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最終査定
ある日。
「……静かだな」
俺は違和感で目を覚ました。
いつもなら規約という名の暴力と共に叩き起こされるはずの朝。
なのに――
「…………」
声がしない。
◆ 異常な日常
「……おい?」
「なんか言えよ!」
叫んでみたが、他人が見たらただの壁に向かって叫んでいる変人にしか見えない。
「まさか、お前ら…。姿を消す能力を持ってたのか!?」
そんなわけないだろ。
部屋を見回す。
いない。
天使も。
悪魔も。
「……は?」
理解が追いつかない。
いや待て。
え?
何これ。
逆に怖。
「……夢?」
頬をつねる。
普通に痛い。
最悪だ。
◆ 不在という恐怖
静かすぎる部屋。
あの騒音コンビがいないだけで、
ここまで世界が不気味になるとは思わなかった。
「……マジで?」
誰もツッコまない。
誰も評価しない。
誰も減点しない。
「フッ…。気楽でいいじゃないか」
――落ち着かない。
◆ 唐突な宣告
その時だった。
『対象者』
頭の中に響く声。
だが。
いつもの天使の声ではない。
悪魔の声でもない。
『長期観測を終了する』
「……は?」
『査定システム、終了』
「え」
◆ 世界の核心
視界が白く染まる。
音が消える。
感覚が遠のく。
『当該対象は』
『著しい逸脱なし』
『著しい破滅なし』
『極めて平均的』
「……ちょっと待て」
『よって』
『監視対象から解除』
「いや待て待て待て待て」
◆ 最後の抵抗
「ちょっと待てええええええええ!!」
思わず叫んだ。
「何その理由!?」
「平均で解除って何!?」
『基準通りである』
「納得できるか!!」
◆ 彼らの声
その瞬間。
「やれやれ」
聞き慣れた声。
「最後まで騒がしいな」
悪魔。
「……規約違反の大声です」
天使。
「お前らいたのかよ!!」
◆ 最終査定
天使が静かに言った。
「長期観測は終了です」
悪魔が笑う。
「まぁ悪くなかったぜ」
「なにその上から評価」
「事実だ」
「対象者」
天使がまっすぐこちらを見る。
「あなたは」
少しだけ。
間を置いた。
「非常につまらない人間でした」
「最後にそれ言う!?」
悪魔が吹き出す。
「最高のオチだな」
◆ 消える存在
光。
白。
静寂。
「……じゃあな」
悪魔。
「……達者で」
天使。
「いやちょっと待てよ!!」
「なんかもっとこう!!」
なぜか涙が出てくる。
「感動的なやつとか!!」
「ない」
「ありません」
◆ 終幕
そして。
二人は消えた。
静かな部屋。
騒音のない世界。
評価のない日常。
「…………」
「……静かだな」
少しだけ。
本当に少しだけ。
「……うるさい方が良かったかもな」
誰も答えない。
俺の人生から。
査定は消えた。
たぶん。
これからも。
特別なことは起きない。
でも――
「まぁいいか」
悪くない。
たぶん。
二人が来る前、本来の暮らしに戻っただけさ。
また、会えるはず。
―― 完 ――
短編シリーズでした!
コメディを意識して書いてみた作品なんですが、どうでしょう?
読んでくれた人がクスッと笑ってくれますように( ᴗ̤ .̮ ᴗ̤人)