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東方凶事裏 三。
〈〈side 博麗 霊夢
神奈子と諏訪子にそう言われ、私の案内で霧の湖前まで来た。何となく勘で動いているから、こんなところに本当に神々が居るのか、と不安が募っていくのは私だけなのだろうか。
「あら、珍しい来客じゃない」
銀の髪を肩ほどまで下ろし、胸をのせるかのように腕を組む彼女。風に靡かれて、揺れるフリル。
丁寧の皮を被った棘がある言葉である。
「何か用がありまして?あまり遅く帰るとレミリア様に叱られてしまうわ、手短に」
まるで、用がなかったらさっさっと帰れ、という意味が込められていて、こちらを急かすような言い方である。まぁ、早く帰ってほしいのが事実なんだろうけど。
「あんたがこっちに来たんでしょ。私達だって会いたくてあんたに会いに来たわけじゃないの、咲夜」
彼女は|十六夜 咲夜《いざよい さくや》、|紅魔館《こうまかん》のメイド長で完璧で|瀟洒《しょうしゃ》なメイド。
「会いたくて、出待ちしてたわけじゃないですわ」
「異変解決してるんだ、退いてくれないか?」
妹紅が前に出てきて、ナイフを取り出す咲夜。全く、クールで冷静で大人な振りして好戦的。|紅魔館《こうまかん》の誰よりも。
「それは無理な要望ね」
紅が塗られた唇をにいっと広げた。まるでその笑い方は、こちらを嘲笑うように馬鹿にしているように見えた。
「部外者は始末する。誰だろうと同じこと」
「それがここの教えなの」
青かった瞳が、端から紅へと染まっていった。まるで、その姿の彼女を例えるなら狂気だ。
「少々手荒だけど、失礼するわ」
そう言葉を発した彼女は、ナイフを指の間に挟みスペルカードを取り出した。
「奇術・幻惑ミスディレクション」
「幻幽・ジャック・ザ・ルドビレ」
くない弾とナイフが咲夜の方に見えたかと思えば、瞬きをしたような須臾の間に弾幕が目と鼻の先まできている。
「おぉ!!」
ピチュンという音を上げた妹紅はその場から消えていた。被弾してしまったということだ。
「どうせ貴方も同じ運命になるわ、恐れることなく送ってあげる」
弾幕を避けていたその|瞬間《とき》、炎が高く舞い上がった。
まるで自由に羽撃く不死鳥のように、美しく儚く。
「あはははっ、私の能力忘れてたのかい?お嬢ちゃん」
その炎の中から、無傷の妹紅がでてきた。そう、彼女の能力は老いることも死ぬこともない程度の能力、|所謂《いわゆる》不老不死というやつだ。
「お嬢ちゃんには悪いけど、時間が無いんでね」
妹紅が咲夜に対してそう言い、いくつかのスペルカードを取り出した。
そして、口を開けずに大きく口を広げて笑顔を作った。
「蓬莱・瑞江浦嶋子と五色の瑞亀!!」
「惜命・不死身の捨て身!!!」
紅に塗れた弾幕達が咲夜に向かっていく。咲夜は焦った顔を一瞬して、スペルカードを取り出した。
「買い出しした物が壊れるわ、これで全員片付ける」
「メイド秘技・殺人ドール」
止まった時と、ナイフ。時が進むと同時に、ナイフも私達も動き出す。彼女も共に。しかし、彼女を当たったものは太陽ほど眩しい炎だった。
「ふふっ、部外者は始末するんじゃなかったかしら、咲夜?」
「よく考えたら|貴方方《あなたがた》は部外者ではないことに気づいて、手加減したのよ。手加減」
ボロボロになった衣服。仕舞われたナイフたち、すっかり青に変化した紅の瞳。
「お嬢ちゃん、そんなキャラだったか?」
「仕事とそれ以外のオンオフはつけてるの。至極当然のことですわ」
落ちかけたカチューシャを戻して、解けかけているリボンを外して三つ編みに結かれた髪を下ろした。
「何かお探しで?」
そして、目と口を開いてそう私達に尋ねた。
暦ちゃんの出番なくなってしまった。
ヘカーティアのところはあるのでご安心を。
咲夜書くの最高に楽しい。オンの咲夜しか書けなかったからオフの咲夜も書きたいなぁ……と思いつつ。「〜ですわ」口調サイコー!!!