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年下の男の子
ハイリスクレッド
ショート・ショートストーリー✍ 26
年下の彼と
☆
彼女の名は、八重美 (ヤエミ)。
堅物な父親とそんな父親に従順に従う母親の元でひとり娘として育った。
堅物な父親の言う通りに、勧められた女子高校へ進学し、勧められた女子短期大学へ進学し、勧められた地元企業に就職をした。
就職をし、年齢が25歳になれば父親の薦めるお見合いをし、進められるままに26歳で結婚をした。
八重美は、それまで恋愛の経験が無く愛とか恋とかの感情が乏しい上に男と女、結婚生活とは両親がお手本と思い込んでいた。
結婚相手の男性、ご主人様の言うがままに従い、ただただ子孫を残すと言う作業として交わりを繰り返し直ぐに懐妊し、27歳で出産をした。
無事に元気な男児が生まれた事にご主人様も喜び、堅物な父親からも褒められた。
こらからは、子育てに励む事が求められ専業主婦として求められるままに過ごしていた。
そんな子育ても、15年が経ち男児は生長し高校生になろうとしていた。
そして、ご主人様から一つの提案が出された。
「八重美、パートに出てはどうか?」
男子が高校生ともなれば、学業だけでなく部活動を始めれば何かと金銭的に掛かり食費も増してくる。
それをサポートする為にパートに出るのはどうか?
と言う事だった。
もちろん、八重美に反論の意はなく言われるがままにパート勤めを始めた。
八重美のパートの勤め先は、地元では有名なサービス企業であり総合事務職としての勤めであった。
パート勤めを始めて一年後、企業側の上司から正社員への登用の打診を受けた。
その頃の八重美はノーミス事務員として評判になっていたからである。
八重美は、ご主人様からも承認を受け、正社員登用となった。
おかげで日々の朝と夕方の負担は増していった。
負担が増したからといってご主人様がサポートしてくれる訳では無かったが八重美は不満不服の気持ちは湧いてはこなかった。
正社員登用となって一年後、企業側の上司から係長への昇進の打診を受けた。
その頃の八重美はノーミスを超えたパーフェクト事務員として評判になっていた。
恐れ多いと、八重美は一度は打診を固辞したのだが、企業内の女性への待遇改善を求める女性社員一同の後押しを受けしぶしぶと言う表現をしながら係長昇進の打診を受諾した。
その年の12月中旬、例年通り企業納会が行なわた。
この場で、八重美の係長昇進が正式発表され年明け、新年から係長・八重美の職務が始まる。
☆
八重美の背丈は、152センチくらい。
鼻筋は通り、頬から顎へなラインはシャープで艷やかな黒髪のショートカットが凛とした雰囲気を割増ししている。
スタイルは均整が取れていると言うよりは、胸はクンッと前に張り78、腰はクックと締り58、臀部はプリッと上がっている80。
いわゆるダサい事務服でもその胸、腰、臀部のクンッ、クック、プリッは見て取れていた。
だが、この日の八重美の服装、衣装はさらにクンッ、クック、プリッが増々であった。
ボディラインに沿ったスーツジャケットに腰から太ももに沿ったタイトスカート、ふくらはぎの張りを見せつけるハイヒール。
企業納会の会場内の自席に着席する八重美がハンドバッグを開けた時、ハラリとハンカチが床に落ちた。
八重美は気付いていない。
背後から近づく男性がひとり、八重美は気付いていない。
音も無く腰を下ろし左膝を曲げ床に付き右膝を縦にその上に拾い上げたハンカチを右手に持ち声を掛ける。
『落とされましたよ、素敵なお嬢様』
その声に振り返る八重美。
えっ…?
お嬢様のハンカチでは?
その声を掛けてきた男性を見つめる八重美。
えっ…えぇ…?
八重美の視線に柔らかく微笑み視線を返しくる男性に、八重美の顔が赤らむ耳までもが真っ赤に熱くなりまるで時が止まったかのように動きが止まる。
そんな様子を見るともなく目にした女性社員の数人が八重美の元へ近づき声を掛ける。
係長、係長!
八重美さん、八重美さん!
その声にハッと我に返る八重美。
どうしたの顔、真っ赤よ、体調良く無い?
問いかけに、頭を左右に振り大丈夫、大丈夫と取り繕う八重美。
次に、女性社員のひとりが傍らにいた男性に問いかけた。
零王くん、何したの係長に?
