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第四話 奴隷を助けました
あれから4日。
レンさんは約束通り毎日パンを持ってきてくれている。
美味しいんだけど……、こうもパンばかり食べていると……米が恋しくなってきた。
果たして、この世界に米はあるのだろうか。なかったらどうしよう……自分で作れるかな?
そして何より、飢え死にこそしないもののぼーっとしている時間が多すぎて脳がボケてしまわないか少し心配である。ということで私は頭の中でずっと九九の歌を歌っている。
九九の歌をもう3回ほど心の中で歌っていた時、後ろからもう聞き慣れたレンさんの声が聞こえてきた。
「おい、今日も持ってきたぞ」
「!レンさん」
「今日はサービス付きだ」
そう言ってレンさんが差し出してきたバスケットの中には、なんとパンと、──お椀に入った米があった。
「えぁ!?米!?」
「あ?なんだ米を知ってるのか?」
「知ってるも何も、これ、私の世界の主食ですよ!」
つい興奮して熱く語ってしまう。
「そうなのか。じゃあ、丁度よかった」
そう言ってバスケットを差し出すレンさんはもはや神に見えた。
「すまないが、俺は明日はここに来れない。ちょっと忙しくてな……」
そう言って遠くを見つめるレンさん。
忘れてたけどこの人はこの国の第一王子だ。そりゃ忙しいだろう。なのに私に構ってくれてて、なんだか申し訳ない。
「パンも明日の分もバスケットに入れておいたから、計画的に食べろよ」
「あ、はい」
多分私が一番に手をつけるのは米だけど。
「じゃあ……また明後日」
「はい、また明後日、よろしくお願いします」
そんな言葉を交わすといつも通りレンさんは転移魔法でワープしていった。
「そろそろお昼時だし、ついに米に手を出しますか……!」
私はワクワクしながらお米に手を伸ばす。ありがたいことにお箸までいれてくれてた。
遠慮なくその箸を使わせてもらって、食事前の挨拶を言葉にしようとした時、
誰かの声が聞こえてきた。
「え……人?」
まずい。見つかってしまい「お前何者だ!成敗致す!」とか言われたらどうしよ……。そんなことを考えていると話し声が聞こえてきた。
可愛い女の子の声と、下卑た男の声。
「っまってください私、ちゃんと働きます!!だから!」
「捨てないで、と?そんな都合のいい話あるかよ」
声が聞こえると同時にバチン!と痛々しい音が響く。
私は思わず小さく悲鳴を漏らす。
「じゃあな。せいぜい足掻いて飢え死にしろ」
男がそう吐き捨てると、もう話し声は聞こえなくなった。
「男は、もうここを去ったのかな……?」
私は恐る恐る声の聞こえてきた方に近づく。
すると、そこにいたのは静かに泣く少女だった。
「……大丈夫?」
「……!?」
声をかけると少女は怯えながらこちらを振り向く。
その顔は涙で濡れていた。
「……誰、ですか」
「私は、ヒリ。……あなたは?」
「……私は、サツキ……です」
暫く沈黙する。
「……ヒリさんも……捨てられたんですか?」
……『も』ということはこの子もなのだろう。
この世界は平原に人を捨てる習慣でもあるのかな?もしそうだったら流石に許せないんだけど……。
「そう。私も捨てられたわ」
「……そうなんですか……」
そう言ってサツキちゃんはまた静かに泣き出す。
私はどうしたものかとオロオロしてしまう。……するとサツキちゃんのお腹がグゥ〜となった。
「……ぁ……」
恥ずかしそうに顔を赤らめるサツキちゃん。可愛い。
「……ふふ。ちょっと待ってて。パンを持ってくるから」
そう言って私はレンさんからいただいたパンのバスケットを持ってきた。
「どうぞ」
私がさぁ!と勧めるとサツキちゃんはよほどお腹がすいていたのか直ぐにパクリとかぶりついた。
「……美味しい」
……笑顔で泣くサツキちゃん。
その様子に私も少しだけ和む。
「……私、幼い時に両親を亡くして。その後、奴隷商人に拾われたんですけど……私、家事以外に取り柄もないし、食事料の無駄だってすてれられちゃいました。……5年以上私を匿ってくれてただけでも……有り難かったです」
そう言ってふにゃっと笑うサツキちゃん。
これは、完全に……強がりだ。
「……辛かったね」
そう言えば、サツキちゃんは小さく嗚咽を漏らした。
それにしても、この世界は治安悪すぎない……?
私は留めどころのない怒りをなんとか抑えて考える。
そして、私はサツキちゃんが自分のことを話してくれたのに自分だけ話さないのもどうかと思うし、「違う世界から来て捨てられた」ことを話す。本当は軽々とこう言うことを話しちゃダメなんだろうけど。
「そうなんですか……」
泣き止んだサツキちゃんは私の話をポカンとして聞いていた。
「とにかく、食料ならまだあるし、数日間一緒にここにいましょう」
明後日になればレンさんがここにきてくれる。そしたらサツキちゃんも匿ってくれないかお願いしてみよう。
そう考えて、私も念願の米を頬張った。
レンさんがここにくる日が来た。
私達は只今ドキドキしながらレンさんを待っている。
なんてプレゼンすればいいかな?と言うのをとにかく悶々と考えていた。
暫くして、後ろから声が聞こえた。
「待たせたな…………あ?……誰だ?」
「あ、レンさん」
私はいまだ!とばかりにプレゼンを始める。
「……で、サツキちゃんも匿ってもらえないかなって……」
「……今日、ヒリを匿う準備ができたから迎えに来たんだが?もう一回国王に申請しに行かないといけねぇじゃねえか……」
でもここで見捨てるのは俺も嫌だしな……とちょっと苛立ったように言うレンさん。少し顔色悪いし、私のために頑張ってくれたんだろうな……ということがわかり申し訳なくなるが私はサツキちゃんを見捨てたくない。
「……あの。私、家事が得意ですし……ヒリさんのメイドという形で保護していただけないでしょうか」
黙々とサツキちゃんを見捨てずに済む方法考えていると、|当の本人《サツキちゃん》が口を開く。
なるほど……メイド……異世界だしそういうのもあるわけか……。
「あー……それなら、ヒリの専属メイドとして保護してやろう。今、ヒリのお世話係の任命に困っていたところだし丁度いいな。|お前《ヒリ》も文句ないよな?」
「あっはい」
なんか……あっさり説得成功したっぽい。
何はともあれよかった。
「じゃあ2人まとめて転移するか。俺に捕まってろよ?手を離したら承知しないからな?」
「「はい!」」
「じゃあ……転移するぞ」
──シュンッ──
──結構長い間いた平原にお別れして、私は異世界で新生活を始めていく。
投稿遅くなってしまい誠に申し訳ございません🙏
これからも更新は不定期なので時と場合により遅くなったり早かったりしてしまいますがご了承下さい。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
また第五話でお会いしましょう〜