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キメツ学園修学旅行! 壱話
朝7時、鬼滅学園の校門前は賑わっていた。
修学旅行のしおりを握りしめた善逸は、バスの座席表を血眼になって探していた。
我妻善逸 「禰豆子ちゃんはどこだ…!禰豆子ちゃんの隣の席は…!」
善逸は禰豆子の名前を見つけ、その隣の席が空いていることを確認すると、大喜びで指定のバスへと乗り込んだ。
しかし、彼の期待は無残にも裏切られることになる。
すでに禰豆子の隣には、凛とした顔で座る冨岡義勇先生の姿があった。
我妻善逸 「うそだあああああ!なんで!なんで先生が禰豆子ちゃんの隣なのぉぉぉぉお!」
絶叫する善逸を尻目に、バスの車内は和気あいあいとした空気に包まれている。
善逸はしょんぼりと肩を落とし、自分の席を探した。
残っているのは通路を挟んだ席がいくつか。仕方なく、空いている席に座ろうとしたその時、にこにことした笑顔の炭治郎が手を振った。
竈門炭治郎 「あれ、善逸!俺たちの席、隣だったんだな!」
我妻善逸 「うわあああああ、炭治郎〜〜!」
善逸は半泣きになりながら、炭治郎の隣に座ると、すぐにその腕に抱きついた。
我妻善逸 「俺、禰豆子ちゃんの隣座れると思ってたのにぃ…」
竈門炭治郎 「冨岡先生だったのか?残念だったな。でも、俺と隣だろ?退屈させないから安心しろ!」
炭治郎は優しく善逸の頭を撫でる。
その様子を、通路を挟んだ席からちらちらと気にしている生徒が一人。玄弥だった。
不死川玄弥 「あいつ、炭治郎と仲良いんだな…」
玄弥は、炭治郎と楽しそうに話す善逸を羨ましそうに見つめていた。
すると、後ろの席から声が聞こえた。
稲玉獪岳 「おい、いつまでベタベタしてんだ、善逸。気持ち悪ぃ」
善逸が振り向くと、そこには不機嫌そうな顔をした獪岳がいた。
我妻善逸 「なっ…!別にいいだろ!お前に迷惑かけてないし!」
稲玉獪岳 「うるせえ。ったく、お前は本当に騒がしい奴だな。少しは静かにしろ」
我妻善逸 「な、なんだと!お前こそ俺に話しかけてくんな!勝手にしろよ!」
善逸が言い返すと、獪岳は眉間にしわを寄せた。
稲玉獪岳 「はっ、冗談きついぜ。誰がテメエの隣なんかに。死んでもごめんだね」
我妻善逸 「このっ…!俺だってごめんだよ!」
二人の小競り合いに、炭治郎は苦笑いしながら仲裁に入った。
竈門炭治郎 「まあまあ、二人とも落ち着いて。せっかくの旅行なんだから、喧嘩はやめよう」
善逸はふんっとそっぽを向き、獪岳も舌打ちをして窓の外を見た。しかしその横顔は、どこか寂しそうに見えた。
バスに揺られること数時間、一行はようやく宿泊先の旅館に到着した。
木造りの立派な建物に、善逸は目を輝かせる。
我妻善逸 「うわー!すごい!テレビで見るやつだ!絶対お風呂もご飯も美味しいよな!」
早速、部屋割りが発表される。善逸は自分の名前と、同室のメンバーの名前を確認した。
我妻善逸 「俺と、炭治郎と、伊之助と…玄弥?え、玄弥も一緒なの?」
善逸は少し驚きながらも、炭治郎、伊之助、玄弥の4人部屋に決まったことに喜んだ。
嘴平伊之助 「よーし!みんなで枕投げしようぜ!」
伊之助がすでにやる気満々で枕を振り回している。
一方、獪岳は自分と同室の生徒たちを見て、心の中で毒づいた。
