公開中
    1#はじまり
    
    
    
    これは、あなたが生まれるほんのちょっと前のお話。
むかしむかし、あるところに太陽と月がありました。太陽と月はとても仲が悪く、月はいつもいじめられていました。
あるとき、太陽が言いました。
「いつまで私に頼っているつもり?」
月は言います。
「しょうがないでしょう。お父様が許してくれないの。」
太陽は月のその言葉に大層腹を立てて、月に光が当たらないようにそっぽを向いてしまいました。
月の大地はみるみる枯れはてて、乾いた土は宇宙センターに「寄付」という名目で捨てられてしまいました。月の人々の死体も、植物の種も一緒くたにして。
ついには大きな石の塊となってしまいました。
月は死んだのでした。
太陽はお父様からの愛情と、ごはんの分け前が増えました。
どんどん明るく輝いていく太陽を人間たちは聖域とし、入ることを禁じました。そして、地球という星に移住し、太陽を信仰の対象としました。
年月が流れ、大きく明るくなっていく太陽を崇める風習は薄れて行きます。
人間は、放射線などのよくないものを沢山飛ばす太陽を邪魔者扱いし、大きな大きな黒い箱に太陽を閉じ込めてしまいました。
人々は寒さに耐えながらなんとか人口太陽をつくり、太陽を閉じ込めた箱の側面に隙間なく並べ、なんとか太陽を再現しました。
---
「そして、今の私たちがあるのです。めでたしめでたし。さあ、はやく寝なさい。明日も早いんだから。」
「ねえ、続きは?」
そうね…、太陽が食べちゃったんじゃない?
その日、僕は夢を見た。僕がおっきなおっきな太陽の箱を点検する夢を!
お母さんに言ったら笑われたけど…。
いつもの朝ごはんを食べながら、憂鬱だった宇宙センターの見学がちょっぴり楽しみになった。