ハンカチを拾い上げた男性の名は、零王(レオ)。
八重美と同じサービス企業の配送運輸部署に勤務している。
部署違いもあるが八重美とは普段は、業務始めと業務終わりに挨拶をし、必要書類等の受け渡しの確認の言葉くらいしか交わさない。
なんだかキツめの問いかけに零王が、イヤイヤと手と頭を左右に振っていると八重美が助け舟?の声を出した。
大丈夫、何も、零王くんが、お嬢様って、
素敵なお嬢様なんて…私を呼んだから
戸惑っちゃって私…
お嬢様…って?
八重美係長、零王くんに遊ばれちゃ
ダメですよ。
呆れながら女性社員達は八重美に声を掛けながらその場を離れていった。
それを見計らい、零王は八重美にだけ聞こえる声で呟く。
遊びじゃ無いっすから俺…
柔らかく微笑み零王はその場から納会の自席へと向かった。
八重美、44歳、零王、32歳であった。
☆
零王、32歳、独身。
地元で、高校生まで過ごし大学は隣県に進学し卒業後も隣県の企業に就職して数年を過ごしたのだが、ある事をきっかけに、Uターン就職活動をして地元サービス企業に就職したのだ。
新年を迎え寒さも増してきた季節のある日、一日の業務終わりの夕方の駐車場。
その駐車場の一角に気持ちばかりのひさし屋根が駐輪場になっている。
一日の業務を終えた八重美が駐車場の止めてある自分の車へと足を進めていると、一角の駐輪場でうずくまる人影を見止めた。
八重美は、そろりそろりとうずくまる人影に近づき声掛けてみた。
大丈夫ですか?どうされました?
腰を屈め人影の顔を覗き込む。
あ、零王くん?どうしたの?
零王の顔色は真っ青で尋常では無い脂汗を浮かべている。
八重美は素早く自分の車を移動させると零王を抱え助手席へと押し込んだ。
病院、行きましょう!
そう言いながらチェンジシフトに左手を掛けた時、零王の右手が八重美の左手を握りしめてきた。
えっ!?
八重美は驚き零王の顔を覗き込む。
零王はゆっくりと頭を左右に振りながら力無く呟く。
マンションへ…帰ってください…
でも、っと戸惑いながらも八重美は問い返した。
マンションって…何処?
零王の呟くマンションの名をカーナビに打ち込み、案内を開始させ15分ほど車を走らせ、Designersマンション敷地内に駐車し零王を支えながら呟かれるままにエントランスセキュリティナンバーで解除しエレベーターのフロアーナンバーを押す。
零王の部屋のセキュリティ門扉を解除し、玄関ドアセキュリティを解除し縺れ合う様にベッドまでたどり着き、ジャケットを脱がしワイシャツを脱がしベルトを緩めスラックスを脱がしベッドに零王を横たえた。
乾いたタオルと濡らしたタオルを探し出し零王の上半身の肌着を脱がし手早く汗を拭き取り新しい肌着を探し出し着替えを済ませ、濡れたタオルを額に当てた時、零王が呟いた。
水、みず…冷蔵庫に…
うん、と頷き八重美が冷蔵庫を開けた。
ミネラルウォーターにスポーツドリンク、エナジードリンクに栄養補給ゼリーにプロテインバー、これが冷蔵庫の中身だった。
ミネラルウォーターを手に取りベルトの傍ら、零王の傍らに腰を下ろす。
お水、飲める? 八重美が零王に尋ねる。
零王は辛そうに少しだけ頭を左右に振った。
なんとか水を飲ませる方法を考えたが咄嗟には良い方法が思い浮かばず八重美は自分の口に水を含み静かに徐ろに零王の口に重ねた。
重ねた口からゆっくりと零王の口に水を流し込んでいく。
零王の喉がゴクッゴクッと鳴り八重美からの口移しの水を飲み込んでいく。
ありがとう… 飲み終えた零王が呟く。
零王は八重美の右手に自分の右手を重ね合わせ優しく握りしめるとそのまま眠りに就いた。
八重美にも安堵の気持ちが訪れ我に返り慌てて時計を見た。
もうこんな時間?どうしょう…とりあえず電話しないと…
思い浮かんだが電話が無い、携帯電話を車に置いてきたままだった。
車まで取りに腰を上げようとしたが重ね合わされた零王の右手が解けなかった。
やむを得ず零王が目覚めて手の重なりが解けるまで八重美は待つことにした。
しばらく時間が経った頃、八重美の名を呼ぶ声が優しく八重美を呼ぶ声に意識を戻された。
目を開けると間近に零王の顔があった。
あっ、ごめんなさい、寝ちゃったみたい私…
八重美の呟きに応えるように零王が囁く。
お疲れだったんだね、八重美さんも、
ありがとう…ごめんね、助かったよ。
零王の左手が伸びてきて八重美の頭を頬を優しく撫でる。
撫でられた気持ちの柔らかさに八重美の頬が赤らむ。
今まで、父親からも、母親からも、ご主人様からも、こんなに優しく撫でられた事も労われた事も無い…
どうして?こんなにも優しいの零王くんは?
