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勝斗視点 演説 #8
弐虎れいな
8話です。
「はい。皆さんおはようございます。小林美春です。突然ですが⋯」
俺は近くの机をガッと蹴る。
机の持ち主が「ひっ」と短く悲鳴を上げる。
「私の下駄箱に細工しやがったのはどこのどいつだ?あ゙ぁ?」
シンッと教室が静まり返る。
勝斗は知る由もないが、クラスのみんなは混乱していた。
あの、いつも伏せ目がちで、長い髪をくくりもせず、大人しくいじめられているあの美春が。
今、普段の美春がしない口調で、しない態度で。こちらに詰め寄っている。
すると、|美春《かつと》はパッと顔に明るい笑顔を浮かべてみせる。
「たぁっぷり|お礼《なぐる》しなきゃだから、名乗り出てくれると嬉しいなぁ♡」
俺はニヤリと笑顔の質を変える。
気持ちは獲物を狙うハイエナだ。
が、その顔をさっとさっきの爽やか笑顔に戻す。
「以上です。ご清聴、ありがとうございました。」
一旦こんなもんか、と俺は締めくくる。
無能は呆気に取られていたが、ハッとして「あ、あぁ。ありがとう」
となんの礼だかわからない礼を言った。
とりあえず、席につく。
え?席がどこかわかったのかって?そりゃ、わかりやすく菊の花が置いてあったからな。
俺は花を床に落としてゆっくりといたぶるように踏み潰した。
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「ねぇ美春ちゃん。記憶喪失なんだって?」
「あ?なんだ?早速名乗りに来たのか?」
先生が出ていくやいなや、俺のもとに5人ぐらいの女子が群がってきた。
リーダー各っぽい女子が俺に話しかける。が、俺の言葉に眉を動かす。
「違うわよぉ。私はあなたと友達だった|早藤《はやふじ》エリカ。よろしくねぇ」
粘着質な声はたちまち俺を不快にさせた。
早藤エリカ。俺はコイツの名前を知っている。
主に、あの美春の日記で、だ。
「そうだったの。ごめんなさい。名乗って来たのかと思って。」
俺の言葉に周りの女子たちがクスクスと陰湿に笑う。
え、俺の女子っぽい言葉遣い、そんなに変?
と、思ったが、どうやら「名乗り」の部分が変らしい。よかった。
「いいのよぉ。ねぇ、それより靴箱に何かされたのぉ?可哀想にぃ」
「そうなの。沢山の紙に画鋲。困っちゃうよ。」
「それは大変だったねぇ。それで、それらはどうしたのぉ?」
「床にばらまいて、踏みました。」
シンッと周りが静まる。
俺はキョトンと辺りを見渡す。
この時、クラス全員がこう思った。―――なんでだよ、と。
「え、えぇ?なんでそうしたのぉ?」
困惑したようなエリカの声に俺も困惑する。
なんで?特に深い理由もない。
が、強いて言うなら⋯
「ムカついた、からとか?」
またもやクラスが静まり返る。
さっきからなんなんだ?まさか、これもいじめの一環なのか?
なるほど。どうやらクラスはいじめのために一丸となっているらしい。
本当は記憶喪失になった美春の奇行に絶句しているだけだが、そんなこと勝斗は知る由もない。
とうとう誰も喋らなくなった教室に、ガラッと何かを引きずるような音が響く。
誰かが立ち上がったのだ。
パッとそちらを見ると、一人のヤンチャそうな野郎がズカズカと近づいて来ていた。
「おい。美春。お前、記憶喪失になって随分と生意気になりやがったな?
お前がどんなだったか、その身にたっぷりと教えてやるよ。」
邪悪に笑う野郎に、俺は思った。―――コイツが日記に出てきた弱い者いじめでイキってる奴か、と。
あとがき
思ったのですが、勝斗の頭、かなりズレてません?