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注文多い読書席
私が働いている個人経営のカフェには、何席か読書席というものを設けている。
その席はいくつかの常連さんで固定されているけれど、読書のために何時間も滞在することを許されているという点では、とても良いアイデアだと思う。
日曜日の午後、窓から入る日差しが暖かく店内を照らす時間。一つの読書席に座った男性から注文が入った。本日、五度目の。
「ご注文をお伺いいたします」
テンプレートで作られたセリフを彼に浴びせる。
「緑茶を一杯、お願いします」
「かしこまりました」
本日五度目、全く同じ会話内容。
カフェにまで来て緑茶を飲むのか。
家で飲んだほうが安上がりではないのか。
心の中で毒づきつつ、それでも、自分たちが読書に快適な空間を提供できていることに満足しながら、緑茶を準備する。
彼は運ばれた緑茶にすぐ口をつけ、一口飲んでから、
「ありがとうございます」
としか言わない。
私は今、挑戦している。
一杯の緑茶にもこだわりぬき、彼から
「ありがとうございます」
以外の言葉を言わせてやると。
注文する時にだって決して愛想を見せない彼を横目に、私は今日も、こだわりぬいた緑茶の一杯を淹れるのだ。