閲覧設定

基本設定

※本文色のカスタマイズはこちら
※フォントのカスタマイズはこちら

詳細設定

※横組みはタブレットサイズ以上のみ反映

オプション設定

名前変換設定

この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります

公開中

くるり、時もどし (前編)

若木が、草花がさかさか生えている場所に、一般の川が走っている。 チョロチョロした水の音だけが静かに聞こえる。誰にも秘密の、オレだけの場所だ。 8月に入ると、やっぱ夏が来たって感じがする。 夏は好きだ。だって、オレの名前とお揃いだから。 オレは川で泳ぐ魚を、一匹ずつ網ですくって、バケツにドカドカ入れていった。 オイハギみたいな大きさのやつもいれば、ほんっとうにミミズみたいな大きさのやつもいる。 今のニホンの嫌なことなんか、魚を獲ってると自然と忘れられる。オレはただひたすら、ピチピチとはねる魚を獲っていた。 気づいた頃には遅かった。 川の流れがだんだんと早くなって来てるのはわかってた。だけど、こんなに土砂降りになるとは思わなかった。 川の真ん中で、オレはただ立ち尽くしていた。 「こっから歩いたら…あぁ……」 夏の天気は気まぐれだ。 わかっていたのに、どうして、 とにかく、早く帰ろ____。 足を前に出した途端、ツルッと体ごと持ってかれた。バシャーンと大きな音が鳴ったと思えば、気がつけば水の中だった。 ゴポ、ゴポポ… 呼吸ができない。 上がろうと必死にもがいても沈むだけでダメだった。 いずれ川の激流に乗せられて、オレは硬い岩石に思っきし頭をぶつけた。水の中でも、はっきりゴンッと聞こえた。 気づけば水の中が赤くなっている。 オレは、そのまま死んだ。