ん〜お熱がある?からかな。
えっ!?大変じゃないの、しんどい?
うん、ちょっとお熱、計ってみて。
だったら体温計はどこ?
ここだよ。
と零王は自分のおデコを指さす。
ほら、ここだよ当ててみて八重美さんの
おデコを。
もう、子どもじゃないのよ。
と否定しつつも八重美は自分のおデコを零王のおデコに優しく当ててみた。
おデコとおデコが触れ合った瞬間に零王の顔が僅かに傾き八重美の唇に零王が唇を重ね合わせた。
んん!戸惑う八重美の頬を両手で両側から優しく包み込みさらに強く唇を重ね合わせ、身体を引き寄せ全身を抱きしめた。
ずっとずっと大好きだった、
もっともっと八重美さんを知りたい。
零王の熱い愛の囁きが八重美の身体の芯に、心の芯に染み込み感情が揺さぶられる。
初めて感じる優しさと柔らかさと熱い愛の感情に心の中が激しく揺さぶられ八重美の中で何かが音を立てて崩れていった。
八重美は人生で初めて自ら唇を求め重ね合わせ、零王の着ているモノを剥ぎ取り、自らの衣服をかなぐり脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿で零王を跨ぎ激しく交わりを求めた。
八重美にとって18年ぶりの交わりは、ただただ刺激的な初めての時間が官能的に過ぎていく、ただただ激しく絡み求め交わり合う、上から下から右から左から後から前から自らも身体をうねらせ腰を振り何も隔たるモノも無い生と生の交わりで奥の奥まで何度も注がれ何度も受け止め何度も何度も絶頂へと感情が超えてイク。
空がほんのりと柔らかい黄金色に明けてきた。
気がつけば新しい朝が明けてきた。
八重美は一糸纏わぬ姿のままベッドから抜け出すと脱ぎ散らかした衣服をひとつひとつ拾い上げ身につけていく。
身につけ終わるとベッドに伏している零王に向かって声を掛ける。
零王くん、念の為、今日はお休みしてね、
休暇処理しとくから。
うん、ありがとう、係長さん。
言いながら悪戯ぽく微笑みながらベッドから抜け出し八重美をハグする。
八重美がキッと真剣な眼差しを向け零王に問いかける。
私で良いのね?
本当に私で良いのね、零王くん!?
もちろん、八重美さんが大好きだ!
八重美さんしか欲しくない!!
じゃ、さん付けは止めて!
おぅ、くん付けも止めてな!
お互いに見つめ合い唇を重ね合い強く抱きしめ合うと、八重美が意思を強く込めて言葉を出す。
とりあえず自宅をいろいろ整理整頓して
実家も整理整頓して、ちゃんとココへ、
零王の胸の中へ来ます。
はい、よろしくお願いします。待ってます!
☆
結果的に昨夜は連絡もつかず無断外泊となってしまった。
それに対してはもちろん?と言うか当たり前の様に自宅ではご主人様が怒りまくりである。
モラハラ、カスハラ、お構い無しの罵詈雑言を撒き散らしまくりだった。
しかし、腹の決まった今の八重美には馬耳東風、聞く耳を持たぬ状態であった。
離縁だ、離婚だ!出て行け!
なんの反論もせず、その言葉を待ってましたと八重美は手早く必要な衣服と身の回りのモノをまとめると躊躇無く自宅を出た。
さらに実家からの呼び出しに顔を出す。
もちろん全ての話しはご主人様から事の詳細は尾ひれも付けられ知らされており案の定、父親からも母親からも罵詈雑言を浴びせられ、勘当だ!親子の縁を切ると言い渡された。
今更、この歳で勘当だとか縁を切るとか言われた所で何も響きはしなかったが、八重美的には、離婚を期に旧姓に戻そうと思っていたのでちょっとバツが悪くは感じた。
『念の為、日本の憲法には勘当とか親子の縁を切れる法律はありません☝️』
慌ただしくも自らの意思で行動する充実の一週間が過ぎ、以前の自宅の整理整頓と実家の整理整頓を目まぐるしく終えた八重美は正式に離婚が成立した。
☆
ただいま〜。
おかえりなさい。
一日の業務を終えた八重美は零王の待つDesignersマンションに帰ってくる毎日である。
零王は八重美をハグし八重美は零王をハグし軽く唇を重ね合う。
零王が手早く作った夕食をほぼ終えようとした時、八重美が話し始めた。
あのね、離婚が成立したし、
名字を旧姓に戻そうと思ってるんだけど、
勘当だ〜とか言われてるし、
旧姓も何となくバツが悪いなぁって
思うんだよね…
そっか〜じゃ、と零王は向かい合った椅子から立ち上がり八重美の左側へと周り込むとその場に左膝を床につけるように腰を落とし右膝を立て両手に一枚の用紙を持ち差し出しながら言葉を添えた。
俺と同じ、名字になってください!
