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時雨
ある、秋の末のことだった。
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ぽつり。僕の顔に雫が落ちた。
「え」
突然の雨に、僕はその場に立ちつくした。
___『綺麗』そんな言葉が似合う雨だ。
その時うっすらと公園の奥に人影が見えた気がした。
自分がいうのもあれだが、今の時間は午前4時。人通りも少ないここにわざわざ来るだろうか。少し近づいてみる。
その時、ちょうどこちらを振り向いた 。
_____一瞬で、目を奪われた。
『綺麗』、『美しい』そんなありきたりな言葉では表せないような人で、、あぁ、、
例えるなら今の|時雨《しぐれ》のように......
その人はこちらを向いて少し悲しそうで、触れたら壊れてしまいそうな顔で優しく微笑んだ。
その瞬間。雨がやんだ。
先ほどまで雨なんか降っていなかったように空は蒼く澄んでいた。
女の人は、いつの間にかいなくなっていた。
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あの人が、本当に此処にいたのかはわからない。でも、心なしかまた会えるような、そんな気がした。