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蝉は一ヶ月生きることもある。
コンテスト参加用!
小説書くの久しぶりすぎて短いし下手ですが
よろしくお願いします!
夏は、どうしようもなく死にたい気分になる。
自分の周りの人間は夏を謳歌してるのに、俺は何も出来ていないからだ。
いつも残業...俺だって、やりたいことはたくさんあるのに、だ。
有給?馬鹿を言わないでほしい。
うちの会社では、あれを使おうとしただけで
ものすごい剣幕で唾を飛ばしながら捲し立てられる。
最近は仕事でも怒られてばかりだ...
もう両親とも死んでいるし、友人とも最近は連絡をとっていない。
ああ、もう俺を必要としている人間はいないのかもしれない。
そう考えると、ひどく自分が惨めで笑えてきた。
いや、実際笑った。オフィスの屋上で、燻ぶるタバコを片手に爆笑した。
あーあ、死んでやろう。
だが、ここから飛び降りるのは迷惑だろうから...別の場所で。
嫌な会社相手にもこういう気遣いをしてしまうのは、
やはり日本人の悪い癖といったところだろうか。
タバコ休憩を終えた俺は、上司や同僚に何も言わずオフィスを出た。
死に場所を探してしばらく歩いていると、ポケットの中で携帯が鳴っている。
うるさいな...そう思い見てみると、そこには俺が勤める会社の名前。
まあ、怒られるわな。俺は見なかったふりをして、携帯の電源を切った。
しばらく、とりとめのないことを考えながら歩いた。
すると、もう使われていないであろう廃ビルが目に入った。
あそこでいいか...選り好みしている暇があったら、早く終わりたい。
俺は吸い込まれるように、立入禁止のテープをくぐった。
階段は、今にも崩れ落ちてしまいそうなほど不安定。
足を乗せると、ぎしぎしと不快な音を立てて俺の気を滅入らせた。
それでも臆することなく上がっていくと、ついに一番上に来たようだ。
屋上への扉にかけられた南京錠は、すでに破壊されている。
きっと、ここを根城にしたであろう不良の仕業だろう。
そう考えながら、俺は扉を開けた。
空には、雲ひとつない。
屋上のフェンスは極めて低く、
まるで”ここから飛び降りてください”と言っているかのように思える。
なら、お言葉に甘えるしかないだろう。
フェンスを跨ぎ、乗り越える。
その先にあるのは、開放感。
風が少し吹いただけで、ぐらりと落ちてしまいそうだ。
ああ、ここから落ちれば楽に...
「楽になれるなんて思ってるのか」
不意に後ろから聞こえた声に驚き、バランスを崩しそうになるも持ちこたえた。
なんだ、一体誰だ...後ろを振り返ると、そこには高校生くらいの青年がいた。
俺と目が合うと、一瞬驚いたような顔をされた。
なんでお前が驚いてるんだよ、と心のなかでツッコむ。
青年は、ふんっと鼻を鳴らしてから話し始めた。
「惨めだな、最期の青空は綺麗か?」
「ああ、お陰さんで...ていうか、お前誰だよガキ」
「名前なんて、もう忘れたよ」
「おっ、そういう時期か?忠告するぞ、後々後悔するからやめておけ」
俺がそう返すと、青年は顔を真っ赤にして反論してくる。
「心外だな、お前にわたしの何が分かるんだ」
「お前にも俺のことは分からんだろ、ほっとけ」
「ぐぬ...」
さて、気を取り直して飛び降り...
...ようとしたが、出来なかった。
流石に子供の前で飛び降りするのは良くない...
子供の頃の恐怖体験は、一生モノのトラウマになるだろうから。
俺は青年に向き直り、追い払うように手をはためかせる。
「しっし、ガキはさっさと学校行け」
「もう行く場所なんて無いさ...」
「なら家に帰れ、こんなとこ見せたかねえよ」
「家もない、とっくに全員死んだ」
複雑な家庭環境のやつなのだろうか...
今はさっさとどこかへ行ってもらいたいのだが、
俺はこいつのことが放っておけなくなっていた。
話しかけようとすると、次はあいつから話してきた。
その内容は、衝撃的なものだった。
「わたしはもう...死んでるんだ」
「...は?」
「ここから突き落とされて死んだ」
「いや、嘘つけ...」
そう言いながら青年の足元を見てみると、確かに透けている。
俺は、とんでもないものと出会ってしまったらしい。
「わたしだって、できることならもっと生きたかった...
もう、わたしみたいな想いを誰にもしてほしくないんだ」
「だから、ずっとここに?」
「ああ、ずっとここで自殺者を止めてた」
「なるほどなぁ...」
だが、俺はさっさと死にたいんだが...
言葉を選ばず言うなら、こいつは邪魔だ。別のところ探すか。
方向転換して戻ろうとすると、急に身体が動かなくなった。
小指の先ですら動かない。これは...
