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死灰復然
太陽の光が雲を超えに青梅雨が硝子細工のように煌めいた6月中旬。
鬱陶しいほどに湿気が私の体を舐め回す。
学校からの帰り道。
電柱の足元に薄桃色の雛鳥が落ちていた。
私の片手には枯葉に乗せた雛鳥。
既に蟻がたかっている。
雛の上を歩く蟻は太陽の光に小さく反射している。
5㎜もないんだろうなと思いながら、私は雛を両手に包んだ。
下校しながら私はこの雛の親はどんな鳥なんだろう、とか。
誰に殺されたんだろう、とか。自分で落ちてしまったのか、とか。
初めて出会ったこの雛のことを真剣に考えた自分に意外だと感じた。
掌からじんわりと溢れた汗があたたかい。
いや。雛鳥の体温かもしれない。
そんなことはどうでもいい。
はやく家に帰ろう。
嫌いになるほど見慣れた門から自宅に入る。
真っ先に向かったのは裏庭。
どんな季節でも土が湿って冷たいあの裏庭。
素手で土を掘る。
爪と指の間に土が押し入ってきた。
何とも言えない不快感にため息を吐く。
指の指紋の凹凸に微小の土が付着していた。
**気持ち悪い**
そこら辺に生えていた花を毟り取り、雛鳥と一緒に埋める。
なんだか、いけないことをしているようでとても楽しかった。
それでも|外《ここ》に長居をすると母親に怒られてしまうからと家に入った。
現実的な世界から反対側に引き込まれるように冷たい風が押し寄せた。
結局私はいつも通り母に叱られていた。
理由はわからない。
なぜだか母を怒らせてしまった。
今日は右頬を打たれた。
じんわりと皮膚の内側で血液が広がる感覚が気持ちよかった。
それでも、打たれることは好きじゃない。
だから《《仕返し》》をすることにした。
母が妹を迎えに行ってるうちにはじめた。
リビングにある棚の物を全て床にぶちまけた。
そしてベランダの窓硝子をあけた。
窓硝子をあけた訳はTVでみた犯罪物の大半がそうだったからだ。
最後の仕上げにケチャップを体と床にかけた。
そして、俯けになってひたすら待った。
ガチャ。
玄関の鍵があいた音がした。
そして、リビングの扉が開く。
『少し下がってて』
初めて聞いた声音だった。
聞き耳を立てて母の声を聴く。
『今からリビングに入ります』
そうして母が入ってきた。
何度も私の名前を呼ばれ、面白くて笑ってしまった。
私に手を挙げて怒鳴る普段の母と違いすぎて面白かったんだ。
『子供のいたずらでした』
そういって母は電話を切った。
その日はどえらく怒られた。
でもやめられない、と心で呟いた。
非常事態の時に素がでる人の様子を見るのが楽しかったから。