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猫探しの依頼
僕は夢であった出来事、フードを被った子どもに助けを求められたことを覚えている限り話した。みんなの反応は半信半疑がほとんどだった。僕だってあまりオカルトとかを信じてはいないが、だとするとコトンの存在はなんだ? という話になる。
「疲れてんじゃないの? ここ最近忙しそうにしてたし」
「だったらコトンはどうなるのさ?」
「たしかに。そういえばコトンの言う『ラル』って誰なんだ? 例のさっくんの見た夢に出たフードの子か?」
会話に割り込んできたのはコトンだ。
「そうだよ~コトンはね、ラルとずっと一緒にいたの。でもね……」
何か言いにくそうにしている。
「何か事情があって離ればなれになってしまったということかい?」
「そうなの。早く助けにいかないと」
「どうやって行くのさ?」
コンコン
ややこしい展開に発展しそうなところでドアをノックする音がした。
「あの~、依頼をしに来たんですけどいいですか?」
若い女性がやって来た。依頼人だろうか。
「はい、どうされました?」
所長さんが対応している。依頼人がやってきたことによりこの話は一時中断することになった。コトンはとりあえずバッグの中に戻ってもらう。
「猫を探して欲しいのです。心配で心配でしょうがないんです。私では探しきれないと思って来ました」
「そうでしたか、大変でしたね。詳しい話はこちらへ」
と30分程別室で話を聞いたところで依頼人には1度帰ってもらったそうだ。
依頼内容は猫探し。3日程前に突然いなくなった猫の「ショコラ」を探して欲しいとのこと。
「黒猫の『ショコラ』推定3才。洗濯物を取り込もうと窓を開けた際に脱走。その後行方不明……って今月で5件目ですよ? そのうち2件はまだ見つかっていませんし」
「最近多いね~、猫探しの依頼」
彩歌さんの言う通りここ2~3ヶ月、猫が行方不明になるのが多いのだ。特に今月はやけに多い。
「思ったんだけど、いなくなった猫ってみんな黒猫じゃない? 」
遥太くんがなにか思い出したように別の部屋に行って戻ってきてからそう言った。手にはファイルを持っていてテーブルに広げた。今月分の猫の捜索依頼の資料だった。
「たしかに。みんな黒っぽいよね。何か関係があるのかなー。どっか外国で黒猫は古来から不吉な象徴として忌み嫌われていたとかもあるし」
楽間さんがカステラを食べながら言った。言われてみればそうなのかもしれない。脱走して3日ということは捜索範囲が格段に広がっていることになる。早く見つけなければ。そのために猫の特徴を頭に叩き込んだ。
早速、担当地域を決めて探しに行った。僕と遥太くん、コトン(置いておく訳にもいかないのでとりあえずついてきてもらった)の担当は依頼者の自宅周辺。閑静な住宅街だ。聞いた話だとこの近くに猫屋敷と呼ばれる猫のたまり場があるらしい。後で行ってみることにした。
「猫、いないね」
「そうだね。この時間帯って日向ぼっこしてる子が多いはずなんだけどな」
にゃぉん
振り向くと、黒猫がいた。ショコラの特徴であるカギしっぽだ。もしかしたらショコラなのかもしれない。
「黒猫……あ、逃げた」
「行こう!」
見えたのは一瞬だったのでとにかく追いかけてみる。しかし、一軒家の間を走って行くので追いかけるのはすぐに諦めなければならなくなった。猫が走って行った方角には猫屋敷がある。
住宅街にしては大きなお屋敷、そこが例の猫屋敷だ。数年前に屋敷の主が亡くなり時々親戚の方々が掃除に来る程度でいつもはもぬけの殻なのだそう。何故か3ヶ月程前から野良猫が住み着くようになって猫屋敷になったのだそうだ。たしかだいたいそれくらいの時期から猫探しの依頼が増えた気がする。何か関係があるのかもしれない。