「お前、金縛りは卑怯だろ!」
「いやあんた絶対別のとこ行って死ぬだろうが!!」
「はぁ!?悪いか!!もう未練はねえんだ!!
自殺と他殺は根本的に違うんだ!死にたいから死ぬんだよ!!」
「なら生きたかったのに死んだわたしが馬鹿みたいだろ!!」
その言葉に、ハッとした。
そうだ、そうに決まってるだろ...俺はなんて無神経なことを。
だが、今すぐ死にたい気持ちは変わらない。
そうすると、こいつをどうするかだ...
きっとこいつは、俺に憑いてでも自殺を阻止してくる。
なら、こいつを存在ごと抹消...
未練を晴らしてやって、成仏させるしかない。
「...お前、やり残したこととかある?」
「え?そりゃたくさんあるよ」
「なら着いてこい、俺がそれ叶えてやるから」
青年は驚いたように、目を白黒させた。
かくして、俺は自分が死ぬために
幽霊の死ぬ前にやりたかったことを叶えてやることになったのだ...
---
「えーっと、なんだったっけ?」
「水族館に行ってみたい」
「そんなことでいいのか?」
「ああ、行ったことないから...ていうか、金あるの?」
「舐めんな、大量にあるわ」
皮肉にも、ずっと仕事ばかりで休めず、
金を使うことすら出来ていなかった俺の貯金はかなりある。
水族館程度の出費、痛くも痒くもない。
善は急げということで、今日のうちに水族館に行くことにした。
そういう俺も水族館なんて久しぶりだから、少しわくわくしていたりする。
「なんの魚好きとかあるか?」
「あー、ハイギョが好き」
「渋いとこ行くなぁ...確かにあの水族館ハイギョいたなぁ」
「つぶらな目が可愛いだろ」
言っていることはあまり理解できないが...
まあ、確かにかわいい...のか?
一部のコアな層には人気なのかもしれない。
水族館についたので、早速入場料を払って入場。
こいつがいるとはいえ、幽霊に入場料は必要ないため、
払う必要があるのは一人分だ。
「ずっとこんなところ来られなかったから...新鮮だ」
「家は金ないのか?」
「貧乏だから、学校だけで手一杯だった」
話を聞いてみると、こいつの家は冗談抜きで貧乏だったらしい。
平日は朝ご飯も夜ご飯も出ない。
給食だけで腹を満たすような感じ。
そのせいで彼はいじめられ...
ある日、あの屋上から突き落とされて死んだ。
聞くべきじゃなかったな、重すぎる。
俺は虫の居所が悪く、ぽりぽり頭を掻きながらそう考える。
「あ、クラゲ」
「綺麗だな、透明で幽霊みたいで...あ、悪い」
「別にいいよ、実際幽霊なんだし」
俺は、横目でちらりと彼の横顔を見る。
うん...ばりばり濃く見える。まだ成仏しないか。
ハイギョを見ないと成仏できないとでもいうのだろうか。
いや、実際そうだろう。
気が変わらないうちにさっさと死にたかった俺は、
この邪魔者を排除するために
あの手この手で急かしながら、ハイギョがいる展示ブースまで急いだ。
そして無事、ハイギョを見せられたわけだが...
「お前、さっさと成仏しろや」
「は?まだ嫌だね」
「クソ!なんだ次の心残りは」
「...家族が、今何しているのか知りたい」
青い照明に照らされ、さらに幽霊という感が強くなった青年の瞳が、
水面のように揺れたのが見えた。
まったく、なんて面倒な...
こいつが住所を覚えていたとしても、
もう引っ越していたとしたら叶わない。
俺は、その旨を包み隠さずこいつに話した。
だがこいつも退かない。
「会えなくてもいい、今何してるかだけでも知りたいんだ」
「はーぁ...まあSNSとか探してみるけどな。家族の名前は?」
「安藤聖子と、安藤清」
「実名でやってっかな...ネットリテラシーとか...」
「後でいいよ」
おもむろに携帯を取り出した俺を、青年が制した。
「せっかく金払ったんだし、ちゃんと見よう」
「いや俺はな」
「後でいいって」
俺は全く良くないのだが...早く死にたい。
頭を抱えながらも、幽霊様のご所望通り最後までちゃんと見た。
水族館を出ると、辺りはもうすっかり夜だ。
今頃会社のやつが、俺の家にカチコミ入れている最中だろうか...
