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低スペまおうと低ステゆうしゃ
実は「Crown」で登場する予定だった子のパラレルワールドです。
随分前に書いたもの。続く…かもしれない…??
そう、それはある魔王と勇者の最終決戦。
御伽話の終着点であり、この世界の終わりを賭けた物語…。
と、本来ならばなっていた時だろう。
それは約3日の泥試合に疲れ果てた魔王が勇者の弱点を知るために「邪神の魔眼」を使った時。
そして見えた情報に、そくど200の魔王は30ターンの攻撃タイミングをドブに捨て、静かに崩れ落ちた。
それが失望か落胆か怒りか悲哀か、それともただの拍子抜けだったのかは本人すらわからないが。
叫ぶことだけはできた。
「…ウソだろお前」
「ウソじゃあないんですよねこれが!!!!!」
どの世界線にレベル1の勇者がいるんだよーッ!!!!???
知るわけありませんってばァ〜!!!!!!!!
--- 低スペまおうと低ステゆうしゃ ---
「で、何で勇者が南の街から北の最果てまでやってきてまだレベル1なんだよ」
「そんなの私がいちばん知りたいです…レベル40くらいまでは少なくとも上がると思ったのに…」
魔王城のレンガの床に正座させられるのは、金髪碧目を潤ませてシクシクと泣く中級装備の勇者。
それを上からあり得ないを凝縮させたような目線で見るのは黒髪赤メッシュ、同じく赤い目に魔王専用装備の魔王。
「でも魔王こそなんでレベル1の勇者に三分の一くらい削られてるんですか??レベル99のクセに!!!ターン制RPGのクセに!!!!」
「やめろそれは魔王に効く!!!!!!」
「ハァ…とりあえずアレだ、泥試合すぎるから一旦やめにしよう。精神的に疲れた」
「ですね、私ももうギリギリのかいひをし続けるのは嫌です。肉体的に疲れました」
まぁとはいえ、彼らは魔王と勇者。犬も喰わない関係性…いや、むしろ犬に食わされているだろうか…?
それはともかくとして。
「…茶でも飲むか?」
「………………………」
たっぷり3分の静寂が綺麗に過ぎ去り、魔王がテキパキと用意した銀食器に注がれていく紅茶をみて、彼女はか細い声を出した。
「………………頂きましょう」
「ああ、召し上がれ。毒は警戒しなくていいぞ」
「大丈夫です。紅茶にここまで溶ける毒は匂いか見た目でわかりますし、無味無臭の毒は銀食器で判別できます」
「…お前頭いいんだな」
「それだけが取り柄ですから」
何気なく言い放って、彼女は魔王城大広間の片隅。小さな椅子に腰掛けた。
「お前、勇者ルミナスだったか?」
「知っているでしょう、勇者や勇者候補として育てられた人間は全員ルミナスを名乗ると。だからそれは私の個人名ではありません」
「へぇ。じゃあ本名は?」
「…ありません。が……フリーアと名乗れないことはありませんよ」
「ふゥん」
「あなたは?」
「まぁ特に個人名はないな。ただの魔王だ」
「そうなんですね」
会話、消滅。
見事に何も言えない二人が紅茶を啜るだけの魔王城大広間という、歴代魔王全てを振り返ってもこんな光景に立ち会った人物はそういないのではないのだろうか。
どこからともなく魔王がヒョイと転移させたお菓子を咀嚼する音の中で、二人の視界内に飛び出したその人影に必要だった勇気はきっと計り知れない。
「いや、いつまで茶しばいてるんですかあなた方は!!!!!!!!!!」
全くもってその通りである。