(ちっ…なんで俺がこいつらと…。どうせなら善逸と同室が良かったのに)
彼は、部屋割りの変更を願い出ることはせず、不機嫌そうな顔で荷物を運んだ。
稲玉獪岳 「善逸、お前なんで俺と同室じゃないんだ。俺の隣はテメエって決まってんだよ」
我妻善逸 「はあ?なんでだよ!俺、炭治郎と一緒で嬉しいもん!」
善逸の言葉に、獪岳は眉間のしわをさらに深くした。
夕食後、待ちに待った大浴場の時間になった。
伊之助が一番風呂だと飛び込んでいく。
善逸は炭治郎と二人で湯船に浸かっていた。
我妻善逸 「うわ〜、気持ちいい…!炭治郎、背中流してくれない?」
善逸が上目遣いで言うと、炭治郎はにこっと笑って快諾した。
竈門炭治郎 「もちろん!任せてくれ!」
善逸は炭治郎に背中を向けて座る。
炭治郎は背中にシャボン玉を乗せながら、優しく体を洗っていく。
我妻善逸 「くすぐったいってば、炭治郎〜!」
竈門炭治郎 「ははは、ごめんごめん。善逸の背中、すごく綺麗だな」
炭治郎の言葉に、善逸の頬は赤く染まった。
その横で、玄弥はそわそわと落ち着かない様子だった。
不死川玄弥 「…炭治郎。俺も、背中流していいか…?」
玄弥が意を決して言うと、炭治郎は快く頷いた。
竈門炭治郎 「もちろんだ!玄弥も流してやるよ!」
善逸を洗い終えた炭治郎は、今度は玄弥の背中を丁寧に洗ってやった。
玄弥は、炭治郎の優しさに触れて、少し照れくさそうにしていた。
風呂から上がろうと体を拭いていると、遠くでこちらをじっと見ている生徒がいることに気づいた。
獪岳だった。
獪岳は二人を見つけると、ムスッとした顔でそっぽを向いてしまった。
我妻善逸 「な、なんだよあいつ…」
善逸は不思議に思ったが、すぐに考えを巡らせるのをやめた。
消灯時間になり、部屋は静かになった。
伊之助はすでにいびきをかいて寝ている。玄弥も布団に入り、静かに目を閉じている。
善逸はまだ眠れず、枕元で漫画を読んでいた。
すると、部屋の襖が静かに開いた。そこに立っていたのは獪岳だった。
稲玉獪岳 「おい、善逸」
獪岳の声に、善逸は驚いて体を硬くした。
我妻善逸 「な、なんで獪岳が…?」
稲玉獪岳 「お前の部屋、ここだろ」
獪岳はそう言って、部屋に入ってきた。
善逸は困惑しながらも、獪岳に話しかけた。
我妻善逸 「どうしたんだよ、用があるなら俺の部屋じゃなくて…」
その時、炭治郎がトイレから戻ってきた。
竈門炭治郎 「あれ?獪岳、どうしたんだ?」
炭治郎の姿を見て、獪岳は一瞬ひるんだが、すぐに鋭い眼差しを善逸に向けた。
稲玉獪岳 「俺は、お前に用があるんだよ」
そう言うと、獪岳は善逸の隣に座り込んだ。
稲玉獪岳 「お前は、本当に…誰にでも優しいんだな。それが、気に入らねぇ」
善逸は、獪岳の言葉に戸惑いながらも、その言葉の裏にある、寂しそうな音を拾った。
我妻善逸 「…え?どういうことだよ、獪岳」
善逸が尋ねるが、獪岳は答えなかった。代わりに、彼は善逸の頭を乱暴に撫で、そのまま自分の部屋へと戻っていった。
我妻善逸 「な、なんだったんだ…」
善逸は混乱したまま、炭治郎と顔を見合わせた。
善逸、炭治郎、玄弥、獪岳。それぞれの思いが交錯する修学旅行初日。
これからどんな出来事が待ち受けているのか。
弐話目に続く!!!