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最後のステージと、約束の空
事務所の薄暗い練習室で、木村の足音がコツコツと響く。鏡に映る自分の姿は、デビュー当時よりも少しだけ大人びて見えたが、心の奥底にある焦燥感はあの頃のままだった。
「なあ、これ本当に俺たちで描き切れるか?」
西が床に投げ出したスケッチブックを覗き込む。そこには、11人の未来がクレヨンで無造作に描かれていた。池﨑がふっと笑い、「描くしかないだろ、俺たちの物語なんだから」と肩を叩く。許は無言でうなずき、そっとピアノの鍵盤に指を落とした。音符が静寂を切り裂き、スタジオ全体に透明な旋律が広がる。
田島がふと窓の外を見た。東京の空はどんよりとした曇り空だったが、その雲の切れ間から、ほんのわずかに夕陽の光が差し込んでいる。「……MINIの顔が浮かぶな」と、ポツリと呟いた。その一言で、佐野、高塚、後藤、尾崎、松田、藤牧の表情が引き締まる。誰もが同じ景色を見ていた。歓声、ペンライトの海、そして、いつか必ず訪れる「別れ」の予感を。
時は流れ、迎えたファイナルライブの夜。ドームを埋め尽くす11色の光が、まるで夜空の星のように揺れていた。ステージの中央に立つ藤牧の歌声が、どこまでも伸びていく。その声に乗せて、11人は全身全霊でパフォーマンスを繰り広げた。汗が飛び散り、息が切れ、それでも笑顔を絶やさない。
「みんな、本当にありがとう」
最後のMCで、尾崎が涙をこらえながらマイクを握りしめた。「俺たちは永遠じゃないかもしれない。いつかそれぞれの道を歩む日が来るかもしれない。でも、このステージで共に見上げた景色は、絶対に消えない」
その瞬間、客席から一斉に掲げられたのは、メンバーカラーではなく、11人が初めて一緒に作り上げた楽曲の歌詞が書かれたカードだった。『僕たちは、ずっとひとつ。』
ステージの端で、松田と高塚が肩を組んで泣き笑いしている。佐野はしゃがみ込み、溢れる涙を隠そうともしなかった。後藤が優しくその背中に手を添える。木村が深く、深く頭を下げた。
暗転したステージ。耳に残るのは、ファンの鳴りやまない拍手と、11人の重なり合う足音だけだった。振り返れば、壁にぶつかり、涙を流し、互いの手を引きながら走り抜けた日々があった。決して色褪せることのない、青春という名の軌跡がそこにあった。
「また、空の向こうで会おう」
11人はそれぞれの未来へ向けて、静かに一歩を踏み出した。