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夜空色世界
「っ……はぁ、はぁっ……!」
満月の浮かぶ夜空の下。
私は、逃げるように町のビル群をくぐり抜け続けていた。
|神時《かんどき》 |雪姫《ゆき》、15歳、高1。
現在地は、住んでいた家の隣町辺り。格好は、動きやすいキュロットに、防寒対策のパーカー。そして、大きめのリュック。中には、私の全財産と服、ペットボトルの水にお菓子が入っている。そして、親との繋がりを切ってあるスマホ。
……私は、家出したのである。
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学校。家。塾。人間関係全てが嫌になって、両親が出張していた昨日の夜、家を飛び出したのだ。
……とはいえ、そう上手くいくことはなく。たまたま起きていたお隣さんに見られたらしく、しかもそのまま警察に連絡したみたいなのだ。今朝、家から大分離れた公園のベンチで目を覚ますと、丁度警察に見つかったのだ。
それから、追いかけてくる警察達を、ビルの隙間を通って、家と家の間の垣根に隠れて、どうにか撒いた……と思ったら出くわしたりすることの連続だった。
「っ……はぁ、はぁっ……!」
……右も左も分からないくらいにひたすらに走って、気が付いたら日が暮れていて、今に至る。
警察は全員撒けたものの、この後はどうしよう?いっそのこと遠くに逃げられれば良いけれど、今の私の持ち金ではとても生活出来るとは思えない。家に戻るとしても、細かい現在地は分からない。
「……っ!」
遠くで足音が聞こえて、咄嗟に駆けだした。
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街灯の少ない道を選んで駆け進んでいたけれど、もう『町』という場所じゃなくなってしまっていた。
「…………」
今はぽつぽつと街灯が灯る、緩やかな坂道を登っている。
ふと、目の前に広がる光景に気が付いた。
満月と、月光に照らされて輝く青色の薔薇の花畑。
そして、坂道が終わり、ずっと向こうに、ぼんやりとだけれど鳥居が見える。
ゆったりと、花畑を眺めながら鳥居へ進む。
思えば、家出してから、こうしてゆっくりと出来たのはこれが初めてかもしれない。
なんだか、すごく居心地が良い。家出中なのに、まだ警察に追われているのに、解放感と安心感を感じる。
鳥居をくぐると、その先には階段があった。よく見ると、階段の先にも、鳥居が見える。
何故だか無性に、その鳥居へ向かいたくなって、階段を駆け上った。
りぃち様の自主企画用です。
第一話(プロローグ)なのでね。こんなところです。