雑巾がけをしたあとは霜焼けになり、手の痛みは全く取れなかった。
そしてあるときは…。
「ねえユハ。あなたおもちゃ買ってきてくれなかったわね?」
「…すみません。女王様の命令で…」**パシッ!!!**
「今日はアンタ、夕飯抜きよ」
「……買ってまいります」
そう言って買ってきても、「興味が消えた。いらない」と言って夕飯抜きというペナルティーを実行してくる。
それでも、お給料は高いから親のため一生懸命働いた。
「…次戻れるのは…|降誕祭《クリスマス》の前日と当日、そして大晦日、お正月の時ね…」
自室にて、手帳を見ながら柚葉はつぶやく。
まだ、降誕祭まで半年はある。
それまでは家に戻れない。
とりあえず、いじめのことを言ったら親に心配される。
だから、言わないでおこう。