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魔法試練:第七戦 無の審判
七つの試練が終わった。 炎、水、風、土、光、闇——すべての属性が、リュカの“無”によって拒絶された。 だが、試練の場に静寂は訪れなかった。
セントラルホールの円卓に座る六国の代表たちは、沈黙の中で互いの顔を見合わせていた。 そして、ヴァルゼンが立ち上がる。
「試練は終わった。だが、答えは出ていない」
彼の声は、冷たく、鋭く響く。
「リュカの力は、確かに魔法を拒絶する。だが、それは“世界”を否定する力でもある」
セラが言う。
「彼は、破壊者ではない。選択者だ。魔法に支配されない未来を示した」
バルグレイが拳を握る。
「だが、力はいつか暴走する。無属性の魔法は、制御不能だ」
ミレナが静かに告げる。
「ならば、彼に選ばせるべきだ。この世界をどうするか——その意思を」
リュカは、円卓の中央に立ち、六国の視線を受け止める。 彼の灰色の魔力は、静かに揺れていた。
「俺は、魔法を壊すために生まれた。そう思っていた」
彼の声は、静かで、確かな響きを持っていた。
「だが、試練を通して気づいた。俺の“無”は、壊すだけじゃない。選ぶことができる」
彼は、六国の代表たちを見渡す。
「炎の力は、情熱を燃やす。水の力は、心を癒す。風の力は、自由を与える。土の力は、支えとなる。光の力は、希望を照らす。闇の力は、真実を隠す」
「それらは、すべて必要だ。だが、支配のために使われるなら——俺は、それを拒絶する」
ヴァルゼンが問う。
「ならば、どうする? 世界を壊すか? 再構築するか?」
リュカは、答えた。
「俺は、魔法の“意味”を変える。力が人を支配するのではなく、人が力を選ぶ世界へ」
その言葉に、円卓がざわめいた。 セラが微笑み、ミレナが頷き、シェイドが静かに目を閉じる。
そして、ヴァルゼンが言った。
「ならば、最後の審判を下すのは——世界そのものだ」
その瞬間、セントラルホールの天井が開き、空に七つの魔法紋が浮かび上がる。 それぞれの属性が、リュカの“無”に問いかける。
「お前は、我々を拒絶するか?」
リュカは、空を見上げ、静かに手を伸ばす。 灰色の魔力が、七つの魔法紋に触れる。
だが、拒絶は起きなかった。 代わりに——融合が始まった。
七つの魔法が、灰色の魔力に包まれ、ひとつの“輪”となる。 それは、支配でも破壊でもない。 “選択”の象徴。
世界は、震えた。 魔法の時代が、終わりを告げようとしていた。