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#8
図書室の奥、立ち入り禁止の資料棚
「……お前、昨日から浮かれすぎだろ。隙だらけなんだよ」
九郎が低い声で囁きながら、はじめを床に押し倒した。昨日と同じ、完璧な床ドン。
はじめの背中には、ひんやりした床の感触。でも、目の前の九郎の体温は、昨日よりもずっと熱い。
「だって……九郎がかっこいいから、つい見惚れちゃって……っ」
はじめが真っ赤な顔で正直に白状すると、九郎の口元が意地悪く歪んだ。
「……バカ。そういうこと言うから、もっと困らせたくなるんだろ。……覚悟しろよ、今度は昨日より——」
九郎がじりじりと顔を近づけ、はじめがぎゅっと目を閉じた、その時。
***ガラガラッ!!***
「おーい、誰か残ってるかー?」
図書室の入り口から、体育教師のゴツい声が響き渡った。
「「っ!?!?!?!?!?」」
二人の心臓が、恐怖で同時に跳ね上がった。九郎は弾かれたように体を起こし、
はじめはパニックで手足をバタバタさせる。
「や、やばい! 先生だよ! 怒られる、絶対怒られる……っ!」
「……っ、静かにしろ! ……こっちだ!」
九郎ははじめの手を掴むと、狭い棚と棚の隙間に無理やり自分と一緒に押し込んだ。
めちゃくちゃ狭い。はじめの背中に九郎の胸板がぴったりくっついて、
九郎の腕がはじめを包み込むような形になる。
「……動くな。声も出すなよ」
九郎の低い囁きが耳元でして、はじめは別の意味で心臓が止まりそう。
「……あれ? 誰もいないのか。戸締まりしとくかー」
先生の足音が、二人の隠れている棚のすぐ横を通り過ぎる。
はじめは九郎のシャツをぎゅっと握りしめて、震えるのを必死にこらえた。
ふと見上げると、九郎も必死に息を殺してるけど、その瞳ははじめを捉えて離さない。
(……こんな時に、九郎……心臓の音、すごいうるさい……)
先生が図書室を出て、ドアが閉まる音がした瞬間。
「……ふぅ……っ。……死ぬかと思った……」
「……俺もだ。……お前のせいで、寿命縮まったわ」
九郎はそう言いながらも、はじめを抱きしめた腕をなかなか離そうとしない。
「……。……まだ、先生戻ってくるかもしれないから。……このまま、あと5分だけ」
そう言って、九郎ははじめの肩にコテンと頭を乗せた。
ピンチだったはずなのに、二人だけの狭い隙間は、世界で一番甘い空間に変わっていた。?