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市場。
早朝_____
ネーヴェ宮殿、最上階に位置するのは“奇跡の王子”こと蓮の部屋。
今日はそんな高い場所にさえ人々のざわめきが届いていた。
蓮「……ん、」
「起きたか?おはよう」
蓮「んぅ………おはよ、」
寝起きの蓮はばか可愛い。
とろんとした瞳にほんのり桜色の頬、ぴょんと跳ねた寝癖、着ているというよりかは着られているという方が正しいであろうもこもこのオーバーサイズのパジャマ。
これで可愛いと思わない人間は存在しない。
蓮「ひーくん……?どうしたの、そんなにみてきて」
……ただひとり、本人を除いて。
(あと何気に朝だけひーくん呼びなのも良い。by岩本)
「…いや、なんでもない。それより、今日は市場に行きたいんじゃなかったのか?」
蓮「いちば………???……あっ!!」
急に思い出したらしく、慌てて起き上がってベランダに出て、下を見下ろした。
蓮「もうはじまってる…‼︎‼︎ こんな朝からさむいだろうに」
白い息を吐きながら呟く蓮。
蓮「ひーくん早くっ!!着替えていくよっ!」
「…俺はもう着替えてる。人のこと言う前に自分のことやれ」
蓮「むー……外とおんなじくらい冷たいな」
「いいから文句言ってないでさっさと着替えろ、欲しいものがあるんだろ?」
蓮「……はーい」
なんか言いたげな顔していたのは気にしなかったことにしよう。
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分厚いコートに深くまでフードを被り、度を入れていないメガネをかければ変装は完了。
…一応、市場に行くのは内緒にしておかないといけないらしい。
俺たちは城下町にある市場までやってきた。
蓮「いい香りっ…朝ごはんに何食べよっか?」
「俺はなんでもいい」
蓮「なんでそんな興味無さそうなの。美味しいものも甘いものもいーっぱいあるよ?」
「別になんでもいい」
蓮「あ、じゃああのサンドイッチ屋さん行こ!ハム&チーズが人気らしいけど、フルーツとかチョコレートとかの甘いやつもあるらしいよ」
「…チョコか」
蓮「あーっ。ひかるったら、チョコって聞いた途端に笑顔になったよ」
「あんま俺のことひかるって呼ぶな。変装の意味無くなるだろ」
蓮「はーい…」
蓮はとことことサンドイッチ屋さんの屋台に近づいて、白髪混じりの優しいそうなおじいさん店主の目の前に立って注文を始めた。
蓮「ハム&チーズふたつと、チョコレートマシュマロふたつお願いします」
「はーい、銀貨8枚だよー」
蓮「じゃあこれで」
どさりと銀貨がたくさん入った袋を置く蓮。
じゃらっと硬貨特有の擦れ合う音が聞こえてサンドイッチ屋の店主さんが驚いた顔をする。
「⁉︎」
蓮「これ全部あげる。いつも朝からありがとっ♪」
「…おい、蓮。流石にそれは……」
蓮「ん?サンドイッチ分のお金と幸せをくれたお礼ね?」
「…こんなに頂いていいのかい?」
蓮「うん‼︎」
「じゃあ……ありがたく頂戴するよ」
数分後、店主さんはサンドイッチを持ってきた。
「すぐそこのピクニックベンチで食べるといいよ。…あ、それと」
俺に近づいて耳元で囁いた。
「騎士さんにはチョコレートを少しだけおまけしておいたよ」
「…はっ?」
「楽しんでね〜」
「……////」
…なんでバレたんだ。
蓮「早くして、熱々のうちに食べたい‼︎」
「はいはい」
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蓮「はいっ、ハム&チーズとチョコレートマシュマロ」
「蓮も俺も組み合わせ同じじゃねーか」
蓮「うん。…だって、お揃いにしたかったんだもん」
「…」
唐突に可愛いこと言ってくるから思わず黙ってしまった。
蓮「とりあえず食べよ?」
「はいはい、いただきます」
二つのサンドイッチをそれぞれ半分に割ると。
ハム&チーズからとろっとしたチーズが、もうひとつからはたくさんのチョコレートと蕩けたマシュマロが溢れてきた。
蓮「…えっ、ひかるのサンドイッチ、チョコレートが蓮のより多い……」
「…たまたまじゃないか」
蓮「まさかひかるがお願いした?」
「注文したのは蓮だろ」
蓮「まぁそっか…」
蓮は首を傾げながらもハム&チーズに齧りついた。
蓮「ん!!おいしいっ♡」
「それはよかったな」
俺もハム&チーズを口にした。
香ばしいハムととろとろのチーズが美味しい。
蓮「あれ、ひかるはチョコレートからじゃないの?」
「好きな物は最後に食べる派なんでね」
蓮「じゃああとで、蓮にちょっとチョコレート分けて?」
「は?自分のあるだろ」
蓮「だってひかるのだけチョコ多いんだもん…蓮もチョコレート好きなのに」
「わかったよ。あとでひとくちあげる」
蓮「やったー♪」
全く、世話が焼ける王子だ。
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サンドイッチを食べ終え、俺たちは再び市場を歩いている。