だから今日中に死にたいのだが、こいつを成仏させられるかどうかだ。
俺は再度、ポケットから携帯を取り出し、
先程聞いた名前を入力する。
まずは母親の方からだ。安藤聖子...っと。
すると、全国の安藤聖子がヒットした。
「やべ、同名多すぎるだろ」
「やっぱり無理か?」
「いや...かなり手間だが、一個ずつ見ていこう」
まずは、”安藤聖子”というユーザー名の
Facebookのアカウントを開いてみた。
猫の写真が大量にアップされており、
本人が映り込んだ写真はない。
これは、誰だか分からないな...そう思うも、彼が口を開いた。
「母さんは猫アレルギーなんだ、このひとじゃない」
それなら話が早い。
俺は、同じく”安藤聖子”というユーザー名でやっている
別のFacebookのアカウントを開く。
衣服やアクセサリーの投稿が主だが、
本人が顔を出している写真もアップされていた。
年齢層的に、こいつの親であっても違和感はない。
このひとであってくれ...!そう思い見せるも、反応はいまいちだった。
「母さんはこんな顔じゃない」
「整形してるのかも」
「首元にほくろがあったはず」
「くっそ...」
その後も探し続けたが、彼の母親のアカウントは見つからなかった。
俺は公園のベンチでため息をつき、諭すように話し始める。
「やっぱ無理だ...よく考えてもみろ、離婚して再婚とかしてたら苗字は変わってる」
「じゃあ、父さんの方も」
「いや、無理だと思うけどな。お前の父さんはSNSやる感じだったか?」
「...いや、死んでもやらなさそう」
「な?」
青年は、悲しげな表情をして俯いてしまった。
諦めて成仏...する気配は無さそうだ。
まったく、どうすればいいのやら...俺は再度頭を抱えた。
それなら、最終手段に出るしかないか。
俺は腹をくくった。最終手段、全力で説得する。
「成仏しろ」
「嫌だ」
「成仏してクレメンス」
「嫌や」
「成仏してください!」
「嫌です!」
無駄らしい...必死の説得も、こいつには届かない。
だが、他にどうすれば...
考えていると、あいつは口を開いた。
「...わたしの名前で検索かけてくれ」
「...は?」
「安藤梵、黙って調べろ」
確かに、事件の取材などがあれば、
両親の名前も映るかもしれない...俺は再び検索を始めた。
「...」
ヒットしたのは、”皆ノ津市高校生いじめ自殺事件”。
...自殺???
こいつは突き落とされて死んだと言っていた。
俺は、隣りにいる青年...梵の顔を見た。
「...自殺なんかじゃ......」
声は震えていて、瞳孔は小刻みに動き続けていた。
きっと、加害者がしらばっくれたのだ...許せない。
少しでも罪を軽くしようとする姿勢に、反吐が出る。
肝心の取材映像は...あった。
できるだけ早く見たかったので、倍速で再生した。
すると、両親への取材映像が始まった。
出てきた名前は...”夏木聖子”
「旧姓か?」
「いや...旧姓は山南だった」
「離婚して再婚...子どもが死んでるのにか」
冗談で言ったあの言葉は、本当だった。
改めて、”夏木聖子”でSNSアカウントを調べる。
すると一番最初に、インスタグラムのアカウントがヒットした。
開くと、そこには同年代の男性と写った女性の姿。
...周りには、3人の子どもがいる。
なら違うか...年齢的にも、あそこから再婚して
3人出産は現実的でない。
閉じようとすると、それを梵が止めた。
「...母さんだ」
「は?でも3人子どもいるぞ...いや、旦那の連れ子か」
写る女性の顔には、満面の笑みが湛えられていた。
なぜ、そんな顔ができるのか。
俺に母親の気持ちというものは分からない。
きっと彼女なりに、せめて自分は幸せになって
天国にいる息子を安心させたい...そんな理由もあるのかもしれない。
だが、これは惨すぎる。
こんなので、成仏できるわけが...
「ありがとう」
「...え?」
後ろを向くと、もう梵の姿はなかった。
は?成仏したのか?あれで?
自分だけ忘れ去られて、無かったことにされて、
あんなに貧乏だったのに、今では幸福な家庭を築いている母に
なにか思うことはなかったのか?
眼の前がチカチカした。
心臓が脈打って、頭が痛い。
母親が幸せに暮らしてるのを見て、あいつは満足したのか。
家族が不幸になってなくてよかった...そう思ったのか?
俺は頭を抱えた。
こんなもの見て...俺は死ねるわけない。
ある夏の日の、たったにも満たない一日の出会いと別れ。
その結末は、俺の心に大きな影だけを落としていった。
俺は未だに、彼にどうしてやるべきだったのかが解らない。
【作品に込めた思い(必須)】
いわゆるイヤミスみたいなものを目指しますた
ちょっぴりモヤモヤしてくれたら嬉しい
【ユザペ掲載は大丈夫ですか?(必須)】
おけけです!是非!
【詩乃花事務所(仮)に所属されていますか?(必須)】
してないっす!
【詩乃花事務所に所属は可能ですか?(所属されてない場合)】
今回は遠慮しておきます!すみません!
【その他作品に関する一言や、質問があればお書きください(任意)】
ちなみに主人公の名前は綾薙渉(あやなぎわたる)さんでした。
出せなかったよ...幽霊の青年の名前の読み方は”そよぎ”です。