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ある日の日常(大島視点)その3
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「やあ、奇遇じゃないか。雑草でも食べに来たのか?ペンギン君?」
「それで呼ぶなって言ったろ!」
食堂で偶然会ってしまった男子高校生は、俺のことを【ペンギン君】と呼んだ。
大島学園生徒会長、中島爽。この学校1番の天才であり、学園三大イケメンの1人である。
苗字からわかると思うが、中島の兄であり、俺とはいわゆる【犬猿の仲】で、いつもいがみ合っている。
「ごめんねぇ。爽、いつもこんな感じで。」
後ろにたたずんでいるのは、副会長、古島賢吾。
会長の歯止め役だ。
「古島パイセン聞きましたよ!プログラミングの大会で優勝したんすね!凄いっす!」
「いやいや、そんなことないって、、、」
あっちはあっちで盛り上がっている。問題はこっちだ。
「何じっとしている?早く買えばいいじゃないか。それとも、お友達がいないと買えないか?」
「バカにすんな!」
「まあ、これぐらいにしておくか。賢吾、行くぞ。」
珍しい。いつもの会長なら、もっと難癖つけて付きまとうのに。
「今日どうしたんすか?」
川島も気になって会長に聞いた。
「これから理事長に会いに行かないといけなくてな。話があるらしい。」
「理事長も珍しいよね。普段は俺まで呼ばないのに。」
大島学園理事長、中島零。
理事長は入学式で対面して以来だが、顔は会長や中島に似ていた。
そのことから、実の親子なのだと推測するのは難しくない。
「そうなんすね、、、頑張って!」
「うん。ありがとう。川島くん。」
会長たちは、俺とは全く違う対応を見せた後、さっさと食堂を出て行った。
今気づいたが、2人は早めに昼食を済ませるために食堂来ていたかもしれない。
まあ今更どうでもいいか。
俺は券売機でカツカレーの券を買って、受付で券を渡した。これであとは待つだけだ。
川島もハンバーグ定食の券を渡しに行ったようだ。
俺らは空いていたテーブルに腰掛けた。先に口を開いたのは川島だ。
「会長と理事長って、なーんか似てるよなあ、、、」
「どうした。いきなり。」
「いや、理事長は入学式でスピーチしてたじゃん。その時の喋り方が会長と似てるなあーって。」
「そりゃそうだろ。あそこ親子だし。」
「え!?そうなの!?」
やはり知らなかったか。今日で2番目に驚いた顔をしている。
「理事長がお父さんか~。学校生活絶対気まずいよなぁ。いろいろ気ィつかいそう。」
「だからこそだろ。会長が生徒会長になった理由。」
「え?どゆこと?」
川島は分かってないみたいだ。会長の真意。
「他の学校だったら、確かに楽だったろう。学校生活をただ送る分には。」
「でも、それじゃ意味がないんだ。」
「え?え?なんの話?」
困惑する川島をほっぽいて、俺は話を続ける。
「「中島グループ」はさすがに知ってるよな?」
「うん。うちの家電もそうだから。」
【中島グループ】。家電から家具、車から建築まで幅広く事業を展開している会社だ。
「その中島グループの総帥が中島零、うちの理事長だ。」
「うん……え!?」
「総帥が故に、凄く厳格な性格だということはかなり有名だ。そんな人が学校を作るとなったら、どんな学校になると思う?」
「……めちゃくちゃ厳しくなる!?」
「そう。現に10年前の時点で退学者が入学者の半数を越えていたんだ。」
「やっば!?廃校にしろって!」
「でも、廃校にするとある問題が起こる。うちは超進学校だろ?難関大学合格率もほかより圧倒的に高い。つまり、ここがなくなるということは、その合格者全員いなくなるってことだ。」
「大学側も困る?」
「ああ、そうだ。たとえ難関ではなくても、大学進学率は100%に近いから、そこもいなくなる。」
「大問題だね……」
「入学のとき、大学をとるか、生活をとるか……その二択を強いられる。だからだ。」
「だから?」
「会長は、その現状を改善させるためにうちに入学し、生徒会長になった。生徒会長なら、校則云々のことに直接手が出せる。現に今、校則は厳しいどころか、緩すぎるぐらいだろ?」
「たしかに!会長すげー!!」
「会長様々だな。」
だからこそ、怖いものもある。これだけ変わってしまっては、さすがに理事長の耳にも入る。今日呼ばれたのだって……
「大島も会長に感謝しねぇとな!」
「いや、それは必要ない。会長が勝手にやったことなんだから。」
「そう言わずにさぁ……!!」
ピピピピ……カツカレーの方~、ハンバーグ定食の方~
呼ばれたみたいだ。
俺らは会話を中断し、それぞれ昼食を受け取りに行った。
席に戻ると、さっきとは違う雑談に花を咲かせながら、昼食を食べた。
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学校が終わり、放課後になった。
他の同級生が帰るなり、友達と話すなり、時間を楽しんでいる一方、俺は後輩に足止めされていた。
「先輩!今日先輩のうちで勉強会やるってマジですか!?」
「、、、大島先輩なら、何も持ってかなくても、もてなされる、、、」
この2人は生島兄弟といって一卵性の双子の後輩だ。
テンション高い方が生島カカ。
ちゃっかり得しようとしている方が生島ピピ。
「俺も行っていいですか?大島先輩に教えてもらいたいところ、いっぱいあるんすよ!」
「俺も、、、大島先輩にカカを負担させるわけにはいかないので。」
うう、、、断りずらい。そう言われると断れないのが日本人の特色なのかもしれない。
2人は一年生ながらに新聞部のエースで、「その情報どこから聞いた!?」というようなことも知っている。
現に、俺の家で勉強会をすることを知っている時点でもうそうだ。
てか、曇りなき眼でこっち見んなっ!!
「あーもう!!いいよ来て!来いよ!!」
「やったぁーー!!!」
また押されてしまった。まあ、いいか。人数が多ければ盛り上がる。
それに、川島がサボろうとしたときにピピは使える。
「じゃあ、17時に家に来い。それより前には来るなよ。」
「なるほど、、、大島先輩、エロ本隠そうと「ちげぇよ!着替えるんだよ!!」
こんなんだから、この2人は困る。2人に対してはついつい声を荒げてしまう。
「まあ、分かりました。お詫びに虫、持ってきますね!ニコッ」
「持ってくんな!!」
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学校編やっと終わりです!
次回もお楽しみに!