蓮「あ‼︎ ねぇ見て、射的があるよ‼︎」
“射的 -Shooting-”と書かれた屋台に子供やら大人やら、とにかく人がたくさん集まっている。
「…やりたいのか」
蓮「うん、あのくまのぬいぐるみ可愛くない?欲しいっ!」
真ん中の棚にちょこんと座る、愛らしい瞳とダークチョコレートのような茶色のくまを指差す蓮。
「じゃあやってこい」
俺は懐から銀貨を一枚取り出し、蓮に渡した。
蓮「これで何回できますか?」
「5回だよー、はいこれが銃。コルクを底に入れて、…そうそう!それで欲しいの狙って撃つんだ」
蓮「ひかる、蓮頑張るから見てて?」
「はいはい」
1回目_____掠りもせず。
2回目_____耳を少し掠める。
3回目_____当たったが少し揺れるだけ。
4回目_____隣のキャラメルが倒れる。
蓮「…ねぇひかる、蓮苦手かもしれない」
「苦手だな」
蓮「もう無理っ!!ひかるが代わりにやって」
「誰がやりたいって言ったんだよ」
蓮「…それは蓮だけど。」
「それなら最後までやれ」
蓮「でもせっかく来たんだからくまさん欲しいっ!!」
「蓮ならいつでも買えるだろ」
蓮「違うっ、あのくまさんじゃなきゃだめ!」
「……仕方がねーな、貸せ」
蓮「…‼︎」
蓮は嬉しそうに目をキラキラさせ、俺に銃を渡した。
その銃を受け取り、構える。
あんな感じのぬいぐるみは落としづらいから、大体一人が当てて揺らして、もう一人がそこに追撃すると落としやすいんだけど…
まぁそんなことは気にしない。
俺はコルクを銃に入れると、ぬいぐるみの中心…より少し上のところを狙って撃った。
蓮「………あっ!!!」
コルクがぬいぐるみに当たり、ぬいぐるみはぼてっと落ちた。
「兄ちゃんすごいね、はいぬいぐるみだよ」
「ありがとうございます。……はい、蓮」
蓮「…もらっていいの?」
「いいに決まってんだろ、蓮が欲しかったんじゃないのか?」
蓮「でも、取ったのはひかるじゃん」
「取った俺が蓮にあげたいんだよ」
蓮「……じゃあ欲しい」
蓮にくまのぬいぐるみを手渡す。
蓮がくまのぬいぐるみを抱きしめるとちょうどいいサイズ感で可愛らしい。
蓮「くま可愛い……ひかる、ありがと‼︎‼︎」
「どういたしまして」
にこにこしてる蓮の頭をそっと撫でた。
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夕暮れ_____
射的の後も色んなお店を回り、今は城へと戻っている最中。
蓮「今日楽しかった」
「それならよかった」
蓮「蓮は飴細工が好きだったなー。ひかるは?」
「朝食べたサンドイッチかな、チョコレート美味かった」
蓮「ひかるは食べ物大好きなんだね」
「飴細工だって食べ物だろ」
蓮「あれは芸術的だったから好きだったの‼︎」
「作ってくれてる時“早く食べたい”しか言ってなかった癖に」
蓮「…いじわる」
「事実だろ」
蓮はむすっとしてそっぽを向いた。
すぐこーやって拗ねるんだから…
「蓮〜、前向いて歩け、でないと転ぶ……あっ」
言うのが遅かったらしい。
石畳が少し浮き上がってるところに引っかかって転びそうになる蓮。
俺が抱きとめて間一髪だった。
蓮「…」
俺が言ったこと通りになった上、俺に抱きとめられたのが気に入らないのか、俺の腕の中で頬をぷくっと膨らませている。
「だから危ないって言っただろ」
蓮「ひかるがいじわるしてくるのが悪いんじゃん」
「別に意地悪してないだろ。それに前向けって言ったのに前向かず転んだのは誰だよ」
蓮「……」
「分かったなら早く歩け」
蓮「……もう嫌だからひかるが抱っこして」
「は?」
蓮「だって歩いたら転ぶんだもん。転んだらひかるに色々言われて嫌だからだっこ」
「……お前さ、何歳だよ」
蓮「…21歳」
「わかってんなら歩け」
蓮「いーやーだぁっ!!もう歩けない!!」
「それ5歳とかが言うやつな」
蓮「じゃあ蓮5歳っ!5歳なら抱っこしてもいいでしょ」
謎の理論をドヤ顔で言ってくる蓮。
「……どう言う理屈か知らねーけど抱っこすればいいんだろ、抱っこすれば」
俺は蓮の膝裏と背中に手を差し込み、抱き上げた。
蓮「…⁉︎⁉︎ お姫様抱っこはいやだっ!!!」
「なんでだよ、抱っこって言ったのはお前だろ」
蓮「言ったけど…でも違うの、普通のやつがいい」
「わがままなお姫様にはこれがぴったりだ」
蓮「蓮はお姫様じゃなくて王子様ぁーっ!」
「うるさい、周りにバレるぞ」
蓮「もーおろして!!!ひかるはすぐ蓮のことお姫様抱っこする!!」
「いちばんやりやすいからだよ」
蓮「んもー!!!!」
夕日が俺たちの背後に影を作る。
なんやかんや今日も楽しかったな…なんて思ったり。
「……__今日も楽しかった。ありがとう、蓮__」
蓮「…へ?なんか言った??」
「なんでもねーよ、帰るぞ」
ついに5大ドームツアーもオーラス、そしてめめがカナダへ行ってしまいますね……
寂しいですが応援します‼︎‼︎