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東方凶事裏 五。
〈〈side 藤原 妹紅
「あら、来客?」
この空間には光なんて指していないのに、|金色《こんじき》に輝く長い髪、その髪を束に分けて束ねる紅のリボン。この忌々しい空間は、彼女の能力によって作られたものだ。
|八雲 紫《やくも ゆかり》、この幻想郷を作った妖怪の賢者だ。
「私たちは招かれた側よ。招いたのはあんたでしょ?」
霊夢が八雲紫にそう尋ねた。
その通りで、私たちは知らぬ間にスキマに飲まれていただけだ。
「ふふっ、そうよ」
不気味に笑った。
日傘をくるくると回した彼女、ここには光なんて指していないのに日傘を指していた。
「元凶の事を聞くために私を探していたのでしょう?」
日傘を束ねた。
そして、スキマの中にさらにスキマを出してその日傘をどこかに送った。
「ご名答ね、流石ねー」
「けれどね、そんな素直に教えるとでも思っていまして?」
八雲紫が日傘の代わりに扇子を出し、自分に向けてパタパタと仰ぎ始めた。
「何をしたら答えてくれるわけ?」
「言わなくても分かるんじゃない?貴方、野蛮なことばかり考えているし」
八雲紫はそう言うと、扇子を仰ぐのをやめ、スペルカードを1枚取り出した。
「1枚で足りるわけ?」
「その言葉、しっかり覚えておくことね」
そう言うと霊夢もスペルカードを取り出し、私と暦も取り出した。
「結界・動と静の均衡」
細かな弾幕と、大胆で大きな弾幕が全方向に放たれていく。
「宝符・陰陽宝玉!!」
水と黒色に染められた|陰陽玉《おんみょうだま》を大きくし、八雲紫にその巨大な陰陽玉を投げた。
「ふふっ、そんな弾幕に当たるとでも?」
八雲紫はそれを見事なまでに避け、八雲紫が今放っているスペルカードの弾幕の密度を濃くした。
スペルカードの時間が終わったのか、くない弾を全方位に放った。
すると、また直ぐにもう一枚のスペルカードを取り出した。
「結界・光と闇の網目」
|綺羅《きら》びやかな赤と青のレーザーがそれぞれ一つずつ、そして赤と青の通常弾幕が無数の数放たれた。
八雲紫はというと、余裕そうな笑みを浮かべて扇子を広げて扇いでいた。
その余裕にムカつき、私もスペルカードを発動した。
「不滅・フェニックスの尾!!」
私が放つ赤の弾幕が八雲紫から放たれる赤と青の弾幕を打ち消していく。
くない弾を私たちの移動に向けて放った後、八雲紫はスペルカードをもう一枚取り出した。
「ふふっ、式神・八雲藍|&《あんど》橙」
彼女の式神である八雲藍、更に八雲藍の式神である橙が召喚され、私たち三人を追尾しながら、弾幕を辺りに撒き散らしていく。
「時符・未来予知!!」
暦がどこかに弾幕をひたすら打っていた。早苗にも使ったスペルカードだろうか。
八雲藍、橙をスキマで何処かに送ったあと、追尾してくるくない弾を私たちの移動に向けて放った。
そしてすぐ、八雲紫はスペルカードをもう一枚取り出した。
「結界・生と死の境界」
八雲紫は追い込まれているはずなのに余裕そうで、不敵な笑みを浮かべていた。
緩やかで穏やかな弾幕から、激しく素早い弾幕へと変化していく。
何とも美しいスペルカードだが、見惚れている場合ではない。
何処かから無数の弾幕が溢れてきた。
しかし、八雲紫はそれを華麗に避けスキマで何処かに送った。
「ふふっ、面白いスペルカードですこと」
八雲紫はどんどん弾幕を濃くしていって、鮮やかにそして美しく、そして残酷に弾幕を彩っていった。
「回霊・夢想封印 侘!」
灰色の弾幕と色鮮やかな札が八雲紫に向かって放たれて、届くこともなく弾幕と相殺されていく。
八雲紫はスペルカードを解除に、くない弾を挟むことなくスペルカードを発動した。
「紫奥義・弾幕結界」
八雲紫の姿が消え、辺りには弾幕を生み出す魔法陣のようなものが鱗弾を私たちの周りに配置した。美しい青と紫の弾幕が私たちに向かって回り踊るように攻撃をしてきた。
数回に分けた弾幕の奇襲。
霊夢はこの弾幕を経験したことがあるのだろう、私たちに的確に指示を出して襲いかかる弾幕を避けるように完璧な指示を出しながら、なんとか避けきった。
桜が舞い散るような演出とともに、八雲紫が姿を現した。
「あーあ、負けちゃった。ふふっ、教えてあげるしかないわー」
八雲紫は姿を現した後、直ぐ笑みを浮かべて私たちにそう言葉をかけた。
「何よ、その態度」
八雲紫の態度に対して、霊夢は腹を立てた。私だって常時余裕そうな態度が気に入らない。
「まぁまぁ、落ち着きなさいな」
霊夢を怒らせた元凶がそう言葉をかけ、霊夢を一旦落ち着かせた。
「あの子のいる元まで私のスキマで移動させてあげる」
「ははっ、お前さんは案外素直なんだな」
私はポケットに手を入れて、笑顔を作った。目を開けると、そこには演技らしく腹を立てている八雲紫がいた。
「私を誰だと思って?」
「しかし、こんな悪趣味な異変を起こした方が、負けたぐらいで食い下がりますかね…」
横から暦がそう八雲紫に向かって疑問を口にした。
「ええ、そんな意地の悪い子ではないから」
こんな悪趣味な異変を起こして意地の悪くない人など居るのだろうか、なんて疑問もそいつにあったらわかる。
「それでは、さようなら」
突然スキマから外に出されると、そこに八雲紫に主犯と言われた人物が立っていた。
「来たのか」
そう、振り返ると同時にいう主犯。
髪の毛に紛れる中で見えた目は濃く深く青かった。
過去の話を書く、東方回顧談を番外編として書こうかなと検討中。始めたらキャラによっては1話10000字とかになりそう。これもゆうて2000字超えてるのですがね。
所属させてもらってるグループの方で書いてる合作小説がゴリゴリ闇系なので温度差で死にそう。でも闇を書くのは楽しい。