公開中
あなたの幸せ。
『今日寒いね』
神奈川にいる香澄は、薄着をしているらしい。
ライオンのポーズをした自撮り写真を送ってきた。
『薄着なんだよね?』
『見ての通り!かわいいでしょ?』
確かに、香澄の言う通り。
でも、頼むからかわいくならないでほしい。
俺の前でも、他の人の前でも。
『薄着、やめてほしいなって思うんだけどさ』
香澄が薄着でなくても薄着でも、大好きなことは変わらない。
どんな服装だって愛しているし、どんな香澄だって俺は好きだ。
でも、悪漢は香澄をどういう目で見るだろうか。
俺は、香澄を誰かの目から守ることはできない。
香澄自身の責任のはずなのに、俺は介入せずにはいられない。
『なんで?かわいいじゃん』
あなたが嫌な思いをするのは嫌だから。
あなたが変な目に曝されるのは嫌だから。
香澄が大好きだから、変な文章を送ってしまった。
『かわいいから嫌なの。いろんな人に香澄がかわいいって思われてさ、俺は嫉妬しちゃうしそう思われること自体が心配なんだよ』
『ごめんね、香澄』
それから既読も返信も来なかった。
スマホとにらめっこをしながら廊下を歩いたが、月が昇ってきても反応はなかった。
嫌われたかもしれない。
引かれたかもしれない。
俺以外の男と、歩いているかもしれない。
俺は見捨てられたかもしれない。
でもそれでもいい。
香澄が幸せならそれでいいんだ。
そう。
そのはず。
香澄が幸せなら何もいらない。
この2年間、香澄を幸せにできたならそれでいい。
エレベーターのボタンを押して、15階に昇った。