婚姻届に零王の姓名が記されている。
八重美はその用紙を、婚姻届をそっと両手で受け取り静かに胸に当てしっかりと抱きしめ返事を返した。
ありがとう、よろしくお願いします。
零王と八重美はどちらからともなく立ち上がり熱く抱擁し合った。
瞬く間に十五年の年月が過ぎた。
十五年間、八重美に向けられる零王の愛情の優しさは変わらず故に互いにリスペクトしあい日々平穏であり、激しさも変わらず交わり合いを互いに求め合っていた。
八重美の心の中に敢えて口惜しく思う事は、零王の遺伝子を未来へ…我が身で遺伝子を未来へ継いであげれなかった事…であった。
☆
零王の遺伝子を未来へ継ぐ者
☆
八重美と零王が、一緒になり一年後。
零王の元へ一通の手紙が届いた。
差し出し人の名を見た零王は不審な顔つきでやむを得ずと言う感じで開封をした。
一枚の用紙に簡単な文章が記されている。
娘、永眠す。不都合が無ければ連絡を乞う。に添えて電話番号が記されていた。
零王は思わず天を仰ぎ大きく息を吸い込み深呼吸をするとその用紙を八重美に差し出した。
いいの?私が見ても。 八重美が問う。
うん。 と頷き話し始める零王。
『その永眠した娘さんと俺の間には子供がいるはずなんだ、彼女がシングルで育てているはず、いつか話さなきゃいけなくなるとわ思ってたけれど…』
隣県の大学へ進学し隣県の企業に就職していた頃だった、彼女は遊び仲間のひとりだったが一度だけ交わった事があった。
何故そう言う事なったかは今では思い出せもしなかった。
だがその一度の交わりで彼女の中に生命が宿ったのだ。
零王は責任を取ると結婚を申し出でた。
彼女もそれが当然だと思い結婚を受け入れた。
だが妊婦として後々の生活や行動する為に先ずは籍を入れる事を零王も彼女の両親もすすめたが、彼女は先に結婚式をしたい、結婚式をしてから籍を入れると主張しそれを譲らなかった。
彼女の出産予定日から逆算して安定期を推算して結婚式の日取りを決め、移動に負担のないように結婚式場を決め、披露宴の内容段取りを決め、列席者への招待状をも発送し終えた。
しかし、結婚式当日まで残り二週間後となった日に彼女は結婚はしないと言い出した、頑として誰からの説得にも耳をかさなかった。
やむなく結婚式場をキャンセルし全ての段取りをキャンセルし列席者への断り謝罪をした、それら全てを零王はひとりだけで行った。
彼女は宿った生命は私ひとりで育てると言い張り零王の気遣いも言葉を聞くことさえ拒絶したのだった。
彼女の両親はただひたすらに零王に詫びてくれたがそこから後の連絡は途絶えてしまっていた。
それをきっかけに零王は隣県の勤め先を退職し、地元へのUターン就職活動をし現在のサービス企業に就職したのだ。
もし、あの後、順調に出産をしていれば、
子供は、7歳くらいのはずなんだけど…
零王は独り言のように呟いた。
そっか、大変な事あったんだね、
でも結婚もして無いし、
認知とかもして無いんだよね?
もっと言えば、出産して無い可能もはどう?
八重美が確認する様に問いかける。
その問いかけに零王は頭を左右に振りながら力無く呟く。
さぁ、まったくわからないけど…
連絡をしてみるか?みないか?だね。
とは言っては見たものの零王はまったく気持ちが向かなかった。
うん、わかったわ、
今、無理する事ないよ
しばらく様子見にしましょ、ね!
浮かぬ顔の零王を見かねた八重美はそう声掛けたのだった。
それからしばらく八重美は零王の様子を見守りながら敢えて問いかけはしなかった。
零王から手紙の相手に連絡を入れた様子は見受けられなかったし、相手からさらなる連絡は無かった様だった。
終。